第八十話 障害物競走でデッドヒート!?
「続いての種目は障害物競走になります!エントリーされている生徒の皆様は速やかに指定の位置にお集まり下さい!」
涼しくて乾いた風が頬を撫でた。
と思ったのも束の間、次の瞬間真夏でもないのに熱風が吹き荒れ、不思議に思って辺りを見渡すと、立花さんと朱里が凛とした表情で立ち上がっていた。
「あら奇遇ね、あんたもこのレースにエントリーしていたの?」と立花さんが冷たい視線を朱里に送ると、
「うちにとっての障害物はあんただけだよ」と言ってあっかんべーをした。
こんな偶然があり得るのだろうか?数ある種目の中、この二人が二つも同じ種目にエントリーしてるなんて⋯⋯二人実は仲がよくて、示し合わせているわけじゃないよね?
とは言え、こうなったらあとは二人の出走順が被らないことを祈るしかない⋯⋯
僕は両手を組んで、目を瞑った。
「それでは、皆様がお集まりになる前に競技の説明をさせていただきます!障害物は平均台から網くぐり、タイヤ転がしに三輪車、最後はぐるぐるバットの計五つになります。赤組白組共に三名ずつ出走して頂き、上位三名にポイントが入る仕組みになっております。あ、皆様お集まりになったようですね、それでは出走される方は頑張って下さい!」
なんかこの障害物に悪意を感じるのだが⋯⋯そう感じるのは僕だけだろうか?
「第一走者整列して下さい」
その声でスタートラインに六名の走者が集まってくる。
空いた口が塞がらない⋯⋯よりによって、白組三名の内二名が立花さんと朱里だなんて⋯⋯なんかもう火花散らしているし⋯⋯
「位置について、よ〜い」『パァンッ』スターターピストルの音で走者一斉に飛び出した。
「おーーっと!白組二名が残り四名を置き去りにして行くー!早い早い!」
実況入るんかーい⋯⋯てか、立花さんと朱里早いな、何事もありませんように。
「あぁ~っと!ここで最初の難所平均台から網くぐりに二人が到達したぁ〜!」
三本並んでいる平均台の真中に立花さん、右側に朱里が軽快に飛び乗ると、少し体をふらつかせながらも、両手を広げ確実に進んで行く。
今の所、朱里が一歩リードしている感じだけど、流石に平均台では何も起きないよね?
「あぁ~っと!いきなり右の走者が真中の平均台に飛び移ったぁ〜!熱い!熱すぎる!」
なにも熱い事は無いと思う。僕は手で顔を覆って天を仰いだ。
「そのまま平均台を渡り切って、網をくぐる。早い早い早い!」
朱里早いな⋯⋯もう網くぐったよ⋯⋯てか網の出口でなにかモゾモゾし始めたんだけどなにしているんだろうか?
続いて立花さんも網をくぐり始めた。
「ここでようやく後方の走者が平均台に到達したぁ〜!ん?網くぐりでトラブル発生かぁ~?」
その実況で立花さんに目を戻すと、なんか悶えている。朱里出口縛ったな⋯⋯
コース横にいた先生が駆け付け、網を解くと立花さんが勢いよく抜け出した。
「続いての障害物は!?タイヤ転がしだぁ〜!先頭者早い早い!もうすでにタイヤを転がし始めている」
随分大きいタイヤだな⋯⋯スポッて体が容易に嵌りそうだ⋯⋯ここで立花さんもタイヤを転がし────────
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!タイヤが宙を舞って⋯⋯先頭者の体にスポッて嵌ったぁぁぁ!!またしてもアクシデント発生かぁぁぁ!?」
立花さんが右手を肩の位置まで上げて、なにか喋っている。恐らく「手が滑った」と言ってるんだと思う。てかあのサイズのタイヤよく投げれたな⋯⋯
コース横にいた先生が朱里を救出する。その間に立花さんが追いつき朱里と並んでタイヤを転がし始めた。
「続いての障害物は三輪車だぁ!!二人並んで乗車!!その間に後方の走者も迫ってくる!!」
まぁここは予想していた。マリオカート顔負けのデッドヒートを⋯⋯
「凄い戦いだぁ!!お互い譲らないデッドヒート!!熱い熱い熱い!!負けられない戦いがここにはある」
いや止めようよ、体当たりしたり、服を引っ張ったり⋯⋯もうただの喧嘩じゃん?その間に後方の走者も三輪車に乗車する。
これ抜かされそうだね?
「ここでようやく先頭者二名が三輪車から降車した!!最後はぐるぐるバットだぁ!!額にバットのグリップをくっつけて、先端を地面にくっつけたまま十回回ったらそのままゴールに向かって走りきって下さい!」
立花さんと朱里が同時に回り始めた。十回回りバットを離して走り出すと、二人とも斜めに走りだし気付いたらぶつかっていた。
そのままの勢いで、お互いに襟元を掴み合うと頭突きし合った。
「「いったぁぁぁぁぁい!!」」校庭中にその叫び声が響き渡る。二人は額を抑えて蹲ってしまった。
立花さんと朱里が蹲っている間に、後方の走者が二人を追い抜いて行く。その結果⋯⋯上位三名全員が赤組になってしまった。
競技を終えた立花さんが、額を抑えふらつきながら戻ってくる。
「立花さんお疲れ様です。ちょっといいですか?」
「えっ!?なに?」
ここでは応援合戦などの声で話ができないので、僕は立花さんを体育館裏に連れ出した。




