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第五十二話 泊まっていく!?

 立花さんに言われた、訊かない代わりに何か話ししてよ⋯⋯これに対して僕は、とりとめもない質問で話を広げていこうと思う。


 「今日は天気良かったですか?」と僕が訊くと「普通⋯⋯」と立花さんが答える。


 「もう少しで梅雨明けますかね?」と尋ねると「知らない⋯⋯」と立花さんが答える。


 「今日何か楽しい事ありました?」と訊いてみると「特にない⋯⋯」と立花さんが顔を歪めた⋯⋯


 ⋯⋯は、話が広がらない、これは、僕の話が壊滅的に下手なのでは?そう思って、次の質問をどうしようか考えあぐねていると『コンッコンッコンッ』と部屋をノックされる。


 僕が返事をする前に、部屋が開けられると、母さんが『ヒョコッ』と顔を出して「蒼ちゃん、お母さんの連絡先教えてくれない?」と立花さんに尋ねる。


 立花さんがこれですと言って、携帯の連絡帳を表示させ母さんにみせた。


 僕の目の前で、いったい何が行われているのだろうか?と一部始終そのやり取りを見守っていると。


 母さんが「ありがと」とだけ言って、僕の部屋をあとにする。てかなんで番号訊いた?いや、今はそれどころじゃない⋯⋯なんとかして、立花さんと言葉のキャッチボールを成功させないと!と思って、どの質問をすれば正解か?考えていると。


 「ねぇ二階堂くん、なんで学校の事は何も訊いてくれないの?」と立花さんに尋ねられた瞬間、僕の心は引き裂かれた。


 ⋯⋯訊いてしまえば⋯⋯僕も答えなくてはいけない事が出てくるかもしれない。だからその話題にはわざと触れなかった。


 それに、その話題に触れようとすると、脳に酸素が供給されなくなり、クラクラしてしまう。


 僕は、形容しがたい感情に押し潰され、また布団の中へと潜り込もうとした瞬間。


 「逃げるな!」先程まで正面を向いたまま、微動だにしなかった立花さんが、振り返って僕を一喝する。


 一喝された僕は、目の焦点を合わせる事ができなくなり、行く先を探していると「ねぇ二階堂くん聞いて」と穏やかな声音が聴こえてきた。


 「私ね、髪は銀色だし、瞳は青いし⋯⋯誰から見ても普通じゃないじゃん?だから、物珍しさに近寄ってくる人はいてもね、そういう人たちは興味が失せればすぐ私の前から去っていく。それって凄く寂しいんだよ⋯⋯最初から一人なら、その寂しさを感じる事なんてないのに⋯⋯」そう言って、立花さんは顔を曇らせながら話を続ける。


 「学校に行っても、話す友達が誰もおらんのはいやじゃ、一人はあいた、一人は寒い、一人は寂しい」と立花さんが言って、眉根を寄せる。


 それを聞いた僕は、アニメのシーンと立花さんを重ねると、頭の中に嫌な記憶が蘇ってきた。


 立花さんと出会うまでは、僕も一人だった⋯⋯身に覚えのある事に心が痛む。でも立花さん⋯⋯今は一人じゃないですよね?と喉元に絡んだ言葉が、僕の口を通り過ぎて出て行く事は無かった。


 そして「僕は今も一人です」と明らかに分かる作り笑いをして言うと。


 「それは違うじゃない」と立花さんが、僕のベッドに身を乗り出して、話を続ける。


 「二階堂くん、自分で壁作ってるじゃん?私は壁なんて作らないし、嫌な事があればちゃんと言うよ。それに、二階堂くん何も話してくれないじゃん?理由も分からず拒絶されたら⋯⋯私だって傷付くんだから⋯⋯」立花さんはそう言って、碧眼を揺らす。


 「僕は立花さんとは違いますから⋯⋯」


 僕がそう言うと「なっ⋯⋯」と立花さんが言って、一瞬更に身を乗り出してきたけど、すぐに『スンッ⋯⋯』と憑き物が落ちたような雰囲気を漂わせて、またその場に座りこんだ。


 「ごめん!私らしく無かった!!」立花さんはそう言って、相好を崩す。


 突然『コンッコンッコンッ』と部屋をノックされ、僕と立花さんは同時に扉に視線を移す。


 『ギッ』と扉が開かれた音が聞こえると、お盆を片手に持った母さんがにこやかに入ってきて「二人ともお腹空かない?」と言って、テーブルの上に料理を置く。


 それは、大皿に乗せられた唐揚げが食欲をそそる匂いを漂わせ、トマトの和風豆腐サラダとオイキムチの酸味の効いた匂いが鼻腔を刺激する。初めて立花さんが家に来た時に、一緒に食べたメニューだった。


 「めちゃくちゃ空きました、お義母さんありがとうございます」立花さんがそう言って、箸を持つ。


 「母さんありがとう⋯⋯」僕はそう言って、ベッドから下りて立花さんと肩を並べた。


 このメニューは凄く好きだけど⋯⋯滅多に作らないのに、よりによって今日なんで作ったんだろう?僕がそんなことを考えながら、唐揚げに箸を伸ばすと。


 「蒼ちゃん今日泊まってく?一応、蒼ちゃんのお母さんには遅くなるかもしれないから、ご挨拶のため連絡は入れといたんだけど」と母さんが言うと、僕の口元から唐揚げが取り皿へと逃げていった。


 「ちょ、母さ⋯⋯」

 「はい!泊まります!!」僕が母さんを止めようとした瞬間、立花さんが遮って返事をした⋯⋯


 「オッケー!じゃ、()()()()()にまた連絡入れとくね!」と母さんは言って、部屋をあとにした⋯⋯アリサさんって誰?


 僕が腹話術に使う人形みたいに、口だけ『パクパク』させていると「私、お泊りって初めてなんだけど!めちゃくちゃテンション上がるーー!ねっ、二階堂くん!?」と立花さんが言って、目を輝かせる。


 それを聞いた僕の目からは、光が失われ、開いた口からエクトプラズムが漂い始めた気がした⋯⋯

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