2話「精霊師(エレメンタラー)」
日が暮れなずむ頃、歓楽街ジュンカが見えて来たのだが不思議なことにその光景は以前とあまり変わっていなかったのだった
「魔物こっちには来ぉへんかったんかな?」
「誰かが全部退治したんじゃないですか?」
「ありえへんやろ…ウチら見た時上位種もけっこうおったもん」
ローズもレギも不思議そうにアレコレ議論している
もうじき夜だ、どちらにせよ行くしかないだろう
街の入り口も目立った傷もなく、門番に聞けば
『たしかにいつもよりは魔物が多く感じたが』
その程度の反応だったのだ
であるならばイフリートが俺たちに魔物を誘導していた、と考えるべきなのだろう
あの街ももしかしたら無事かもしれないな
「そうそう、行商人から聞いたんだが
南東にあった街は壊滅していて誰一人生き残っていなかったって言うじゃないか
何があったかは知らんが、お前達も十分に用心しておけよ」
何があったのか俺たちは知っている…がそれを誰も口にはできなかった
むしろ知られていないなら好都合、とさえ思ってしまうのだから俺はどう頑張っても聖職者など無理なのだろな
ひとまず金も無いので武器屋や雑貨屋で不要な武具アクセサリーなどを売り払い皆に配る
本当ならば素材があればギルドで換金してもう少し楽に稼げるのだが…
[真魔剣キルディクス:]
こいつのせいで全部吸われちまってるからなぁ…
インベントリの納品素材の項目を見る
[青色のカケラ]
[赤色のカケラ]
[アーケロンのヒレ]
[アッヴァの魚眼レンズ]
[アンバーコーンの虹色角(レインボーホーン]
……
さまざまなカケラ、そして単独で倒した時に手に入る納品素材…
「あれ?吸われてない?」
よく見れば魔剣も若干見た目変化している、もしかしてこれ以上吸えないのか?
鑑定結果をよく読んだ
[真魔剣キルディクス:攻撃力12000(上限)、本来の力を取り戻した魔剣、装備するとキルディクスの魂が宿ると言われている、装備適正レベル25]
「おぉ…そういやボルドーって奴と戦ってる時にそんな声も聞こえたっけなぁ」
おそらくその少し前から上限に達していたのだろう…
単独で戦ったのも、ボルドーと戦う少し前だけだしな
ともあれこれで金欠から脱出することができる
俺は先程手に入れた売却代金『銀貨330枚』を皆に振り分け、5人でギルドへ向かったのだ
「すまん、証を引き取ってほしいんだが」
『どうぞ』と言われ俺はインベントリから次々と取り出していく
受付の女性は、ギョッと目を見開き声を出さなくなる
「え、と?どうしました?」
俺が声をかけると受付の女性は思い出したように声を発するのだった
「…ッ、あっご…ごめんなさい
今どこから取り出されたのかと思ってしまいまして」
そっか、リキングバウトではもう見慣れた光景だったからすっかり忘れていたよ全く…
後ろを振り返ればミドもローズもやれやれといった風にため息をつくし…
レギなんか顔をプルプルさせながら笑いを堪えてやがる
「あ、空間収納をすこし会得してるので
それで、引き取り大丈夫でしょうか?」
どの素材なら良いのかわからないものだから色々取り出していた
上位種もけっこう混ざっているだろうが、選り分ける術の無いのだから仕方ない
「えーっと…見たことないのも結構あるんですが、少しお時間大丈夫ですか?」
まぁその反応は想定内だ
「じゃあ一杯飲みながら待ってますんで終わったら呼んでもらっても良いですか?」
ここのギルドも広いスペースがあり、冒険者達がそこで酒を飲んでいた
リキングバウトでは酒だけだったが、どうやら隣の飯屋とくっついており料理も食べられるらしい
それにしても広いギルドだ、受付の横のボードを見やると王都のギルド並みに依頼が貼り出してあるのだから凄い
俺たちが座り酒を頼んで待っていたのだが、なかなか呼ばれない
それどころか酒も出てこない
「すいません、お待たせしました」
受付が戻ってきた
「フクソギルド長が一緒にシロネを食べないかと仰られるのですが、皆様のご都合はどうでしょう…?」
え?まぁ別にいいけど、やっぱ証がマズったのかなぁ…
「ではこちらへ」そう言って部屋に通されるのだった
「ハッハッハ、よくおいでくださいました
酒もシロネもこちらに運ばせております、さぁどうぞおかけください」
えらく上機嫌なフクソギルド長
「お言葉に甘えまして、それでお話でもございますでしょうか?」
「さっそくですなぁシュウ殿は、まぁ一杯やってくだされ」
食べ始めると、とりあえず証の代金として金貨15枚を受け取った
「こんなにもいただけるのですか?」
「いえいえ、本来ならばもう少し多くてもおかしくはございません
ですが価値のわからぬ物をどう扱って良いものかと、幾分か低い値で見積もらせていただいております」
正直に話すあたり信用ができる人だと感じてしまう、実際はどうなのだろうな
鑑定しても価値まではわからないのだし
