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三十八話 体育館裏に来て下さい!

 日陰に覆われ、静寂に包まれた体育館の裏手に立花さんを呼び出していた。僕は眉間に皺を寄せ、汗ばむ手を握って、勇気を振り絞り思いを告げる。


 「こ、こ、こっ、こっ、こい」

 

 「鶏のものまねかしら?」


 ────時は少し遡る。

 

 

 僕はいつも通り、教室に一番乗りで自分の席に着いていた。でも今日は、いつものようにLOVE♡GAMEの考察や分析はできそうもない。


 昨日スキル【告白】を取得してから、心臓がうるさい。鳴り止まない、もしかすると心臓と言う防音設備の中で、ずっと誰かが和太鼓の練習でもしてるんじゃないか?ってぐらいに騒がしい。


 「告白って、こんなに緊張するものなんだな」とついつい声を漏らすと、登校してきたクラスメイトに白い目で見られる。

 

 僕は咄嗟に目を逸らして、何食わぬ顔で頬杖をついた。毎度のことながら、自分がキモい。

  

 そんな自分に嫌悪感を抱いていると、突然背後から邪悪な気配を感じ振り返ると、立花さんが顔面蒼白で震えながら教室に入ってきた。


 咄嗟に駆け寄り「立花さん大丈夫ですか、何かに取り憑かれたんですか?」と尋ねると、面食らった表情を浮かべて『ワナワナ』と震えだす。


 「違う、違うよ二階堂くん、これじゃお約束にならないじゃない」


 「えっ!?何がですか?」と僕が尋ねると。


 「ここはいつも通り、私のことをみて見ぬふりをする。で、私は二階堂くんのことが大好きな女の子が、何かに取り憑かれたみたいにフラフラ歩いてるのに、手を差し伸べないってなにごと?って言わないと、一日始まらないじゃない、Take2よ!」


 そう言って、立花さんは鼻息を荒くして『ツカツカ』と教室を出ていく。僕は肩を窄めて、しぶしぶ自分の席に着いた。


 頬杖を付いて、物思いにふける。ごめん立花さん⋯⋯今日だけはいつもの僕を求めないで欲しい。


 そんなことを考えていると、毒々しい気配を感じて、恐る恐る振り向くと。何か悪い物でも食べたのか?顔が青褪め、頬のこけた立花さんが見えたのと同時に、駆け寄り両腕を掴んだ。


 「た、立花さん!放課後体育館裏に来て下さい。お話があります」


 そう伝え終わると立花さんは、金魚みたいに口を『パクパク』させながら唖然とした表情をみせるが、僕の目をみるなり「わかったわ」とだけ言って、何事も無かったかのように自分の席に着いた。


 それを見届けて、僕も席に着こうとした時にあることに気付く。あれ?やけに教室内が静まり返っているような⋯⋯?


 『パチッ⋯⋯』


 音が聞こえたのと同時に、辺りを見渡すと。ス、スタンディングオベーション!?


 『パチッパチッパチッパチッ』


 登校していたクラスメイトが、僕と立花さんに、にこやかな表情を向けている。ヤカンが沸騰したみたいに『カーッ』と顔が熱くなり、すぐさま席に着いて突っ伏す。


 ぜ、全部聞かれた、てかこの拍手はなに?僕と立花さんの演技じみたやりとりを見ての拍手なのか?それとも僕たちを応援しての拍手なのか。


 どっちにしても恥ずかし過ぎる。


 心臓が『バクバク』と鼓動を打っているのがわかる。クラスメイトの反応もそうだけど、いきなり呼び出して、立花さんはどんな顔をしているのだろう?僕は、席に突っ伏したまま顔を立花さんに向けると、立花さんは携帯を片手に、何事も無かったように髪先を指先で『くるくる』といじっていた。


 流石、鋼の心臓の持ち主⋯⋯

 一人狼狽え、恥ずかしがっていた自分が情けない。僕はそう思って、来たるべき時に備えて、感情と意識を刈り取った。

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