第五十四話 スキル【未来日記】
『ガチャリ』と扉が開かれる音が聞こえた⋯⋯明らかに立花さんが戻ってきたのが分かったのに、僕は気付いていない振りをする。
視線は漫画本を一点集中しているはずなのに、意識が立花さんに持っていかれ、鼻が『ヒクヒク』と広がると、お風呂を上がったばかりの良い匂いが鼻腔をくすぐった⋯⋯
突然ベッドが軋み、撓んで僕の背中が沈む「ねぇ二階堂くん、髪乾かして」と聞こえ視線を移すと、両肘をベッドに託し、掌に顔を預けた立花さんがこっちを見ていた。
頬をピンク色に染め、着ぐるみパジャマ【熊】のフードをかぶりその隙間から銀髪を垂らす。想像していた以上の破壊力だ。
僕はとっさに目を逸らして「い、嫌です、やったことないですし⋯⋯」と答える。
「拒否権なんてあると思ってるの?」と立花さんが口角を上げ言うと、僕は「横暴です」と言って渋々ベッドを降りた。
「クーックックッ」と高笑いする立花さんが、ドライヤーを僕に差し出してきたので、「本当にやったことないので、なにがあっても怒らないで下さいね」と念を押して、胡座をかいている立花さんの背後に回って、ドライヤーを受け取った。
小さい背中⋯⋯初めて至近距離で見た立花さんの背中はとても華奢で、後ろから抱きしめたら潰れてしまうのではないかと思う。
僕は顔を横に『ブンッブンッ』と振り、気を取り直してドライヤーの電源プラグをコンセントに挿し込み、スイッチを押す。
『ブォォ〜〜』って音と共に、熱風が吹く「た、立花さん、根元と毛先どちらから乾かせば良いですか?」と尋ねてフードを脱がすと、「根元から毛先でお願い」と言われた。
僕はドライヤーを頭頂に移動させ、自分の指を恐る恐る銀髪の中へと入れる。ドライヤーの熱風が銀髪を靡かせ、水分を含んだそれはキラキラと輝く。
「立花さん、乾かし方これで良いですか?」と僕が尋ねると。
「ん」と立花さんが答える。
至極満足そうでなによりです、と思った瞬間。
『テレテレッテッテッテー』久しぶりにレベルが上がった。
立花さんが虚空に腕を伸ばし、ホログラムディスプレイの操作を始めると突然、首を傾げた。
「た、立花さん、髪乾かし難いです」と僕が言うと。
「頑張りなさい」と励まされた⋯⋯いったいなにを頑張るの?と思った刹那。
今度は虚空を指でなにかをなぞり始めた?いったいなにが起こっているの?と思った瞬間。
「二階堂くん明日、海に行くわよ」と立花さんが言った。
僕は「嫌です、海に行ったこと無いですし⋯⋯そもそも明日学校ありますよね?」と尋ねると。
「明日は日曜日よ、だから決定ね」と立花さんが答えた。
完全に日時の感覚を失ってた⋯⋯だとしてもだ、結局行く事を断わらせないなら聞かないで欲しい⋯⋯と訝しげな表情を浮かべていると。
「なに?なにか文句あるの?」と訊かれたので、「ありません⋯⋯けど理由を教えていただけませんか?」と尋ねる。
「なんか告げられたからよ」と立花さんが困惑した表情を浮かべた。
なに言ってんだこの人?
僕はそう思って、立花さんの髪から指を抜き、ホログラムディスプレイを出現させスキルボタンをタッチした。
「未来日記【弱】?」と僕が呟くと。
その瞬間、立花さんが凄い速さで振り向き「よ、読んだの?」と言って、明らかな動揺を見せる。
「読んでませんよ、なんて書いてあったんですか?」と僕が尋ねると。
「ひ、秘密よ⋯⋯」と立花さんが言って、前に向き直った。
あ、怪しすぎる⋯⋯そもそも未来日記ってなに?言葉そのままの意味だったら、未来の日記ってこと?僕が『うーん』と呻りながら立花さんの髪を乾かす。
「二階堂くん、絶対にそのスキル覚えちゃだめだからね、そして明日は絶対に海に行くから、そうと決まれば二階堂くんも早くお風呂入ってきて、早く寝よ」
立花さんが早口で話した事で、怪しさはどんどん倍増していったのだが、ま、訊いた所で教えてくれるはずもないし、立花さんに言われた通りお風呂入って寝よ。
そう思って「わかりました」とだけ答えて、僕は部屋をあとにした。
ここまで手に取って頂き、読み進め
て頂き本当にありがとうございます!
大変申し訳ありません、ストックが
切れました⋯⋯
五月中旬まで今やっている仕事が
忙しいので、ストックが溜まる当面の
間毎週月曜日の18時の投稿とさせて
頂きます。
もちろん、その間にストックが
増えましたらまた毎日更新させて頂きま
す。
引き続き応援して頂けると、励みになり
執筆が進むかも?笑
しれませんので、これからも読み進めて
頂けると幸いです。
何卒宜しくお願い致します!




