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四十一話 立花蒼視点

 二階堂くんに告白してから数ヶ月、あんなに感じていた壁は無くなり、距離が縮まったような気がする。


 そして、ようやく⋯⋯あれは告白でいいんだよね?二階堂くんが歩み寄って来てくれた。『友達以上恋人未満』の意味は分からないけど⋯⋯自然と顔が綻んでしまう。


 嬉しいような、気恥ずかしいような?そんな感情が心を満たすと、胸の奥が『ジーン』と熱くなったのも束の間。


 なんで朱里が転校してくるのよ!それもどさくさに紛れて、二階堂くんの横に席を陣取るなんて、絶対に許せない。


 まさに天国から地獄、あからさまにわかる不機嫌な表情を浮かべて、頬杖を付き足を組んで朱里を威嚇する。


 だけどちょっと待って、私と二階堂くんは『友達以上恋人未満』の特別な関係、今更朱里の入り込む隙なんてあるわけないわ。


 「クーックックッ」気付いたら笑声しょうせいがこぼれ出ていた。


 「た、立花さん⋯⋯?(もう嫌な予感しかしない、保健室に一旦避難していいかな?)


 「き、きもち悪い、あんたなに笑ってんの?」と朱里が訊いてきたので、勝ち誇ったような表情を浮かべ「朱里一足遅かったわね」とゆっくり立ち上がりながら言い放った。


 二階堂くんがゆっくりと、足を屈めて席を離れようとする「二階堂くん、座ってなさい」


 「は、はい」と言って、二階堂くんは額に汗を滲ませながら背筋を『ピン』と伸ばす。その一部始終を見ていた朱里が『フゥ〜ッ』と一拍置いて話し始めた。


 「蒼、一足遅かったってなに?」となぜか悠然とした態度を見せながら訊いてきた。


 「私と二階堂くんは特別な関係になったのよ、朱里が入り込む隙なんて1ミリもないから」と淡々と言うと。


 「特別な関係⋯⋯ねぇ⋯⋯」

 

 なにこいつの含みのある物言いは、なんかムカつく「そうよ!だからこれ以上私達の邪魔はしないで!」と地団駄を踏みながら伝えると、朱里が二階堂くんに視線を移して、不敵な笑みを浮かべて口を開いた。


 「ねぇ景、うちと景の関係ってなに?」


 二階堂くんが困惑の表情を浮かべて「幼馴染?」と首を傾げながら言うと。


 「それって普通の関係とは違うよね?」


 二階堂くんが、顎を擦りながら確かにと呟く。その一連のやり取りを見ていた私は、朱里の幼馴染ムーブに心底腹が立ち『ギュッ』と拳を握った。


 そして私が、「幼馴染なんて、ただの腐れ縁じゃない⋯⋯」と俯き小さな声で呟くと。


 「そう!それですよ立花さん!僕と朱里はただの腐れ縁です!!ただ、小さな頃から知り合いだったから、他の人よりお互いを知っているってだけです」と二階堂くんが言った瞬間、朱里が勝ち誇ったような表情を浮かべたのが見えた。


 二階堂くんは恐らく、私を見てフォローしてくれたつもりなんだろうけど⋯⋯一番理解して欲しい相手にこんな言い方されたら、流石の私も落ち込むよ⋯⋯今すぐ釘バット片手に追いかけ回したい。


 私がより一層意気消沈モードを漂わせると、二階堂くんが起死回生の一言を言ってくれた「僕は立花さんに、恋人前提にと言いました!⋯⋯あっ⋯⋯」その瞬間、私は不死鳥のように息を吹き返して顔が綻び、二階堂くんは耳を真っ赤に染めて俯く。朱里はと言うと⋯⋯


 「ず、ずるいじゃない⋯⋯」と俯き呟く。


 私は二階堂くんと顔を見合わせて、首を傾げる。


 「だってそうじゃない!?アンタ達二人はいつも一緒に居て、レベルだって上げ放題じゃない、うちだって景の近くにいることができれば、こんなクソ女(あおい)になんて絶対に負けないし、景はうちを絶対に選んでくれるはず」朱里はそう言って、私の前に立ち塞がった。


 「いい度胸ね、いいわその喧嘩買った!」そう言って、私は立ち塞がった朱里に歩み寄り、睨み合う。


 視線がぶつかり合い火花が散る「「第二ROUND開始よ!!」」と同時に断言すると『ハァ〜〜⋯⋯⋯⋯』と二階堂くんが深い溜息をつき、ヤレヤレと動作をして、背もたれに寄りかかる。


 「ちょっと二階堂くん!」

 

 「ちょっと景!」


 「「このクソ女なんとかしてよ!?」」とこれまた同時に言い放つと、二階堂くんが明らかに冷めきった表情で「勝負するのは二人の勝手ですが、僕を巻き込まないで下さいね」と投槍に言った。


 それが合図だったかのように、私と朱里は両腕を上げ、手四つをして力比べを始める。


 「ぐ、ぐぅ〜〜、このクソ女!」と私が言って力一杯抑え込もうとすると、朱里も「今日こそ力の違いを見せつけてやる!」と押し返してくる。一進一退の攻防を繰り返していると。


 「お前達、いい加減にしろよ!もう既に授業中だ」と担任が言ったのと同時に、私達の動きが『ピタリ』と止まった。


 「先生、だって朱里が⋯⋯」そう言って、お互いに手を離し先生の方に向き直る。


 「立花さん、こわ〜〜い」とわざとらしく瞳を潤ませる朱里を見て「チッ、女狐が」とついつい本音が漏れ出てしまった。


 その光景を見ていた担任が、深い溜息をついて『う〜ん』と顎を擦りながら唸る。「二階堂も二階堂だ!二人の知り合いなら止めてやれ」そう言った担任が、何か良案を思いついたのか口角を上げ目を細めて話し出した。


 「二階堂、溝口と席を交換しろ」


 「先生それは僕に、立花さんと朱里の間に席を置けってことでしょうか?そうだったとして、理由をお聞きしても宜しいでしょうか」と二階堂くんが毅然とした態度で尋ねる。私はまた二階堂くんの隣の席になれるなら、何も言う事ないのに⋯⋯


 「お前達三人の問題で、席替えするとクラス全体に影響するし、ここで三人の内一人を移動させても結局揉めるだろ?なら元凶である二階堂、お前が二人の間でなんとかしろ」


 「「なんとかなります!!」」とこれまた私と朱里が同時に言葉を発すると。先生が「だそうだ、あとは任せた」と言って、二階堂くんの肩を一度叩き、ひな壇へ戻っていった。


 二階堂くんは、目を丸く見開き口をパクパクさせる。


 そんな放心状態の二階堂くんを、私と朱里で席の移動させこれにて、一件落着となったのだけれど⋯⋯


 私は自分の席に座り、頬杖をついて窓の外を眺めた。朱理が転校してきた⋯⋯そこまでして二階堂くんを自分のものにしたいって気持ち、本気度がひしひしと伝わってくる。


 二階堂くんを思う気持ちで、負けるはずが無い。だけど、正直二階堂くんと朱里の過ごした日々を考えると不安になるし、弱気にもなる。


 けれど、今は何があっても、なにを言われても頑張れる気がする。あの二階堂くんが『恋人前提』って公衆の面前で言ってくれたから。


 『二階堂くんが本当に好き⋯⋯』私はそう思って、ポケットからおもむろに携帯を取り出した。

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