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第四十六話 悲惨な勉強会

 いつも通りの朝。誰もいない教室。僕は両肘を机に託して、両手の指を突き合わせながらホログラムディスプレイを眺めていた。


ーーーーーー

ステータス一覧


レベル11【蒼】レベル4【朱里】


HP 34

MP 30

筋力 7

知力 92

魅力 73

俊敏 6


恋愛経験値 140 次のLvまで120


ーーーーーー

 

ーーーーーー


使用できるスキル

トゥンクトゥンク

番号交換


覚えられるスキル


スキンシップ(小) 告白

壁ドンッ      お泊り      

顎クイッ      プリクラ    

デートに誘う    旅行

スキンシップ(中) サプライズ

キスをする     マーキング     

恋人繋ぎ      交わり

天体観測

ーーーーーー


 ステータスは相変わらず伸び悩んでいるけど、覚えられるスキルの数が尋常じゃない。


 そして、そのスキルの種類⋯⋯使うことによって、間違いなくレベルが上がりやすくなっているような気がする。


 このままレベルが上がり続けたら、一体どれだけのスキルが使えるようになるんだろうか?と僕がそれに一抹の不安を感じていると、身の毛もよだつような気配を感じて、恐る恐る振り返った。


 立花さんが、体中から『怨念』という文字と一緒に、黒いもやを撒き散らし、刀を杖の代わりに使って、片足を引き摺りながら教室に入ってくる。


 明らかに、命からがら逃げてきたのが分かった。だけど、目に宿る微かな炎が、何かしらの使命があり、それをなんとしてもやり遂げなくてはいけないってのが伝わってきて⋯⋯


 僕は咄嗟に目を逸らした。


 「二階堂くん、憎っくき宿敵から、命からがら逃げてきたけど、結局捕らわれた仲間のために、最後の決戦に向かおうとしている、あなたのことが大好きな、友達以上恋人未満の女の子に、手を差し伸べないってどーいうこと!?」


 やっぱりそうなんだ、てか「説明が長いです」そう言って僕は肩をすくめた。


 それを訊いた立花さんが、「長いってなによ?」と言って、地団駄を踏みながら僕に指をさす。


 物語は簡潔に、説明が長いとわかりにくいでしょ?と思ったが、これ以上続けても埒が明かないので、「それで、立花さんは僕に何かご所望ですか?」と尋ねる。


 すると立花さんは、何かを思い出したような表情をしたあとに、「決戦が近いじゃない?」と訊いてきた。


 僕は首を傾げて、「すいません、本当にわかりません⋯⋯」と答えると、唇を噛み、もどかしさを露わにして、「一ヶ月後期末テストじゃない!!ここまで言えばわかるでしょ!?」と訊いてくる。


 あー、なるほど⋯⋯「断固拒否します」と一言告げて、僕は正面に向き直った。


 どうせいつものように、なんやかんや理由をつけて、無理矢理にでも家にくるんでしょ?そう思って、今日こそは、今回こそは絶対に断ってやると意気込んでいたのだけれど⋯⋯あれ?なにも言ってこない⋯⋯?


 少し気になって、振り返ろうとした瞬間。『ユー・ガット・メール』僕の携帯にメールが届いた。嫌な予感しかしない。


 恐る恐る携帯を取り出して、メールを開くと【一ヶ月間、蒼ちゃんに勉強を教えてあげなさい。母より】⋯⋯⋯⋯「なっ!!」と勢いよく振り返ると。


 立花さんは、とぼけた表情をしながら、銀色の髪を指先で『くるくる』といじっていた。


 「た、た、立花さん?」と尋ねると、「じゃ、そういうことで」と一言いって、自分の席まで歩いていって、腰を下ろした。


 僕は『してやられた』と思って、机に突っ伏し頭を抱えて呻った。まさか母さんを使うなんて、全く予想して無かった。

 

 「勉強会⋯⋯勉強会⋯⋯⋯⋯」完全にしてやられたショックから『ねぇ⋯⋯』、そんな言葉を『ねぇ⋯⋯ってば』繰り返し呟いてると、「ねぇ!景聞いてる?」


 「えっ!?」と顔を上げて、声の聞こえた方に顔を向けると、朱里が眉尻を下げて僕を見ていた。「ずっと声かけてたのに、シカトとかありえんくない?」


 「え、あ、ごめん」と僕が謝ると、朱里は『プクーッ』と両頬を膨らませて、ジト目で僕を睨む。「シカトしていたわけじゃないんだ、ちょっとショッキングなことがあって⋯⋯」と言うと。


 「勉強会?」と朱里が尋ねてきたので、「そう勉強⋯⋯」と言いかけた瞬間、食い気味に「なにそれ!?うちも行く!!」と満面の笑みを浮かべて距離を詰めてきた。


 (終わった⋯⋯)こうなってしまっては、朱里だけ断るのは難しいだろう。僕は諦めて、「わかった⋯⋯」と返事をすると、明らかにわかる殺気を感じて、それに視線を移す。


 鬼の形相をした立花さんが、腕と足を組みながらこちらを睨んでいた。「あ〜か〜り〜、あんた勉強なんて必要ないでしょ?」と怒気を込めて、立花さんが言うと。


 「はっ!?馬鹿じゃないの?転校してきたばかりで、傾向と対策ができないから、学年首位の景に訊くのは当たり前でしょ?」と嘲笑しながら朱里が言った。


 流石朱里、言ってることは理に適っている。そう思って、朱里に視線を戻そうとすると、「なら、二階堂くんの家に行く必要はないわよね?ノートにでも纏めて書いてもらいなさい」と立花さんが、嘲り笑いながら答えた。


 これもまた理に適っていると、そう思って立花さんに視線を戻そうとすると、「あんた本当に馬鹿ね、景の家に行くのに、なんであんたの了承が必要になるわけ?」と朱里が、意味ありげな笑顔を浮かべて答える。


 「ねぇ二階堂くん」

 「ねぇ景」


 二人同時に呼ばれ「えっえっ?」と言いながら、立花さんと朱里の顔を交互にみた。首が壊れちゃう。二人の間にいるってことがこんなに大変で、耐え難いことなんだってことを思い知った。


 「と、とりあえず、今日は家に行きましょう」と伝えると、立花さんは明らかにわかる不満げな表情を浮かべ、朱里は『パァッ』と表情を明るくして、二人が顔を見合わせると、お互いに『フンッ』と言ってそっぽを向いた。


 こ、これは大変な事になりそうだ⋯⋯僕は机に両肘をついて頭を抱えるが、この状況を作り出した母さんに一縷いちるの望みをかけよう。


 そう思って、ざわつく心臓と背筋に感じた冷たいものを無理矢理抑え込んで、授業に取り組む事にした。

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