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四十話 嵐を呼ぶ転校生

 六月一日、この時期に入ると空は情緒不安定になる。ついさっきまでは、笑顔を見せていたはずなのに、いつのまにか泣き出しそうな表情を見せている。


 それはまるで、これから起こる嵐の様な出来事を予測しているかのように思えて、僕は心中穏やかではいられなかった──────


 その日も、いつもと変わらず教室に⋯⋯以下省略────。流石に省略し過ぎて、これじゃわからないよね?


 いつもと変わらずとは、教室に一番に乗りして、一人ぶつぶつとLOVE♡GAMEの考察をしていることなんだけど⋯⋯つい最近またレベルが上がった。


 ステータスなどは、特段変化がないので省略するとして、このスキルを見てほしい。 


ーーーーーー

使用できるスキル

トゥンクトゥンク

番号交換


覚えられるスキル


スキンシップ(小) 告白

壁ドンッ      お泊り      

顎クイッ      プリクラ    

デートに誘う    旅行

スキンシップ(中) サプライズ

キスをする     マーキング     

恋人繋ぎ      交わり

ーーーーーー


 交わりって何?ネットでいくら調べても、モザイク処理されていて詳しい事は結局わからなかった⋯⋯わからなければ余計に知りたくなるのが人の性、絶対に調べてやるぞと意気込んでいると。『ガラッ』


 教室後方の扉が開き、一人のクラスメイトが何故か机と椅子を持って入ってきた。


 何をしているのだろう?僕はそのクラスメイトを目で追いかけていると、無言で立花さんの席の後ろに机と椅子を置いて、何事もなかったように自分の席へと戻って行った。


 いやいや、それ絶対におかしいでしょ?その机と椅子はいったい何に使うの?そう思った瞬間、突然背後から物凄く冷たい冷気が漂ってきた。


 振り返ると、立花さんが両腕を擦り『ブルブル』と震えながら、ヨタヨタと右往左往しているのが見えて、すぐに目を逸らした。雪山で道に迷ったのだろうか?


 「あのさー、二階堂くんのことが大好きな友達以上恋人未満の女の子が、雪山で遭難しかけてたら普通手を差し伸べるでしょ?」立花さんはそう言って(さげす)んだ目で仁王立ちする。


 色々とツッコミたい事はあるけど、やっぱりというか雪山で遭難しかけてたんだ⋯⋯


 僕は顔を左右に振って『ヤレヤレ』と少し呆れた表情を浮かべていると。


 「二階堂くん、なにこれ?なんでこんな所に机と椅子があんの?」それは僕も知りたい。


 ただ、その理由を知らなかったので、一言「さぁ」と呟いて正面に向き直った。


 ちょっと冷たくない?とでも言いたげな表情を向ける立花さんを横目に、何故か心がざわめき落ち着かない僕は、机に両肘を付いて指組をしながら小さな溜息をついた。


 チャイムが鳴り響いたのと同時に、担任がひな壇の上に立った。「転校生を紹介する」


 こんな時期に転校生?僕の心臓は大きく跳ね上がり嫌な予感がした。「溝口、入れ」


 こういう時の嫌な予感は大抵当たる⋯⋯教室前方の扉が開くと、黒髪ボブの女の子が髪を『フワッ』っと跳ね上げさせて、颯爽と教室内に入り、ひな壇の上で不敵な笑みを浮かべた。


 「「「ブーーーーッ⋯⋯⋯⋯」」」と三人同時に噴き出すと、朱里がVサインをして「来ちゃった」と言い放った。


 「なんだお前達知り合いか?」と担任に尋ねられる。来ちゃったって⋯⋯僕がそう小さく呟き顔を横に振り、立花さんはブリザードを体のまわりに巻き起こして「知りません」と一言呟き、そっぽを向いた。


 日下部くんはと言うと、体を微かに震わせながら小さく頷いた。


 その様子を見ていた担任は「まぁいい」と一言いって話を続ける。


 「溝口すまん、席は準備しといたのだが急な事で場所までは決められなかった⋯⋯」そう言って軽く会釈すると、朱里は手を左右に振り全然構いませんって態度で笑った。


 その笑顔が怖い、と僕が項垂れていると自己紹介が始まった「私立女子高から、両親の都合で転校して来ました、溝口朱里って言います。みんなよろしくね!」


 それが終わった瞬間、男子生徒からは歓声が上がり、女子生徒からは冷ややかな視線を送られる。そんな歓声も視線も意に介さず『ツカツカ』と歩き始めた。


 颯爽と僕の横を通り過ぎて、机と椅子を移動させると「先生、うちこの場所がいいです」と僕と立花さんの間を指さした。


 「うむ、とりあえずそこでいいか」


 うむじゃないだろ。よりによって立花さんの横に⋯⋯絶対に揉める。そう思って、眉を下げ恐る恐る朱里に視線をやると。


 「景よろしくね!」と言って僕の机にピッタリとくっつけてきた。その瞬間、立花さんがブリザードを強めたのか?異様な寒さを感じた。


 「景、ここなんか異様に寒くない?」朱里が両腕を擦り僕をみたので、僕は立花さんに視線を移した。


 それに気付いた朱里も視線を移すと、そこには鬼の形相をした雪女もとい、立花さんが頬杖を付き、足を組んでこっちを睨んでいた。

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