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好きだから。  作者: ぽんこつ


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色んな物語

あと一月もしたら。

高校生活も終わる。

この間。

風夏さんが話していた展示会に行ってきた。

蓮くんと麻耶と恭一くんと四人で。

麻耶には、卒業したら結婚することになったって話した。

驚いてくれて。

喜んでくれて。

「結婚式はしないの?」

って。

「そんなお金もないし、私は全然幸せなんだ。ううん。幸せすぎるくらい」

「じゃあさ、私たちがお祝いしてあげる」

そんな風に言ってくれた。


展示会場は、細い路地の奥まった所にある小さなお店だった。

風夏さんが教えてくれてたけど。

この会場。

普段はバーなんだって。

確かにカウンターの奥の棚には、お酒の瓶がたくさん並んでいた。


私の部屋より少し大きいくらいの広さに。

ビートルズの音楽が繰り返し流れる空間。

壁やカウンターに絵や写真がいくつも飾られていた。

昼間なのに薄暗い店内。

オレンジのぬくもりのある照明と小さな曇りガラスの窓から差し込む柔らかい光。

それらが。

現実とかけはなれたような雰囲気を醸し出していた。


各作品にはタイトルと氏名がついている。


風夏さんと蓮くんの作品は隣同士で展示されていた。

どっちも。

モデルが私なだけに、少し恥ずかしいような。

でも。

うれしいような。

落ち着かない感じ。


きれいな風景の写真が一葉。

霞がかった水色の空。

山の淡い緑。

手前は濃い青の海。

かわいらしい船が煙をはいて。

その周りの水面は、きらびやかな光を発していた。

『心酔する・柊菜摘』


月夜の海の上で舞う二人の巫女。

衣装の色が独特で。

一人は上下白。

もう一人は赤と黒の装束。

二人の周りにはデフォルメされた動物たちが描かれたイラスト。

空に浮かぶ半月が笑っているように見える。

神舞かまい・跡部美樹』


あっ。

『白い椅子と青い本・美波咲良みなみ さくら

風夏さんが言ってた、咲良さんの作品。

真っ白な木製の椅子に、開いたままの青い本が一冊。

背景は、滲むような緑とグレーのグラデーション。

ディテールは、ぼかしている。

静かな光に包まれた午後の一場面のようだった。

ゆっくり、優しい時間が流れている。

そんな感じがした。


作品は全部で二十四点。

ちなみに。

私たちはタダだけど。

入場料は500円。

中学生までは無料。

作品の購入はできないけど。

それぞれの作品には支援箱があって。

お客さんが好きにお金を入れられるみたい。

ほとんどの参加者が10代から20代前半の若い人たちで。

才能を応援するために設けた制度みたい。

この展示会の発案者は。

咲良さんの従兄。

このお店のママさんと気が合ったのが、そもそものきっかけみたい。

開催期間は一週間。

咲良さんや蓮くんといった大会で賞を取った人も何人かいて。

それなりにお客さんが来てるみたい。

私たちは開店前に見せてもらってたけど。

店の外には行列が出来ていた。


ドリンクも飲めて。

ママさんが応対してくれたの。

中世のお姫様みたいな。

金髪のロングヘアのカツラをつけて。

縦巻きのぐるぐるがかわいくて。

すごく似合ってて。

とってもきれいなんだ。

「あんたたち、いい顔してるわ」

って。

柿の種をおまけしてくれた。

ママさんは私を見て。

「あら、あんたモデルの子じゃない」

ウインクをして。

「そのまんまじゃない」

モデルなんだから当たり前だなって。

苦笑いしていたら。

「写真も絵もね。物語があるのよ。人となりがね、年を重ねたら分かるのよ。特にオカマは」

ギャルピースをして笑うママさんに。

私より先に蓮くんが、

「ですよね」

って。

ギャルピースを返していた。

そこで笑いが起きて。

「あんたたち見てると楽しくなってくるわ」

枝豆をサービスしてくれた。

私も負けじと。

「ありがと」

って。

ちょっぴり舌を出しての。

ギャルピース。

「やば! めっちゃかわいいんだけど」

食いついた蓮くん。

「その、舌出すの反則だ。俺も真似しよ」

「あんたより、あたしがしてあげるわよ」

ママさん渾身のギャルピース。

「んー。どっちもかわいいけど、ママさんより結衣かな」

腕組みをして真顔でうなずく蓮くん。


帰り際。

展示されている作品の中の。

ひとつの詩が目に留まった。


言葉は誤解を生む。

想いは妄想を生む。

行動は勇気がいるけど。

一番。

人を雄弁に物語る。

それでも。

言葉も想いも伝えよう。

風の中に鮮やかに残る。

耳を澄ませば聞こえる。

大切な時間に。

ほほえみを添えて。

『まっすぐ・倉科梨花』


私は薬指の印を触っていた。

ぐっと肩を抱き寄せられて。

蓮くんの肩に頭をもたげた。

お読み頂きありがとうございます。

感謝しております。

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