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居酒屋奇譚  作者: 秋鑑
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13/18

居酒屋奇譚⑥「お子様の採用活動」2/4

何やら絵本の読み聞かせみたいな雰囲気になりつつある様な・・・


まあ、酒の席なんて楽しければ、大体何でもOKですよね


・・・ところで、お話を通してあやしてるのは、どちら?

あやされてるのは、どちら?

居酒屋奇譚⑥「お子様の採用活動」2/4


「宇宙人・・・ですの?」

目をキラキラさせて私の話を聞いてくれる。

私も嬉しくなって、色々と話してしまったが、この反応を前にすると後悔は無い。

いくつか、まだ公開前の特ダネ(と、言うほどのものでもないが・・・)まで、披露してしまった。とにかく、こんなに喜んでくれる取材対象とは、めったにお目にかかれない。

私の話にキャッキャッと燥がんばかりに、喜んでくれている。


「宇宙人って・・・あれですの?片言で『ワレワレハ ウチュウジンデアル』って自己紹介するヤツですの?」

・・・イメージが古いな・・・。

私は、微妙な笑みを浮かべたらしい。


すると、お子様は何処からかメモ帳の様なモノを取り出した。

「宇宙人・・・確か・・・こんな感じ・・・でしたの・・・」

私は、お子様の手元を覗き込む。

・・・なるほど、体毛の無い体に、頭の大きさには不釣り合いに大きな目・・・典型的なグレイタイプの宇宙人だね・・・。


書き上げると、お子様は自信ありげに絵を示して見せる。

「こういう感じで、『ジョアッ』って叫ぶんですの」

残念、それはウル〇ラマンだよ・・・お子様・・・。

ああ、でも、あれも宇宙人っちゃ宇宙人か・・・。


私は苦笑しながら、宇宙人の容姿や行動について、オカルト雑誌の記者の掌握範囲の限り説明してあげた。

お子様は興味深げに、ときどき感嘆の声を挙げながら、聞き入っている。


お子様、興奮して喉が渇いたのだろうか、ジョッキを一気に飲み干した。


・・・それ・・・私の・・・。


まあ、いいわ。

これだけの反応を示してくれる聴衆ですもの、奢ったげるは、そのくらい・・・。


私は、吞みながらも、ひたすら語りまくった。

曰く、おそらく、この居酒屋の地下に宇宙人の基地がある事。

曰く、調査対象者を泥酔させて拉致し、検査機器を埋め込んでいる事。

曰く、手術やUFOの情報を隠ぺいする為に、脳の一部を改造している事。

曰く、脳をいじられたために、一部の被験者は、人格に変化をきたしているだろう事。

などなど。


ビールがホッピーに、ホッピーが焼酎に変わったところで、胡乱気ながら意識が覚醒する。


・・・何語ってんだ!

私は聞く側!

気分よく語り明かしてどうするの!


