第四十五話 『困ります』ってなに!?
肩を並べてマンキを後にした。来た時は、傘を差しても濡れてしまうくらいの大雨だったのに、今は鈍色の空を、水滴のついた街灯の光輪が『ぼんやり』と照らしつけてるだけだった。
「チッ」と思わず舌打ちが漏れ出てしまう。まだ雨が降っていたら、家まで送ってもらって、なし崩し的に家に上げて⋯⋯⋯⋯
「立花さんどうかしました?」
「え?なにが?」そう答えると、二階堂くんが心配そうに私の顔を覗き込む。「いや、なんか機嫌悪そうだったので⋯⋯」
そりゃ機嫌も悪くなるわよ、計画通りいかなかっただけでも苛々してるのに『⋯⋯困ります』ってどういう意味?
部屋いっぱいの星空に心が躍り、ついついアニメの大好きなワンシーンを演じたら、『立花さん⋯⋯蕩れ』って⋯⋯マジで『キュン』としちゃったじゃない!!
私の心、鷲掴みにされちゃったじゃない!?なのに⋯⋯告白したらどうするって聞いちゃった私が悪いのかな?もう本当になんなの!?レッド・タワーみたいに上げられて、下げられて、もう意味不が過ぎるんだけど⋯⋯
「あ、僕あっちなんで、立花さん今日はありがとうございました」と言って、二階堂くんが控えめに手を振りながら帰って行く⋯⋯
私は呆然としながら、ぎこちなく手を振り返したんだけど、えっ?待って、こんな微妙な感じで帰っちゃうの?マジ意味不が過ぎるんだけど。
呼び止めようとして、腕を伸ばしたけど⋯⋯すでに二階堂くんは、米粒みたいに小さく見える距離にいて、伸ばした腕が届くことはなかった⋯⋯
「ば⋯⋯、ばかぁーーーー!!」
聞こえるはずが無いってわかっているのに、その場で地団駄を踏んで、年甲斐も無く叫んじゃった⋯⋯
二階堂くんに悪気が無いってことはもちろんわかっている。でも、友達以上恋人未満の特別な女の子を、置いてけぼりにして、一人だけ帰る?
一人じゃ危ないので、家まで送りましょうか?とか、そういうのあっても良くない?
沸々と湧き上がる感情を、抑え込む事ができず「あぁーもぉー」と言って、水たまりとすれ違う人々をうまく避け、『カツカツ』と足早に家路につく。
そもそも二階堂くんの目に、私はどんな風に映ってるんだろう?こんな華奢で可憐な女の子は、そうそういないと思うんだけど?
すると突然、目の前に二人の男性が立ち塞がった。「あの〜、すいません、アンケー⋯⋯」
「はっ!?◯ね」
「す、すいませんでした」そう言って、蜘蛛の子を散らすように去っていった。
困ります、困ります、困ります、困りました困ります⋯⋯まるで呪いの言葉のように頭の中で反芻される。
二階堂くんの本心を知りたい⋯⋯何か良い方法は無いかしら?
その時、足早に帰路についていた私の足が、『ピタリ』と止まった。あ、あるじゃない期末テスト。
これよ、これしかない、これなら二階堂くんの家に毎日通える。毎日通えれば、チャンスはいくらでもあるはず!!
「よっしゃー」
私は、一度胸の前で両手を強く握り、天高く突き上げ雄叫びを上げた。
そうと決まれば、早く帰って作戦を考えなくちゃ!私はそう思って、周りにいた人の冷ややかな視線を物ともせず、軽やかにスキップをしながら帰路についた。




