第八十三話 蒼VS朱里の最終決戦!?
「それでは、お昼休憩も終わりましたので次の種目に移りたいと思います」
頭の真上から太陽の日が燦々と振り注ぎ、額からじんわり汗が滲み出ると、涼しくて乾いた風がそれを吹き飛ばしてくれる。
「続いての種目は、チャンバラ合戦となります!ルールは簡単、参加する生徒は頭と背中に風船を取り付けて、スポンジ棒を持って下さい!そのスポンジ棒を使って敵チームの風船を二個割って退場させていく、最終的にコート内に仲間が多く残っているチームの勝ちとなります。ポイントは勝った方のチームに残っていた人数分入ります。それではエントリーされた皆様は指定の場所にお集まり下さい」
まさかね?僕が恐る恐る振り返ると、立花さんと朱里が立ち上がって、火花を散らしていた。
三種目も一緒だなんて⋯⋯それも寄りによってチャンバラ⋯⋯
僕の願いとは裏腹に、二人は睨み合いながら火花を散らし、指定の場所まで歩いて行く。
「それでは皆様がお集まりになる前に、これまでの結果を校庭前方の掲示板に貼らせて頂きます。この後も皆様頑張って下さい!」
そのアナウンスで前方掲示板を見ると、赤組153点、白組132点と貼り出されていた。
めちゃくちゃいい勝負じゃないか⋯⋯それなのに⋯⋯いや、信じよう、あの二人を信じよう。
僕は胸の高さで指組みをして、祈りを捧げるように何事も無いことを願った。
「それでは全員揃ったようなので⋯⋯」
赤組総勢五十名が山賊さながらに白組を睨み、開始の合図が待ちきれないのか?今にも襲いかかりそうな勢いで足踏みをしている。
一方白組四十八名は、まるで海賊のように赤組を蔑んだ目で睨み、指をさしたり手を叩いたりして相手を挑発する。
そして立花さんと朱里は⋯⋯もうすでに殴りあっていた。
立花さんが右ストレートを放つと、朱里はヘッドスリップで躱しお返しのように引き手に合わせて右ストレートを放つ。
立花さんはそれをダッキングして躱し、そのまま蛙のように飛び上がりアッパーを放つ。
はじめの一歩みたいだね⋯⋯そうじゃない止めなくちゃ。僕は急いで立ち上がり地面をかくようにしながら駆け出した。
そして立花さんと朱里の近くに到着すると、「二人とも喧嘩はやめて下さい!」と声を大にして叫ぶもエキサイトし過ぎて、僕の声が届かない。
今もなお、殴り合っている二人を止める手立ては⋯⋯
僕が頭を抱え身を屈めて割って入ると、立花さんと朱里の拳が僕の両頬にバギッとめり込んだ。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「景くん大丈夫?」「景!?」二人が慌てた様子で状況を確認する。
僕が足をガクガクさせながら顔を上げると、立花さんと朱里が口を抑えて明後日の方向を向いてプルプル震え始めた。
「ちょっとそこの二人何か言うことがあるんじゃないですか?」語気を強めて言うと、
「景くんご⋯⋯」「景ご⋯⋯」二人同時に僕を見るなり、腹を抱えて蹲ってしまった。
「本当になんなんですか?」僕が声を荒げると、鼻血鼻血と言って二人が僕を指さした。
咄嗟に鼻を拭うと、生暖かい赤い液体が手にべったりと付着する。
まぁそりゃ鼻血も出るか⋯⋯
「正座⋯⋯」
「え?」「へっ?」
「二人共そこに正座して下さい、じゃないと今後二人とは絶対に話ししません」僕が怒気を含んだ声を発すると、
「は⋯⋯はい」「わ、わかったわよ」二人はその場に正座をして、ピンと背筋を伸ばした。
「なにかあるたびに喧嘩、喧嘩、喧嘩⋯⋯なんでそんなに喧嘩ばかりするんですか?」
「だって朱里が⋯⋯」「だって蒼が⋯⋯」二人は不貞腐れ、口を尖らせ俯く。
「喧嘩をしないで下さいって言ってもするんですよね?もうほとほとうんざりしてきました」
「景くん⋯⋯」「景⋯⋯」二人が瞳を潤ませ僕を見上げた。
「どうせ言っても無駄なら勝負して下さい」
「え?」「え?」二人が顔を見合わせた。
「ルールは簡単です。目の前にいる赤組を多く退場させた方が勝ちです。カウントは僕がします。これが二人最後の喧嘩です、じゃないと本当に一生口利きませんからね。」
「わかったわ」「わかった」二人はスッと立ち上がると砂埃を払ってスタートの位置についた。
それをしっかり見送り、体をふらつかせながら僕も自分のクラスが集まってる場所へと戻る。
「それではこれより、チャンバラ合戦を開始します。位置についてよ〜い」『パァンッ』スターターピストルの音と同時に、二つの影が目にもとまらぬ速さで飛び出した。
次の瞬間、蒼閃光と朱い彗星が敵陣地を縦横無尽に動き回り、敵を一人退場させると残像だけを残して、また次の敵へと襲いかかる。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
ま、ちょっと大袈裟に言い過ぎたとはおもうけど、それくらい二人は早くて強い。
次から次へと赤組の生徒を退場に追い込んでいく。そして、「あっ!!」と言う間に赤組の生徒はいなくなっていた。
「し、試合終了〜〜」『パァンッパァンッパァンッ』スターターピストルが試合終了の合図を鳴り響かせると同時に二人が僕の目の前に走ってきて急停止した。
「景くん!」「景!」二人が僕の顔スレスレまで近寄り「「どっちが勝った!?」」と訊ねてくる。
結果は凄く言い難いんだけど⋯⋯「25対25で引き分けです⋯⋯」僕がか細い声で伝えると、
「ひき⋯⋯」「わけ!?」二人が同時に首を傾げて反芻した。
僕が引きつった笑顔を浮かべながら「そう、引き分けです」ともう一度伝えた瞬間二人は顔を見合わせ火花を散らし始めた。
引き分けの場合どうするんだっけ?と僕が考えている合間に、
「引き分けじゃーしょうがないわね」立花さんが腕を組み朱里を睨む。
「そうね⋯⋯しょうがないわね⋯⋯」そう言って朱里が拳を握った。
「ちょっ、二人とも!!」僕が二人の間に割って入ろうとすると、
「「最初はグー、ジャンケンポンッ」」二人はジャンケンをやり始めた。
まぁ、これならいいか?いいのか?
「「アイコでショ、アイコでショ、アイコで⋯⋯」」
それから数分アイコが続きなかなか決着がつかないので、僕は二人を放って白組の応援をする事にした。




