第六十八話 続ラブコメ展開??
気が付くと、カーテンの隙間から見える東の空が白らみ始めていた。
アニメも終盤を迎えそうなのに、立花さんは取り留めのない質問を繰り返すばかりで、僕が感じていた嫌な予感を感じさせるような、確信めいて、的を得たような質問をされる事は今の所はなかった。
そう今の所はだ。
僕は、このアニメを少なく見積もっても三回は観ている。観ているからこそ、ここからは警戒しないと絶対にやばい!このアニメはこのあと、二人の距離がどんどん縮まって行くし、最後は主人公が告白する⋯⋯そう思った瞬間。
「私ここのシーン大好きなんだよね、雨の中の騎馬戦。雨の音と騎馬戦の攻防で絶対に聞こえて無いと思うけど、主人公がヒロインへの気持ち叫ぶじゃない?あれって本当に聞こえて無かったのかな?」
「さ、さぁー⋯⋯どうでしょう?」
「なにそれ?」そう聞こえて、横目で立花さんを見ると、何故か口角を上げながらアニメを観ていた。
本当に聞こえてなかったよね?立花さんに、花火大会で無意識に好きって思いを告げてしまった事が、今になって不安になってきた。
でも、もし聞こえていたのなら何故?立花さんはなんにも反応してくれなかったのだろうか?ちょっと待って、もしかすると僕は振られたのか?ヤバイ、頭の中が真っ白になってきた。
そしてアニメはいよいよ終盤である修学旅行、最終局面を迎えた。
一番警戒をしなくちゃいけない局面を迎えたというのに、僕はというと、完全に頭の中が白い靄に覆われ、警戒なんてする余裕がない状況に陥っていた。
「修学旅行かぁ、うちの学校は三年間おなクラだから一緒に行けるね?楽しみだよね?」
「は、はい⋯⋯」しゅ、修学旅行中に告白しろってことですか?
頭がくるくると回り始め、それと同時に告白する、しないが点滅し始める。そう、冷静さを欠いていた。
これでは朱里に勢いで告白してしまった時と同じではないか?
そうそれが頭を過った瞬間僕は、両手で自分の頬を『バチィィィン』と叩き、気持ちを落ち着かせた。
「ちょ、景くんどうしたの?大丈夫?」顔に影を落とした立花さんが、心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫です!さぁ続きを観ましょう!」僕がそう力強く言うと、
「う、うん、わかったわ」と小さく頷いて視線を戻した。
そして、遂にその時が来てしまった⋯⋯主人公がヒロインに告白をするシーンが流れると、立花さんがアニメを一時停止させ、僕に体を向ける。
「ねぇ景くん、やっぱり最後、付き合うときは男の子が言うべきだと思うんだけど、どう思う?」身を乗り出して、銀色の髪を靡かせると、碧眼を潤ませ上目遣いで僕に何かを懇願してきた。
予想通りの展開⋯⋯ただ、忘れられては困る。僕は自他共に認める陰キャ代表の意気地なしだ。
「立花さん、今じゃないんです。近いうちに必ず、僕の気持ちを伝えるので待って下さい」
完全に告白しているようなものだったと思う。端から見れば焦れったい、いつまで引き延ばすの?と思われても、意気地なしと思われても仕方がないと思う。
けど、これだけは最後にどうしても確認したい。
そう思って立花さんを見つめると、「ん」と一言言って僕の肩に頭を預けると、そのまま僕の手を握って、もう片方の手でアニメを再生させた。
そう、僕と立花さんの両片思いは、この時、この瞬間に両思いへと変貌を遂げたのであった。




