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第六十一話 グッドモーニング!?

 夢を見ていた⋯⋯

 

 僕が一番辛い時期に励ましてくれた、銀髪碧眼の少女の夢を⋯⋯


 『か〜め〜は〜め〜波ぁ〜〜』


 「うわぁぁぁぁ!!」僕はその爆音で目を覚まし『ガバっ』と勢いよく身を起こした。


 「私のメールを一切返信しないなんて、昨日はなにをしていたのかしら?」と言って、立花さんが目尻を上げて僕を見上げている。


 「ここ僕の家ですよね!?なにしてるんですか!?」と僕が語気を荒げてたずねると。 


 「ドラゴンボールを観ていたわ、やっぱりフリーザは最終形態が一番よね?それより、第三形態ってエイリアンに似てると思わない?」


 なにを言ってるんだこの人は?違う違う、き方を間違えた。


 「なんで僕の家にいるんですか!?」と更に語気を荒げて訊ねると。


 「お義母さんに許可は取ったわ」と言って、立花さんが素っ頓狂な表情を浮かべた。


 いや、僕にも許可を取ってよ⋯⋯そう思いながら頭を掻いていると。


 「で?」


 「え?何がですか?」


 「な、ん、で、私のメールを無視するのよ?」


 無視していたわけじゃない⋯⋯昨日は色々あり過ぎて、疲れて寝ちゃっただけだ。


 それより、なんて説明しよう?別に隠す事じゃないから言うのは構わないけど────けどだ、説明の仕方によっては、今この場で立花さんに告白する事になってしまう。


 このドラゴンボールが爆音で流れている僕の部屋で⋯⋯それだけは避けたい。そんな考えを巡らせていると、立花さんが身を乗り出して、更に詰めてきた。


 「⋯⋯だんまりとは怪しいわね⋯⋯私を放ったらかしにして⋯⋯」


 か、顔が近過ぎる⋯⋯僕は立花さんの肩を掴み引き離して「あ、後で話します!」と俯きながら告げると。


 「そう⋯⋯わかったわ⋯⋯それより景君、グッドモーニング」と立花さんが今更ながらに挨拶をしてきたので、


 「ば、バッドモーニング⋯⋯」と力なく挨拶を返した。


 そう、この挨拶が良くなかった、僕はまた火に油をそそいでしまったらしい。


 「あのさー、景くんの事が大好きな、友達以上恋人未満の女神が寝起きドッキリで、ドラゴンボールを爆音で流していたら、こんな幸せな事って無いじゃない?」


 いや、こんな不幸せな事って無いじゃない?なんて口が裂けても言えるはずも無く、僕は一言「幸せです」と呟く。


 鬼の様な表情を、至極ご満悦そうな表情に変えた立花さんが、頷き「じゃ、そろそろ行くから準備しなさい」と、さも当然かのように話しだす。


 こ、これは⋯⋯非常にまずいのでは?ここで、行くってどこにですか?なんて訊いた日には間違いなく殺られる⋯⋯それを想像したら身震いが⋯⋯


 僕は、「そ、そうですね、行きましょう!」といつも通り、その場しのぎの返事をすると、立花さんが明らかに怪訝そうな視線を僕に向けてくる。


 「で、景くん?三つ候補を送ったはずだけど、どこに行くかはもちろん決めてくれたのよね?」


 完全に墓穴を掘った。こうなったら、行けるところまで行くしかない⋯⋯その結果、例え泥沼にはまる事になったとしても────後のことは未来の僕に任せるしかない。


 「もちろん三番です!」と僕は、あたかも三つの候補を知っていたかのように答えると。


 「そう⋯⋯わかったわ⋯⋯ちなみに、一と二を選ばなかった理由を教えてもらえるかしら?」と更に問い質される。


 完全に泥沼にはまった⋯⋯こうなったら、未来の僕に、無事の生還を祈る事しかできない。


 そう思った僕は、自暴自棄になって「暑いからです」と理由を答えた。


 立花さんの顔を見るのが怖い。


 僕は目を瞑って俯き、立花さんからの反応を待っていたのだが⋯⋯待てど暮らせど一向に反応が返って来ない。


 僕は意を決して、目を見開き顔を上げると、顔を真っ赤にした銀髪のスーパーサイヤ人が立っていた。


 「ねぇ景くん?」


 「⋯⋯はい」


 「メール見てないわよね?」


 「⋯⋯⋯⋯はい」


 「じゃわかるわよね?」


 「はい、わかっております」


 僕は即座に携帯を取って、メールをチェックした。


 『明日遊びに行く場所の候補。1.プール2.プール3.プール』全部プールじゃん?


 僕がついつい「横暴です」と声を漏らしてしまうと、「クーックックッ」と立花さんが笑った。


 「ま、プールに到着したら、たっぷりと拷問⋯⋯間違えた、尋問させてもらって、昨日なにがあったか?洗いざらい話してもらうから覚悟しといてね」


 今絶対にわざと間違えたよね?プールで拷問⋯⋯沈められる?ダメだ怖すぎる。


 僕が、肩を落として「準備してきます」とか細い声で伝えると。


 立花さんが一言「いてらー」と言って、またテレビに視線を戻す。


 僕は、そんな立花さんを一瞥いちべつして、学校の授業いがいで初めて行くプールに、死の恐怖を感じながら準備を始めた。

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