第四十九話 究極の二択!?
白い雲と黒い雲が、いつもより速いスピードで流れていくと、太陽が瞬きを繰り返す。空模様は毎日変わってしまうけれど⋯⋯変わらない気持ちってないのだろうか?なんて少し憂鬱な気分に浸ってみる。
昨日、朱里が部屋を出てすぐに、リビングへ向かうと、母さんと立花さんが立ち竦んでいた。
その場の空気から、なにかあったのがわかったけれど、いくら訊いても教えてくれない。それならと思って、部屋に戻り朱里に連絡をしたけど、結局折り返しの連絡も無く、その日は勉強会すらもお開きになってしまった。
一人で居る時は、こんな気持ちになる事はなかったのに⋯⋯何かしなくちゃいけない、という気持ちだけが逸っていく。
「二階堂くんおはよ」登校してきた立花さんが、軽く挨拶をして着席する。
いつものお約束すら無しですか?と思い、一瞥して「立花さんおはようございます」と返事をした。
まじ、どうすればいいのこの空気?人とろくにコミニュケーションを取ってこなかったから、こういう時どうしていいか全くわからない⋯⋯と頭を抱えていると、予冷が鳴った。
それと同時に、担任が教室に入ってきたのだが⋯⋯朱里がまだ来ていない⋯⋯そう思って空席を眺めていると、それに気付いた担任が「溝口な、今日休みだ」と言った。
いよいよまずい状況なのではないか?僕はそう思って、立花さんに視線を移したが⋯⋯心ここにあらず、目が死んでいる⋯⋯
それを見た僕は更に頭を抱えたが、悩んでいてもしょうがない、放課後⋯⋯放課後になったら立花さんに声をかけよう⋯⋯そう思って、一旦授業に集中することにした。
────そして放課後、僕は意を決して、立花さんに声をかけた。「た、立花さん!あ、あの⋯⋯」
「ごめん、急ぐから⋯⋯」
え?こ、これ、僕避けられてる?
そう思って僕は、自責の念に駆られる。やっぱり僕が原因なんだ⋯⋯ならなんとかしたい⋯⋯けどわからない⋯⋯意気地なし⋯⋯意気地なし⋯⋯意気地なし⋯⋯
そう、前の僕ならここで自己嫌悪に苛まれ⋯⋯違う、こんな感情にも行き着いて無かった。
意気地ある!!
僕は立ち上がって、立花さんを追いかけた。行き先もわからないし、なんの用事があるかも知らないけど、絶対に追いついてみせる。
そう思って一心不乱に走り出す。耳を通り過ぎて行く風切り音も、高速で駆け抜けていく街並みも、目に留めず、気に留めず。ただ一人の女性だけを探した。
そして駅前に到着すると、ようやく立花さんを見つけることができ、その安堵から僕は両膝に手を付き肩で息をすると、地面に汗が滴り落ちる。
僕は息を整え「た、立花さん⋯⋯」と腕を伸ばそうとした瞬間、視界に金髪マッシュの眉目秀麗な男性が現れて、すぐに身を隠した。
どうやら立花さんは、待ち合わせをしていたらしい⋯⋯それにしてもあの男性は誰なんだろうか?見たことの無い制服を着ている。
いやそれより、距離感バグってないか?なんであんな親しげに⋯⋯それを見た瞬間、僕の胸が締め付けられ、胃が縮み上がるような違和感を感じた。
そして、ここで僕は究極の二択に迫られた。あとをつける=キモイと、家に帰る=気になって夜も寝れない⋯⋯だ。
そうこうしているうちに、二人が歩き出してしまった⋯⋯僕は、『うーんっ』と呻って、あとをついて行くことにした。
二人に気付かれないように、細心の注意を払って⋯⋯いや、まじキモ過ぎる、と心の中で何度も呟きながら⋯⋯
そのまま暫くつけて行くと、二人が道路沿いのファミレスに入って、窓際の席に座るのが見えた。
流石に一人で入って行く勇気はないので、道路を挟んだ反対側で、二人の様子を窺う事にした。何を話しているかは全くわからない⋯⋯けど、本当に楽しそうに話しをしている。
それに⋯⋯あの二人⋯⋯絵になるなぁ⋯⋯めちゃくちゃお似合いだよ⋯⋯
そう思った瞬間、胸が『ズキンッ』と痛くなった。『ズキンッ』と傷んだ心が崩れ落ち始めると、目の前の視界から色が剥がれ落ちていく。
なんかどうでもいい⋯⋯全部どうでも良くなってきた⋯⋯帰ろう⋯⋯そして僕は、次の日から学校に行くのをやめた。




