19話「西の大陸」
傷痕を歩き始めどれほどが経っただろうか
俺たちの持つ食料もほぼ尽きかけてきた頃にようやくその街は見えてきた
歓楽街ジュンカ
ここもまた冒険者が多い街として知られているところだ
それ故に遊び場も多くいつしか歓楽街と名のつくまでに発展した場所なのである
と言っても実は戦以前は帝国側の領土であったそうなのだ
王国により殆どが処分されたとはいえ、技術で栄えていた帝国側には未だに禁忌とされる道具の類も多く残っており
時折禁を犯す者がいたのだと言う
そういった者は殆どが帝国の理想論に心を奪われており、人類が栄える為に必要と信じて疑わないものだから手を焼くそうだ
まぁ即日に処理され魔物の棲む地に晒されるそうなので最近では滅多に現れないそうなのだけれど
「なぁシュウ、せっかく来たんやし名物でも食べに行かへん?」
「そうですね、私も一度食べたかったんですよ」
ローズとレギが揃って名物を食べたいと言う
きっとさぞかし美味しいのだろう
とりあえずはここの長に挨拶にいかなくてはならないのだが、なんせ約100人という集団
突然の訪問にあちら側も挨拶なしではどうした事かと思うはずである
「そんなわけで、だ…俺たちはどこへ向かえばいいんだ?」
領主がいるのならそこなのだろうが、俺たちはここへは初めてだったこともあり戸惑っていた
「おい、そこの者共!」
若い兵士が走って来て俺たちに声をかける
あぁ良かった、傷痕を向けたらそのまま街とは思ってなかったからな
案内してもらうのが一番だろう
「すまない、訳あって大勢で押しかけてしまった」
俺は兵士に西の大陸での出来事と、街総出で移動して来たことを明かし
付いて来いと案内された場所は、ギルドだった
「私がこの街一帯を治めているギルド長フクソだ、話では西の大陸からやって来たと…」
どうやらこの東の大陸、それぞれの街が自警団などを作り魔物から街を護っているそうで
帝国も消え、各々で発展を遂げてきたのだった
事のあらましを説明してとりあえずは街への滞在は許可してもらったのだが
皆金銭的なものはほぼ持っていない
なんとかならないかとフクソギルド長に交渉する
こちらはドロップ素材ならばかなりの数があるのだ、この際出し惜しみはしまい
そう言う事ならばと、ある程度の量は引き取ってくれたのだから有難い
100人ほどいる皆には銀貨5枚づつ渡し明日の正午にもう一度集まってもらう事にした
ある者は酒場で寝ており、別の者はカジノで文無しになったりしていたそうだったが
俺はギルド長と話をし、南東に既に冒険者が集う街が存在すること
そこならば100人程度ゆうに受け入れられるだろうと教えてもらえた
「ま…まぁ持ってたレアアイテムも結構あげちまったんだけどな」
どうもこのフクソギルド長、結構なコレクターで
部屋の壁には自慢の品々が多く飾られていたものだから俺は、リキングバウトの皆が住む場所の交渉に用いたのだった
後半は気を良くしたフクソギルド長が皆に名物を、と近くの料理屋から麺料理を運ばせており
俺たちはそこで、この街名物のシロネという…ソバ(?)を食べていた
「うーん…蕎麦だ、どう見ても蕎麦だ…」
俺は、その大根おろしのようなものとピリリと辛い香辛料のかかった蕎麦を見て故郷を懐かしく思うのだった
ローズやレギもまた、そのコシのある麺と絶妙な辛味、その膨よかな香りに酔いしれ
3杯もの蕎麦…いやシロネをペロリと平らげるのだった




