1話「別れ」
章タイトルなどの変更はあるかもしれません
野営もおよそ10日目を迎える
俺たちは歓楽街ジュンカへ戻る
「やっぱスタンピードもウチらのせいになっとるんやろかぁ…」
不安そうにローズが漏らす
一度、俺たちはそうやって街から追い出されている
だが、どのみちあの規模の魔物の侵攻があったとなれば
俺たちを追い出したところで意味はなさないのだろうが…
ジュンカもまた例外でなく滅んでいる可能性が高いだろう
「今から俺たちはジュンカへ向かう、あの距離でのスタンピード発生ではおそらく3日目には魔物も着き始めるだろう
それから1週間、無論無事であればそれに越したことはないのだが
もしそうでないのならば…俺たちは現状把握と物資の補給
生き残りがいないかを確認しようと思う」
こちらの大陸で知っている街はジュンカくらいなものだ、大勢を連れて下手に動くのは得策ではないだろうとの話し合いの末に決まったのだった
「最後に、リヴァイアサンに挨拶していかなくてもいいかしら?」
ミドはそう心配するのだが、俺は『静かに寝かせろ』と言われている様な気がしてならないのだ
だからここは黙って去るべきだろう
「なにか美味しいものでも見つけたら届けに来ようぜ」
そう言って俺は手持ちにあった『上質な霜降り肉®️』をいくつか海に投げ入れておいたのだった
「キュイ!」
リドラも食べたそうにしていたから、きっと大丈夫だろう
「さぁ行こうか!」
「すいませんシュウさん…」
ん?レギが突然声をかけてくるから何事かと思った
「その…すいません、今のお肉いただけませんか?」
そう申し出るレギの後ろでは、鋭い眼光でこちらを睨む獅子がいるのだった…
「ほ、ほらルティ…最後の一個だからもう無いぞ」
嬉しそうに喰らいつくルティ、どうやらレギの意思と関係なく勝手に指輪から出て来たのだとか…
なんという浅ましさよルティ…
そんな事もありながら出発した俺たちは、海沿いをひたすら南下していた
だいぶ離れた頃に休憩をとり、若い者達は魔法を使って水浴びなどをしている
こうしてのんびりしていると、世界が平和だと錯覚してしまうものだ
実際は世界中がどんなことになっているかもわからないというに…今この場所、世界の何からも切り離された空間は平和そのものにしか見えないのだった
「よし、リヴァイアサンからも随分離れたし釣りすっか!」
ミドも『賛成!』と言いながら矢を作る
「ちょっと待った、それは何の矢だ?」
「え?魚が食いつきやすくて引き揚げられる矢だよ?
だって爆発とかしても魚見れないじゃん、シュウが取り出すのは全部切り身になっちゃってるし」
あぁ、変な矢じゃなくてよかった
…いや十分変な矢だと思うけど
俺のインベントリのせいなのか、子供達は魚=切り身だと思うようになってきていた
冗談っぽく『これが海を泳いでいるんだよー』なんて言ったら本気で信じていたからなぁ
リキングバウトでは肉と野菜ばかりで、俺たちも王都で魚料理が出た時は少し感動したくらいなのだから
子供が魚を見たことなくても不思議ではないのだった…
「あんさんが変なん教えるから、子供ら鵜呑みにしとんやで」
ほんっとすいませんでした…
釣れた魚の周りに、先程まで薄着で水浴びをしていた子供達も集まる
中には深海魚かと思わんばかりのグロテスクなのもいたが…
3mもある巨大なマグロのような『トゥナス』を
釣り上げた時には、もう大人も一緒になって騒いでいたのだった
「よくその細腕で釣り上げられるな…」
「え?シュウよりは力あると思うわよ?」
その後『腕相撲でちょっと勝負しないか?』って言ったら『なにそれ?』って
あぁ異世界だなぁ…って思う
「っしゃあー!勝ったー!」
そう叫ぶミド
俺は勝負して思いっきり…負けた
こっそりレギが教えてくれたけど、筋力強化の魔法を常時使っているそうだ
あぁそうか、弓の弦もかなり硬いのに軽々ひいていたしな
なんだかミドの強さの片鱗を見た気がしたのだった