「そうそう、受付で『空間収納』をお使いになったとか
私も少々使えますが、あれは悪用されやすいですので
人目にはなるべくつかないよう心がけた方が良いでしょう」
そういえば最初に来た時、このギルド長インベントリ見ても驚かなかったしな
なるほど知られないよう隠しているんだろうな
だったらその時忠告してくれれば良いのに、なんて思ったけれど
まぁいい人なんだろうか、ギルドも信用第一ってことなのだろうな
「シュウ殿…それで本来ならば私は金貨30枚は、と考えておりました
もし、お金以外でお困りの事がございましたら
多少は手助けになれるやもしれません」
あぁ、それはとても助かる
ずっと50人近い人を連れまわすのには限界があるのだから
どう切り出そうかと思っているとフクソギルド長から話かけてきた
「おっしゃらずともわかっております、戦えない者達、冒険者の身分などはこちらで手配いたしましょう
それで今回の取引を受けていただけますでしょうか?」
つまり差額金貨15枚分これでどうだ?ってことかな
全然OK、むしろ…
「ギルド長、お心遣い感謝いたします
ですがそれでは俺たちに好条件すぎます、もしそれを頼めるのでしたらこの金貨15枚もお返しいたします
これで皆をよりよい生活を送れるよう便宜してください」
フクソギルド長はしばらくうつむき
『わかりました』と金貨を受け取ってくれた
これで俺たちの冒険の枷も無くなるわけだし、みんなが幸せならお金など惜しくはないな
まぁちょっとは残した方が良かったかもなんて思うけれど…
「そうだ、またレアなアイテムが手に入ったのでいかがです?」
俺は一枚の毛皮を取り出して見せる
シャノワールという魔物からドロップしたレアアイテムだ
「これは…素晴らしいですね」
まるで黒豹のような毛皮はスベスベとしており美しい光沢、漆黒の黒、大きさも十分傷も無い
たしか日本じゃ売ったら捕まるんだっけ?なんて心配はよそに
フクソギルド長は見たことのない毛皮だと大喜びだった
「これならば金貨5…いや10枚は出しても惜しくはありません、が
今は私もあまり余裕がありませんで」
長い付き合いになるだろう、ここは差し上げておけば良いだろうと思っていたのだけれど
「いえ、それでは私の気が済みますまい
少々お待ちくだされ、冒険者にぴったりの品がコレクションの中に…」
そう言って渡されたのは一本の笛だった
どうやら子竜と共にいるのを見て調教師かなんかだと思ったらしく、使役する魔物を強化する効果のある道具を選んでくれたようだった
俺も上位職になったらそういう職になるかもしれんが…
「あぁぁ!忘れてた!」
俺が叫んだものだから周りもびっくりしている
「なんやねん急に」
「上位職に転職するのすっかり忘れてたわ…」
それを聞くと皆も一斉に思い出したように『あぁ〜…』と頷くのだった
ところが、このギルドでも今は一人だけしか受けれないそうで
つい先日4人組パーティーが揃ってレベルが達したとのことで祝いの宴が開かれたばかりなのだと言う
「最近魔物が多かったもので、レベルが上がったという話が絶えませんでしたので…」
スタンピードのせいだろう、あの前であれば皆が上位職になれたということだったのか…惜しいことをした
じゃあ誰が受けるのか、俺やミドとローズは現状でも十分戦える
レギは魔物をどれだけうまく扱うか、といったところか
「ドルヴィンがちょうど良いんじゃないか?」
全身オークキング装備、HP多め
つまりそれだけなのだし、上位職になればとんでもないスキルが手に入ったりもするだろう…
ミドとローズも、ドルヴィンにもっと戦力になってもらうことに賛成だった
「ウチらか弱いんやし、頑張ってもらわんとなー」
さぁ決まったぞドルヴィン!転職だ!期待してまっせ
ドルヴィンが静かに口を開く
「…なぁお前ら、期待裏切るようで悪いが
俺はまだレベル19だからな?」
皆揃って信じられないものを見た顔になる
結局レギに受けてもらい、上位職の恩恵を受けていた
ついでに史上最年少とかいう宴も開かれたのだが、レギを育てたドルヴィンは終始複雑な表情を浮かべているのだった
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レギ レベル27 召喚士 エレメンタラー
レベル5 魔物レベル解放(召喚した魔物もレベルが上がるようになる)
レベル10 魔物の知識(弱点や耐性、特徴を知ることができる)
レベル15 ダメージシフト(ダメージを代わりに召喚した魔物に受けてもらう)
レベル20 中級召喚
レベル25 武器化 ーー
固定EX 召喚の指輪
固定EX 精霊の指輪
EX 希望(望みのアイテムがわずがに入手しやすくなる)
EX ギフト(力を与えることが可能になる)
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