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居酒屋奇譚  作者: 秋鑑
12/12

居酒屋奇譚⑥「お子様の採用活動」1/4

一週間のご無沙汰です。

今回より、新章スタート。

新装開店、リニューアルオープン・・・まあ、舞台は変わらず居酒屋の片隅ですが・・・。


酒の上の与太話って楽しいですよね

酒の肴に、旅先の話や珍しい料理の話・・・怪談とかね


嘘か本当か・・・は、おいておいて、陰謀論やオカルト話をつまみに今日も楽しく昼呑みです

居酒屋奇譚⑥「お子様の採用活動」1/4


「宇宙人・・・ですの?」

目をキラキラさせて私の話を聞いてくれる。

私も嬉しくなって、色々と話してしまったが、この反応を前にすると後悔は無い。

いくつか、まだ公開前の特ダネ(と、言うほどのものでもないが・・・)まで、披露してしまった。

とにかく、こんなに喜んでくれる取材対象とは、めったにお目にかかれない。

私の話にキャッキャッと燥がんばかりに、喜んでくれている。



私は、とある雑誌の記者。

と、言えば聞こえはいいが、3流出版社が発行しているマイナーなジャンルの専門誌・・・いわゆるオカルト雑誌の記者と言えば、聞こえは一気に悪くなる。

取材を申し込んでも、名刺を渡して趣旨を伝えると一様に、うすら笑いを浮かべて「あーはいはい、大変ですね」と言う反応を示される事が多い。

たまに、真面目にやっている研究を揶揄されたと感じるのか、叩き出される事すらある。



逆に歓迎される相手は、カルト教団とか、オタク中のオタクみたいな人たち。


こっちが引いてしまう。

いや、私も好きだからオカルト雑誌の記者なんかしてるんだけど、さすがに別次元の話には着いていけない。


「ロズエル・・・あれは、良く知られているけれど、実はデコイとして撒かれたフェイクで、僕の入手した情報では・・・」

お前は、どれだけのVIPなんだ?


「今回のウクライナ侵攻は、プーチンの意志じゃない・・・大宇宙意識生命体バシャール神からの指示で・・・」

ああ、何か受信しちゃってんだね・・・ごめんね、私にはパナ〇ェーブの受信機能は搭載されてないんだ。


などなど、枚挙に暇はないが・・・私は記者であって、精神カウンセラーではない。

だから、眼鏡の奥の視線が定まらない類の人々に詰め寄られる状況に置かれると、精神が消耗・摩耗するのだ。



最近、私の嗅覚が反応したとある噂。

その取材の中で頻繁に登場する草臥れた居酒屋。

そこで出会った今回の相手は、極上だ。

見た目こそ、この居酒屋に相応しいとは思えない風体だが、話し相手として前に居るのがうれしくなる相手だった。




噂の草臥れた居酒屋(と、思しきお店)を見つけて、暖簾を潜った私は、そのまま店内を見渡す。

取材可能な人間、取材に値する人物は居ないかな・・・と。


周囲は見るからにオヤジと言った感じの酔客ばかり。

意味のない会話をバカでかい声で交わしている喧騒は、まさに大衆酒場と言った感じだ。



そんな暑苦しい空間で、そのお子様めいた人物は明らかに浮いていた。


そう、一見すると、中学生。


性別は良く分からない。


童顔に相応しい、やや高いボーイソプラノは、声の高い男の様にも、声の低い女の様にも聞こえる。

そんな人物が作務衣(なのかな?和服っぽいの)を纏って、テーブルの一つを一人で占領しているのだ・・・。



最初は家出少年(少女?)が、紛れ込んでいるのかと思ったが、見ている前でビールなどが配膳されていく。

おそらくは成人なんだろう。

そんな感じで、店内の御客の観察をしていると、件のお子様にビールを届けたその足で、草臥れた店員がこちらへやってくる。


「今日は混んでるんで、相席でいいすか?」

と、声を掛けられ、改めて見回すと確かに間口からの想像からは遥かに広い店内は、オッサンでいっぱいだった。


プライベートだったら、あの中に混じるのは気が引けるのだが、今回は取材も兼ねた潜入だ。

了解の旨を伝えた。


・・・酔っぱらいと同席は我慢します。

せめて、なるべく、話の通じる相手と相席できますように・・・私は私の守護天使(居るのなら・・・だが)に祈った。

で、奇妙な目つきで此方を眺めた後、草臥れた店員が案内してくれたのが、このお子様の対面だった。


・・・なんだろう、好奇の目では無かった。

どちらかと言うと、憐れむというか、そんな感じの目つきだった。



「相席ですの。商売繫盛で宜しい事ですの。」

お子様は、独特の口調で私を迎えてくれた。




対面に座ると、本当に小さい人物だった。

配膳された生ビールのジョッキは、彼(彼女?)の額の位置にフチが来てしまう。

とてもじゃないが、そのまま飲める状況ではないのだが、お子様は器用にジョッキを傾けて小さな口にビールを流し込んで見せる。

身のこなしは見事としか言いようが無い。


そして、更に特筆すべきは、その呑みっぷりだ。


先ほど「流し込んで」と表現したが、まさに其のままの飲み方で、ゴクゴクと言うよりはサーっという感じ。

瞬く間にジョッキの三分の一が消え失せた。


「ほう。ですの」

と、ため息をつくとこちらを改めて眺めて来る。


そして、ジョッキをテーブルに置くと徐にタッチパネルをこちらに押し付けて来た。

「同じものをもう一つ。

あと、あそこに書いてある、本日のお勧めのトウモロコシの天ぷらと、ニラのお浸し、レバカツを一つずつですの。」

と言ってくる。


・・・ああ、私に入力しろと言っているのね?