今からでも軌道修正しなきゃ。

まずは、このお子様から情報を聞き出さなきゃ。


「と、私は考えていて、記事にしようと考えているの。と言う訳で、何か知らないかしら?」

と、問いかけてみます。

・・・だめだ、質問が雑だ。

既に酔っぱらいと化した頭脳は、普段の回転を取り戻すことは無かった。


私が、自分の取材能力について絶望しているのを横目に、お子様は何か話を始めてくれた。

関係あるかは、おいておいて、とりあえず耳を傾けてみる。



お子様は、額にしわを寄せて首を傾げる。

年齢不詳のため、見た感じは可愛い仕草と言っていいだろう。


「残念ながら、宇宙人には知り合いがいませんの。」

とても残念そうに言う。


「でも、せっかくですの。面白いお話も聞けましたし、お返しはしたいですの。」

いつの間にかテーブルに来ていた二合徳利の熱燗をお猪口に傾けながら、陽気に口にする。


「地下基地は・・・覚えが無いですの。・・・ああ、何かあったら良いのですのに。」

こちらに視線を向ける。


徳利を持つ手が揺れる。


・・・ああ、熱燗を追加ですね。

タッチパネルの操作を見届けると、満足げにシメサバを口にする。

・・・まあ、私のですが、お子様は頓着しません。


箸をおくと、袖口から何か取り出しました。



それは、様々な色をした「玉」。



白黒だったり、黄色だったり、紫だったり・・・3個か4個・・・もっとあるみたい。


「何です?これ・・・」

と、口にする間も有ればこそ。


玉はそれぞれの方向へ転がっていく。


まあ、こんな草臥れた居酒屋のテーブルが水平なわけ無いよね。


そして、テーブルの端まで行くと慌てたように違う方向へ転がっていく。

落ちないように方向転換するのだ。・・・変わったおもちゃだな・・・と、思って居ると、お子様から質問が来る。


「ところで、ポイントが決まっている怪談なんて、結構ありますの。将門様の首塚ですとか、八幡の藪知らずですとか・・・。何故、この居酒屋の話に興味を持ちましたの?」


そこだ!


私には特技がある。

記事になる事象を嗅ぎ分ける嗅覚だ。

コレのおかげで、編集長からは「文書能力ゼロ」とか「ボキャブラリー貧乏」とか言われて評価が低い私は、この会社で生きていけているのだ。


「つまり、事の真偽はともかく、つつけば何かが出て来る藪を見分ける事が得意なの。」

と、私は自慢げに説明する。

「その、私の勘が、この件にたいして反応しているわけ。私の希望の宇宙人かは置いておいて、何かが確実に存在している・・・って。」

鼻息荒く宣言している私を、お子様はニコニコしながら眺めている。

その手元では、10個近い玉がコロコロ転がり続けている。


玉は一つとして同じ柄の者は無く、皆、個性的だ。



あ、あの玉・・・セコの奴に似てるかも・・・。



セコと言うのは、私の同僚だ。


似合わない赤毛に二か所、銀のメッシュを入れた髪色がトレードマーク。

嫌味で鼻も利かないくせに、ちょっと上手い文章が書けるのを鼻にかけてマウントをとって来る、いけ好かない男だ。

そう言えば、一人だとオドオドしてしまう仕草が、玉の動きとリンクして見える。

アイツ、いつも私の取材状況を覗き見てて、時々出し抜いて記事にしてしまう。

横取りが得意なんだ。

この件も、私が何か動いているのは勘づかれている。

うかうかしていると、今回もかすめ取られちゃうかも・・・。

何でもいいから、何か見つけて帰らないと・・・。

本当はもっとじっくりやりたいのに、アイツが居るから・・・。


セコのやつ・・・。



「居なくなったら・・・良かった・・・ですの?」


お子様が、ニヤリと笑う。

セコ玉をつつきながら・・・。


私は慌てて「そこまでは思って無いですよ・・・ハハハ。」と、答えた。


・・・ん?私・・・セコの話を伝えたっけ?

見も知らない相手の話題なんて、持ち出したりしないと思うのだけど・・・。

・・・今のやり取りは偶然成立しただけ?


それとも、思考を読まれている?


・・・まさか・・・ね。



お子様は、興味深げにこちらを見ている。

呑みの相手の挙動を楽しんでいるようにも見えるが、同時に何かの実験結果を観察しているようにも見える。こちらの一挙手一投足から、内心を読み取ろうとしている様な・・・考えすぎだろうか・・・。


お子様は、話し出す。

「あなたは、優れた狩人みたいですの。玉石混淆の情報の群れから、見事に獲物を選定して見せる・・・千里眼・・・ですのね・・・。昔はソレなりに数を見たものですが、この頃は、トンと見なくなりましたの。

あの・・・ヤツ・・・そうそうデジタル・・・ですの?

あれのお陰で、五感を使わなくても遠くを知れるようになった事の弊害ですの。」


何を言われているのかが良く分からない。

千里眼って御船千鶴子とかのアレの事だろうか?

