第二王女
城内に入ったエリスフィーナとガルドリック達四人は案内の侍女らしいメイドに案内されて城の中の客間に通されていた。
「うわぁ……」
室内の初めてみる調度品や壁に掛けられている絵画の数々にエリスフィーナはキョロキョロとすっかり興味津々となっていた。
「流石は大陸有数の魔導立国、国力の高さが感じられますねぇ」
クレスがメガネをクイクイと動かしながら室内を見回している。
「アンタもキョロキョロしない。物見遊山じゃないんだから」
メルティローズがクレスにツッコミを入れる。エリスフィーナがキョロキョロするのはある意味様になるがクレスのキョロキョロは恥ずかしいらしい。
「王女様は直ぐに見えられます。それまでこちらでお寛ぎ下さい」
侍女はワゴンを押しながら客間から立ち去っていく。侍女はエリスフィーナ達にお茶を出していった。
「これ、何ですか……? カップ……ですよね?」
侍女が用意してくれたお茶に対して、エリスフィーナはまるで猫の様に初めて見る豪華なティーカップにおっかなびっくりという仕草をしていた。
「エリス、そんなに警戒するな。ただのお茶だ。熱いから火傷には注意しろよ?」
隣に座るガルドリックからから心配する様に声が掛けられた。
恐る恐るティーカップを手にしたエリスフィーナはフーフーと息を吹きかけカップを口に運ぶ。その時
ーコンコンー
「失礼します。ガートルード第二王女がお見えになられました」
部屋の扉が叩かれ
侍女から王女がやってきた事が告げられた。
ーガチャー
「お忙しい中、御足労ありがとうございます。白銀の勇者様、そしてハイエルフの精霊使い様」
部屋に入ってきたガートルードは入るなりスカートをつまみ上げる貴族の淑女が行う挨拶を綺麗な動作でして見せた。
反射的に立ち上がったガルドリックとエリスフィーナも頭を下げて応対する。同じ様にメルティローズとクレスの二人も恭しく頭を下げガートルード王女に経緯を示す。
「先日は悪漢からお救い下さいましてありがとうございました。私を護衛していた者達も含めて改めて皆様に御礼申し上げます」
ガートルード王女は以前と違い黄色いドレスでお姫様然とした格好をしている。
そんなお姫様からなんども頭を下げられてしまい、エリスフィーナはすっかり恐縮してしまっている。
「今日は貴方方にも晩餐会に参加して頂きたくお越し頂きました」
ガートルードは対面のソファーに座るとエリスフィーナ達にも座る様促してきた。
晩餐会への参加は事前の手紙で知らされていたが……一応、一国の王家が主催する晩餐会に参加するだけでも栄誉な事ではある。
ここで国の重鎮や貴族のお歴々達から覚えめでたくなれば、今後のローランド王国での暮らしにおいては間違いなくプラスに繋がる。
「本日は王家主催の晩餐会。どうか皆様には楽しんでいって頂きたいと考えています。貴方方にはピッタリの衣装も御用意させて頂いてます」
ガートルード王女の言葉と共に侍女の集団が入室してきた。彼女達はドレスやタキシードを手にしており、それらをエリスフィーナ達に着せようという事であるらしい。
「ガートルード王女様、俺達に晩餐会に参加する以外に何か要望がお有りなのですか?」
ガルドリックはガートルード王女に自分達を晩餐会に呼んだ理由を尋ねる。流石に単にパーティーを楽しんで貰う為に呼ばれたとは考えてはいないらしい。
「誠にお恥ずかしい話なのですが……権力と富の集まる所には魑魅魍魎がついて回るものでして……」
ガートルード王女は言葉を選んでガルドリック達を呼んだ真意を話し始めた。
彼女は先日のお忍びでの宿屋での食事以外にもトラブルに見舞われる事が増えてきているそうなのだ。そんな権力者らしい独特の悩みにまつわる話にガルドリック達三人は神妙な顔で耳を傾けている。
(え〜と……?)
惟一、人間社会に疎いエリスフィーナだけが頭に疑問符を浮かべている状態だった。
「今の状態で不特定多数の人々が集まる晩餐会への出席は……私は辞退させて頂きたかったのですが、姉が私達のハレの舞台だからと……」
ガートルード王女は今の誰に狙われているか分からない状態で人前に姿を見せる催しには出席したくないのが本心なところな様だ。
しかし、今回の晩餐会は彼女の姉フィリア第一王女の婚約発表の機会でもあるらしいから我儘は言っていられないそうなのだ。そこで
「白銀の勇者様……どうか私をお守り頂けませんでしょうか?」
ガートルードは姿の分からない自身を狙う何者かから自分を護って欲しいと打ち明けてきた。
「俺達をそんな簡単に信用して大丈夫なのか?」
ガルドリックは既に面識があるとは言っても初対面に近い自分達にそこまでの内容を打ち明けてしまうガートルード王女に疑問をぶつけてみた。
「それは、白銀の勇者様ですから……それに既に一度見ず知らずの私を助けて頂いておりますので……」
ガートルード王女はガルドリックがいかに信頼に足る勇者であるかを語る。そこまで信頼を寄せられて頼みを断れるガルドリックでは無かった。
「分かった。俺達は…招待客の振りをしながらガートルード王女様をお守りすれば良いんだな?」
ガルドリックは既にガートルード王女の護衛に頭がシフトしていた。




