魔法をかけられたみたい。
ぴんと張りつめた冷気を含んだ空気に。
吐いては馴染んで消える白い息。
昇りかけのお日様が。
私たちの影を引き伸ばしていた。
通勤より早い時間の電車に揺られて。
買ったばかりの洋服に身を包んで。
やって来たのはネズミーランド。
「朝からみんな元気だな」
呆れてるのか。
感心しているのか。
でもね。
そんな蓮くんが一番元気かも。
駅からネズミーランドのエントランスまで続く幅の大きな通路。
その両側の柵の所々。
キャラクターを象った銅像があるんだけど。
一個一個、私と一緒に写真におさめてた。
すごくニコニコして。
私がポーズをとる度に。
「かわいい」
って。
頭のぽんぽんスイッチを押しまくってた。
おかげさまで。
私のこころはとろんとろん。
4時起きも何のその。
人混みをいいことに。
つないでる腕にぎゅっとしがみついている私。
蓮くんの匂いとぬくもりが。
追い討ちをかけて。
ぽーっと。
ぽわーん。
て。
体はほっかほっか。
洋風のお土産さんが立ち並ぶエントランス近くのアーケード。
その中央には着飾った大きなクリスマスツリー。
「よし、ここでも撮ろう」
って。
私を撮って。
一緒に自撮りして。
響き渡る軽快な音楽に。
足取りも跳ねる。
「今日もウサギだな結衣」
チラッと流し目で微笑む蓮くん。
きゅるって。
じゅわって。
もうさ。
私だけ?
人混みを避けるように。
端を歩いてくれてるし。
すると。
目の前に。
しとやかで荘厳なお城。
クイーンパレスが目に入ってきた。
真っ青な雲一つないそらに。
低い位置から照らす太陽の光線を浴びて。
水色の屋根と白い壁が浮き出ているように鮮やかだった。
「蓮くん見て」
私が指を差す。
見上げた蓮くんは、私を見ていた。
目と目合って。
私はかかとを浮かして。
ほっぺに唇を重ねた。
冷たかったけど。
リップの跡がキラッと光っていた。
優しく目尻を下げた蓮くん。
「あの時と同じだな」
「ん?」
「初めてデートした日と」
「ああ……」
あの時は。
必死に堪えてれた想いが溢れてしまって。
でも、今は。
溢れた想いを出せちゃうし。
それに、変わらないのは。
蓮くんは、ちゃんと受け止めてくれているから。
「だって。蓮くんがいけないんだ。私をこんな想いにさせちゃうから」
「そんなの、結衣だけじゃないよ」
蓮くんは首をかしげて。
私の唇をさらう。
温かさを通り越して。
汗をかいてきた私。
「今日の服も似合ってる。見た時から、ずっとヤバいんだ」
カチン。
って。
固まる私。
「結衣?」
「ひぇ、そう、そっか、蓮くんだって。そのグレーマフラー似合ってるし、かっこいいです」
眉を上げた蓮くん。
黙ってマフラーをほどくと。
私の首にゆっくりと巻きつける。
「え? いいよ。蓮くん寒いでしょ?」
「平気」
両手で整えながら。
顎を引いて私を隅々まで見回す。
「いいんじゃないかな」
「でも……」
コートのポケットに手を突っ込んで。
「カイロあるから、結衣もいる?」
ぶんぶんと首を振る。
だって。
熱いくらいだから。
「よし、じゃあ、あそこでチュロス買って、食べながらアドベンチャーワールドまで行くぞ!」
私の手を引いて。
少し足早に歩き出す蓮くん。
頬に触れていく空気が心地よくて。
私は、首元のマフラーを握りしめていた。
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