自分を超能力者と断定されて、悪い気はしないが、不気味な気もする。

無害な見た目に気を許してしまったが、アブナイ人なのだろうか・・・。


「あの・・・何を言われているのか・・・。」


私がモニョモニョ言っている事を気にも留めずにお子様は話続けています。

「狩人とは、ちょっと相性が良くありませんの。

正面切ってのやり取りならば、後れを取ることは無いのですの。

でも、しっかりと隠れて、時期を冷静に待って、勝てるタイミングで引き金を引く・・・狩人は、まったく侮れませんの。」

言いながら、紫金筋玉と黄色にピンク点玉をつついて見せる。


「狩人は、獲物の匂いを嗅ぎ分けると、じっくりと対象を調べて、罠を仕掛けて来るんですの。

本当に厄介ですの。

本人は、逃走経路を確保した風下のポイントに身を潜めてチャンスを待つので、獲物側はなかなか狩人の居場所を特定できませんの。

そうして・・・ぼやぼやしているうちに、狩人の罠に誘導されて・・・・・・ズドン・・・ですの・・・。」

お子様がニヤニヤと嗤う。


・・・何かがヤバい。

私の中の危険察知センサーが警告を発し始める。

状況は、席に案内された時から全く変化なし・・・相対しているのは、小柄なお子様一人。


さっきと、何が違うのかは全く分からない。

・・・しかし、さっきと何かが全く違うのが分かった・・・。


「まるで、本当に狩人に撃たれた事が有るみたいな話し方ね。」

精いっぱいの虚勢を張って、余裕綽々を装う・・・成功している気はしないが・・・。


お子様が答える。

「まさか・・・。撃たれてたら、今頃は狐汁ですの。

フフフ・・・お酒なんて嗜んでられませんの」

面白そうに・・・。


狐汁・・・狐うどんのうどん抜きとか、そんなメニューの事だろうか・・・。

いかん、思考が逃避しかけている。


そんな中、重なったお皿に隠れるようにして、少しづつこちらに向かってくる玉が一つ・・・セコ玉だ。

皿から皿へ、ジョッキの影を回って・・・お子様につつかれてテーブル中央へと転がりだされた・・・。


「ところで狩人さん。

あなたは、安全なポイントを確保して獲物を狩るべく準備をしてらしたと思うんですの。

あまたある怪談や与太話の中から、何かの真実を含んだ一話を選び出して、調べた見る。

まあ、手際は悪くありませんでしたの。」

熱燗をお猪口でくいっと口に運んで見せる。

流れる様な仕草で、如何にも吞兵衛と言う風情を見せるお子様。


私は、手元のジョッキを探るが、既に空だ。

タッチパネルに手が伸びる・・・。

「同じものをもう一つ。あと、これ美味しいので二つ。」

お子様が熱燗の二合徳利を目で刺しつつ、アユの天ぷらを左手に持ってフリフリしている。

・・・ああ、操作係からは解放されてはいない様子です。


私の指は、乱れる思考とは切り離されたように、慣れた仕草で注文を入力して見せた。

お子様は、送信した様子を確認すると満足げにアユの天ぷらを二口で胃の腑に収めて見せます。


本当に良く食べる・・・。


配膳に来た草臥れた店員が、空いた皿を片付けていく。

逃げ場を失った玉たちが、右往左往しているが、まったく気にした様子はを見せない。

そう言うものが、そこにあることに違和感を持っていないのだろうか。


私は、その様子をボーっと眺めていた。

去り際、草臥れた店員が小声で告げて寄越した。


「あんた、もう取り込まれてるよ・・・。せいぜい、ご機嫌を損ねないようにな・・・。」


ままかり とか シメサバ とか

酢で加工された青魚って、ビールより日本酒ですよね


・・・焼酎だと、ちょっとキツい


皆さんなら、どんなお酒と合わせますか?

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