第七十四話 誓います!?
僕と立花さんは、燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びながら、取って置きの公園の真ん中で、一つに重なった共有ホログラムディスプレイから聞こえてくる声に耳を傾けていた。
『では、これより恋人経験値とレベルアップで得られる特典について説明させていただきたいと思います』
『まずはコチラをご覧ください』
その声を合図に、ディスプレイから一筋の光が伸びて、それが虚空を正方形になぞると、ステータスが浮かび上がってきた。
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【恋人】ステータス
景♡蒼 恋人Lv.1
恋人経験値.0 次のLvアップまで100
1Lv 各種割引券【一割引】
5Lv ????
10Lv ????
15Lv ????
20Lv ????
25Lv ????
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『ここまでで、ご不明な点やご質問はございますでしょうか?』
いや、不明な点しかないんだけど⋯⋯そう思って僕は、控え目に右肩の高さまで手を上げた。
『無いようなので、説明を続けさせて頂きますね』
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
立花さんが、プルプルと肩を震わせながら、口を抑えている。
音声認識システムだったのかな?そう思うことにして、立花さんをジト目で一瞥したあとに、また共有ホログラムディスプレイに耳を傾ける。
『まず、ここからは各々のホログラムディスプレイが無くなり、共有ホログラムディスプレイのみとなります。この共有ホログラムディスプレイは、恋人の名前を言ったあとにLOVEと頭の中で念じれば、いつどこでも、一人でも出現させることができます⋯⋯嘘です』
嘘なのか?てか、どこからどこまでが嘘なんだろう?
『頭の中で、恋人の名前を念じれば共有ディスプレイを出現させる事が可能です』
音声認識システムじゃなかったのか。
『次に、ここからはスキルが無くなって、一定レベルに達すると特典が得られるようになります。ま、恋人同士になったお二人にスキルは必要ありませんからね。恋人同士やれることはやりたい放題やって下さい』
なんか無茶苦茶だな。
『はい、無茶苦茶です』
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
『そのうえで私達日本政府は、お二人が結婚、そして出産できるよう最大限のバックアップをさせて頂きます』
「質問があります!!」と立花さんが元気良く右手を突き上げる。
『なんでございましょう?』
聞こえてるんかーい⋯⋯
「恋人経験値はどうやって獲得するんですか?」
『いい質問ですね、要領は今までと変わりません。ただ、以前みたいに警報音がなったりはしませんので、お二人でどうやったら経験値が沢山もらえるか色々試してみて下さい』
「りょ!ありがとうございます!」そう言って、立花さんが共有プログラムディスプレイに敬礼をした。
それを見た僕も、右手を突き上げ「質問があります」と声を大にして訊ねると、
『他には何も無いようなので、最後に特典について説明させて頂きます』とスルーされた。
僕はこいつが嫌いだ。そう思って、顰めっ面で立花さんに視線を移すと、腹を抱え声にならない声を出して笑っている。
もう説明聞くのやめようかな⋯⋯
『もう少しで終わりますので、最後までお付き合い下さい』
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
『特典についてですが、これはお二人が生涯の伴侶になれるように、日本政府から準備させて頂きました最大限のバックアップになります。例えば、1Lvから使える各種割引券は、ホログラムディスプレイをタッチして頂くとQRコードが現れます。それを携帯で読み込んで頂くと、日本全国どこでも、何にでも使える割引券が表示されますので、それをご希望の店舗で提示して頂ければ全て一割引きとなります。凄いですね〜』
凄いのかな?それが日本政府からの最大限のバックアップと言われると、いまいちピンとこないけど?そう思って立花さんに視線を移すと、
腕を組み、目を瞑りながら大きく頷いていた。
ま、立花さんがいいならいっか。説明もこれで終わりだろうし、暑いし帰ろう。
「立花さん、帰り────」
『それでは、新郎 景さん────』
「ちょっとまてぇーーい!」
『は?なにか?』
「僕と立花さんは、ついさっき恋人同士になりました。それなのに、なんで誓いの言葉を言い始めるんですか?」と声を荒げて言うと、
立花さんが「いいから」と言って僕の袖を引っ張った。
聞きなさいって事ですね?分かりました聞きますよ。そう思って、むぅーっと呻っていると、
『それでは改めさせて頂きまして、新郎 景さん、あなたは蒼さんを妻とし 健やかなるときも病めるときも 喜びのときも悲しみのときも 富めるときも貧しいときも これを愛し、敬い、慰め合い、助け合い その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか』
「ちっかいまぁーす」と立花さんが両腕を弾けるように突き上げた。
誓うんかーーい。それに、立花さんは新郎じゃないよね?僕が妻になってるよ⋯⋯
『説明はこれで以上となります。お二人の末永いお幸せをお祈りしております。それではこれにて失礼致します』
プツッって音と共に、音声が聞こえなくなる。
「すっごく良かったね!景くん帰ろ!」立花さんがそう言って、右手を差し出してくる。
立花さんのすっごく良かったねが、恋人同士になれたことを指しているなら僕も良かったと思う。だけど、共有ホログラムディスプレイの事を指しているなら⋯⋯正直少し不安だ。
僕はそんな事を考えながら、左手をズボンに擦り、立花さんに差し出された手を握った。
その瞬間、立花さんと視線が絡むと、なんか体全体にこそばゆいような感覚が走って、頬に熱が帯びたような気がした。
こうして、僕と立花さんのハラハラドキドキの恋物語がスタートを切ったのだった。