多少面倒な相手の気配を感じるけど、取材をスムーズに進めるためのファーストステップだと思って応じる事にする。

その間も、お子様は、目の前の厚揚げに乗せられたネギを起用に小皿に取り分ける作業に没頭して見せる。

・・・ネギは駄目なのに、ニラは食べられるんだ・・・。

どうでも良い事が頭を過った。


私は、自分の分の注文を入力すると、当初の目的である「とある怪異譚」についての取材を始める事にする。


「あなたは、この店にはよく来るんですか?結構詳しかったりします?」

と、まずは軽く相手の情報源としての程度をチェック。


お子様は、応えます。

「まあ、だいたいココにいますの。

今のところ、他に行く予定はありませんの。」

と、極めて気軽な様子で・・・。


しかし、私の記者としての観察眼は、お子様の目つきが探る様な色を帯びたのを捉えた。

話しかけるのは良くするが、話しかけられるのは珍しいという風情の感情の動きを感じる。


「何か、聞きたいことがありますの?」

と、何らかの情報源としての機能を持っていると自負する者特有の聞き返しが有る。

こちらを警戒しつつも興味深く思って居る感じだ。

取材相手としては悪くない反応・・・でも、その時私の頭を過ったのは、彼のFBI本部に飾られていると言う例の文言だった。


つまり「暗闇を覗くとき、暗闇もまた覗いている」


・・・この闇は覗いて大丈夫な闇なのだろうか。


言葉遣いも含めて、脅威を感じる要素が無さそうな相手に対して、何故か少し気後れを感じてしまった自分を、なんとか鼻で笑いつつ問いを重ねる。



「私は、こういう者です。」

と、名刺を取り出す。

例の雑誌編集者の身分を示す名刺だ。


お子様は、差し出されたそれに手を伸ばすが、体に見合った短い四肢では微妙に届かない。

私が慌ててさらに乗り出そうとすると、いつの間に手にしたのか箸で掴んで引き寄せてしまった。

意外な動きに絶句していると、お子様が口を開く。


「オカルト・・・雑誌ですの?

編集者と言うのは初めてお目にかかりますの。」

今一つ仕事内容にはピンと来ていない様子だったが、最低限の興味を引く事には成功した様だ。


「じつは、この辺りの飲食街界隈で最近、奇妙な噂が流れているの。

噂の範囲はこの繁華街周辺。

この手の怪異譚としては、最初からかなり範囲が限定されている珍しい例よ。」


お子様は、ネギの載った小皿をこちら側に押し出しながら、興味深げにこちらを見る。


「で、その内容なんだけど・・・。

人が消える・・・または、入れ替えられる・・・もしくは、改造される・・・とか、なんとか・・・。」

声を潜めつつ雰囲気を出しながら伝えたネタに対して、お子様は胡乱気な視線になりながら聞いてくる。


「・・・つまり、どれですの?」

と・・・。


もっともな問いだ。


まあ、こう言った噂話と言うものは、得てしてこんなものだ。

そもそも、本当に確実に人が消えていたり、入れ替えられていたら警察が黙っていない。

人体改造だって、それが事実なら放置なんてされていない。


「何か怪しいことが起こっているが、何が起こっているのかはハッキリしない」程度の話だから、噂に留まっているのだ。


そして、この手の噂は伝播していく過程で、伝言ゲームの洗礼を経て更に曖昧模糊とした話へと変質していく。


・・・そう、信ぴょう性を喪失していく訳だ。

だから、普通の情報としては、重視されない。


「でも、この話は、その辺の怪談話とは一線を画する特徴があるの。」と、私が力を込めて発言すると、お子様は「ほう、ですの。」と、一応耳を傾けてくれる・・・レバカツを齧りながら・・・。


そう、この噂の珍しい点は、じつは情報の具体的な部分にある。


つまり、何処かにあるお店の話では無く、ココにあるこの店の話として広がっているのだ。

何件か採取した噂は、採取先の年齢も地域も時間帯も異なっていて、それどころか、消えたり改造されたりとか内容まで異なっているのに、発生場所はこの草臥れた居酒屋で固定されているのだ。


現場は確定しているのに、何が起きているのかは不明という、非常に珍しい噂。


ある一定以上の情報は、周辺を聞きまわるだけでは入って来なかった。

噂話はいくらでも入手できるのだが、内容には一定の方向性に共通点が見えるだけで、一致した見解は得られない。

では、共通の方向性とは何かというと、まずは舞台はこの店と言う事。

そしてもう一つが、人間そのものに何かが起こっているという事。

消えるにせよ改造されるにせよ、人間そのものへ干渉が起こっていることを示唆している。


「ふむふむ。ですの。」

お子様も興味津々の様子です。


まさに、紙芝居に食いつく子供の様です(実際に見たことはないけどね)。


「で、私は考えたの。実際に行ってみれば良いって。」

「因みに、私は、ココで怒っているのは、アブダクションだと思ってるの。」

告げると、お子様も一緒になって鼻息荒く

「アブダクション!」と返してきます。


「・・・そして・・・その犯人は・・・宇宙人」


当の本人がオカルト的存在なのに、意外とこういうホラ話が大好物な様子のお子様です


感性が子供だからかな?


おつまみって言うと、つい肉と魚と揚げ物をチョイスしがち

でも、野菜の類も美味しいですよ

ニラのお浸し・・・湯通ししたニラに、卵黄をオンして、めんつゆでフィニッシュ

簡単で美味しい


皆さんのお手軽レシピって何かあります?

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