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第四十四話 レベルアップで一番星

 部屋の前に到着するなり、僕の心のメーターは完全に振り切れ、警告灯が点滅し始める。


 恐る恐る腕を伸ばして、ドアノブを回し部屋を開けると。さっき見た写真と、同じ部屋の真ん中に、立花さんが漫画本を並べて座っていた。


 「お、お邪魔します⋯⋯」そう言って、部屋に入室すると、立花さんが枕を『バンバン』と二回叩く。絶対に横になりませんよ。


 そう誓って、靴を脱いで立花さんに背を向けて、胡座をかいた。


 「ねぇ〜二階堂く⋯⋯」と訊こえた瞬間、僕は叫び声を上げ、ペアシートに一本見えないラインを引いて「立花さん、ここからこっちには入ってこないで下さい」と言うと。


 「それさー、普通女の子が言う台詞じゃない?」と言って『クックック』と笑った。


 揶揄うのはやめて下さい。僕は普通がわかりません。そう思って、口を噤んでジト目で立花さんを睨む。


 「二階堂くん、ごめんて」そう言って、僕の前に一冊の漫画をスッと差し出してきた。賄賂か?


 それに視線を奪われた瞬間、ついつい顔が綻んでしまった。


 「これ、ずっと読みたいと思っていた漫画です」と言って、立花さんに視線を移すと「知ってる」と言われ僕は首をかしげる。


 「だって、いっつも携帯画面を睨みながら、買うか迷ってたでしょ?」


 確かに迷っていた。


 お小遣いが無限にあるわけじゃない⋯⋯でも、どうせ読むなら一気に読みたいと思って、買うに買えなかった⋯⋯そんな葛藤していた姿を見られていたのかと思い、少し恥ずかしくなり、視線を地面に落として。


 「あ、ありがとうございます⋯⋯」とか細い声で御礼を言うと立花さんは「うむ」と一言いって、持ってきた漫画本の山に、手を突っ込んで「どれから読もうかな〜」と上機嫌で探し始めた。


 僕は体勢を戻して、ずっと読みたかった漫画のページを捲った瞬間『トンッ』と小さな音と同時に、背中から重さが伝わってきた。


 「た、立花さん!?」振り返ると、立花さんが僕の背中に寄りかかっていた。


 「ちょうどいい場所にあったから寄りかかったんだけど、何か文句ある?」と真顔で言われ、僕はたじろぎ「ありません」と一言いって向き直った瞬間。


 『テレテレッテッテッテー』


 レベルが上がった。


 それと同時に背中が『スッ』と軽くなったから、立花さんがホログラムディスプレイを操作し始めた事が容易にわかった。


 僕は少しおどけた感じで「何かいいスキル使えるようになりました?」と訊いて、今度は体ごと立花さんに向けると。


 「に、二階堂くん、や、ヤバイよ、このスキル使いたい」と虚空を指さした。


 いや、人のディスプレイは見えませんから、と思って自分のディスプレイを出現させ、スキルボタンを押した。


ーーーーーー

使用できるスキル

トゥンクトゥンク

番号交換


覚えられるスキル


スキンシップ(小) 告白

壁ドンッ      お泊り      

顎クイッ      プリクラ    

デートに誘う    旅行

スキンシップ(中) サプライズ

キスをする     マーキング     

恋人繋ぎ      交わり

天体観測

ーーーーーー


 「天体観測ですか?」と訊いて、視線を戻すと「そう!それ!!」と立花さんは言って、虚空をタッチした。


 すると、ホログラムディスプレイが一瞬光り輝いたと思ったら、その光がディスプレイに吸い込まれ、またそれを吐き出すように、辺り一面にレーザービームが放たれると、部屋の中全体が星空で覆われた。


 「うっわー」これはヤバイ、幻想的って言葉があっているかはわからないけど⋯⋯いや、やめよう。いくら表現しようとしても、し切れない程、感動してしまった。


 また枕を『バンバン』と二回叩かれる音が聞こえて、音のした方へと視線を向けると、立花さんが仰向けになりながら星空を眺めていた。


 僕は「んぐぅ〜!!」っと呻って、両手で頭を『ガシガシ』と掻き、乱暴に仰向けになって、星空を眺めた。


 これはプラネタリウムなんて比じゃないな⋯⋯そう思って見に覚えのある星の名前を呟く。


 「一番明るい星、あれスピカですよね?」 

 

 そう訊いたのに一向に返事が返ってこない⋯⋯立花さん?


 「ねぇ〜二階堂くん、キスをします、違うわね、こうじゃないわ」


 やけに静かだと思ったら、立花さんはこれがやりたかったんだ⋯⋯それがわかって、いつもなら止めるんだけど⋯⋯今日だけは最後まで付き合います。そう思って、固唾を呑んで見守る事にする。


 「キスを、キスをしていただけませんか?キスをしたら、どうなんです?キスをしましょう二階堂くん」と言い終わった立花さんは、ゆっくりと僕に顔を向けた。


 「流行るといいですね⋯⋯」


 「え!?」


 「立花さん⋯⋯蕩れ」


 満天の星空と静寂に覆われる。『グググッ』と笑うのを堪える声が漏れると、僕と立花さんは腹を抱えて大爆笑してしまった。


 どれくらいの間、笑っただろうか?いつの間にか笑い声は止み、星芒の中、立花さんの青い瞳だけが僕を捕らえているのがわかった。


 穏やかな声音が聞こえてくる。


 ねぇ二階堂くん?「はい?」少しは私の事理解できた?「はい⋯⋯」私は二階堂くんを少しは理解できたかしら?「はい⋯⋯⋯⋯」


 じゃ〜最後に、私がもう一度告白したら二階堂くんはどうする⋯⋯?


 「⋯⋯⋯⋯⋯⋯困ります」


 僕がそう呟くと、青い瞳が一瞬細くなり立花さんは「ありがと」と一言いって、星空へと視線を戻していった。


 立花さんすいません、今はこんな返事しかできません。自分でもわからないんです。胸の奥から這い出ようとしている感情と、それを阻止するようにできたしこりの正体が。


 だから、もう少しだけ時間を下さい。


 僕が言った『困ります』の意味を、悪く捉えないで下さいと、星に願いを込めて。


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