王城への招待
エリスフィーナが広場でガルドリックからアクアマリンを受け取った夜の翌日、彼女達はドワーフの鍛冶屋で依頼していた品を受け取ってギルドの訓練場へ移動。
そこで走り込みからの体力作りから始める訓練を皆で行っていた。
数日でどうにかなる話では無いが、ぶっつけ本番で本番仕事に臨むよりは……という事で、ヴァイス達新人パーティーだけでは無く、ガルドリック達も一緒に体力作りから始めていた。
「最初は走らなくてもいい。歩いて防具の重さに慣れておけ。冒険者は歩けなくなったらおしまいだ」
「はぁ……はぁ……ここで一息つきませんか?」
ガルドリックが新人達に指導するその後ろからすでにギブアップ気味のクレスからボヤキの入った休憩の提案が出た。
「今は持久力の底上げの時間だ。無理やりにでも歩け」
こうして、訓練場にて現役冒険者達が訓練に励んでいるという、他の訓練中の冒険者候補の若者達にとって非常に珍しい光景を披露するのだった。
「まずは弓を番えて矢を放つ動作そのものに慣れていきましょう」
また、エイミーにはエリスフィーナが弓の扱いについて指導しており、主に的当てでの訓練を実施していた。
「エリスさ〜ん、中々真ん中に当たらないんですけど〜」
長い事反復練習をしてみたエイミーから上達している実感が感じられないというクレームが寄せられてきた。的を見るとエイミーが放った矢は的の右側に集中する感じで寄っていた。
「次からはいまの狙いからほんの少し左に寄せて見て下さい」
エリスフィーナは的に刺さった矢を回収しながらエイミーに改善点を提示する。
また、再利用可能な矢を選別してエイミーに返却した。そろそろエイミーも腕が疲れてきており、引き絞るのがやっとという感じになってきた。
ードスッ!ー
「やったぁ! ド真ん中ぁ!」
本日的当てを始めてからの初クリティカルヒットであった。
こうした練習を数日繰り返していると、いつの間にかガートルード王女から王城に招待されている約束の期日を迎えていた。
その日も朝から訓練場にて反復練習をしていたエリスフィーナ達だが、日が傾き始める時間になった頃
「エリス、今日はそこまでだ。城へ行くんだから身だしなみにはそれなりに気を付けていかないとな」
エイミーの的当てを指導していたエリスフィーナにガルドリックが話し掛けてきた。
彼の後ろにはメルティローズとクレスの二人もおり、今日の夜に行われる晩餐会に向けてそろそろ準備をしなければならない時間だ。
身だしなみといったところで彼等に出来るのは身体を清潔にしておくくらいしか無い。
ガルドリックはヴァイス達に宿屋で大人しくしている様に言い含めると、皆で銭湯で入浴と衣類の洗濯を済ませ彼らなりに万全を期して、王都セレスティアにある王城へ向かう事にするのだった。
ローランド王国の王城は噴水のある広場から更に先に進んだ地区にあり、王都セレスティアの北側に位置していた。
真っ白な城壁に水色の屋根が目立ついかにもと言った風貌の城である。その正面入り口にやってきたエリスフィーナ達四人は門で番をしている衛兵に話し掛ける事にするのだった。
「失礼、我々はガートルード第二王女様から今日の夕暮れにこちらに来る様、伝えられた者なんだが……」
ガルドリックが話し掛けると衛兵は怪訝そうな表情を見せた。
「何者だお前達は? 王女様への客人が来るとは聞いているが……」
雰囲気的にすんなり通して貰えそうな気配が無い。ちなみに、今の四人の格好は鎧や武器等を宿屋に置いてきており、冒険者というよりはただの王都在住の住人にしか見えない。
唯一派手なのは赤い衣装ととんがり帽子のメルティローズくらいだろうか。
一応、ガートルード王女と出会った時の格好そのままではあるのだがあまりにラフな格好過ぎたか、ガルドリックからは凄腕冒険者の風格をさっぱりと消し去ってしまっていた。
「何か身分を証明出来るものはあるか?」
衛兵は身分証の提示を求めてきた。そこで
「これで良いか?」
ージャラ……ー
ガルドリックが首から下げている冒険者証を衛兵に渡す。すると
「これはプラチナランクの冒険者証……! では貴方があの伝説の!」
「すまない。伝説なんてそんな大それたモンじゃない」
明らかに感動している衛兵に対しガルドリックはバツが悪そうに頭を掻きながら答える。
「失礼致しました! お話はお伺いしております! お通り下さい! 中に案内の者が待機しています!」
衛兵の態度は百八十度ひっくり返り、まるで王侯貴族を持て成す様な態度へと変わってしまった。
「あ、あの……私の冒険者証は大丈夫ですか……?」
何も確認されずに許可が下りてしまった感じのエリスフィーナが不安そうに衛兵に尋ねる。彼女もブロンズの冒険者証を手元に準備していたのだが……
「貴女方は大丈夫です!勇者様がエルフと魔術師のお連れ様と一緒にいらっしゃると聞いておりますので!」
「そ、そうですか……」
ガルドリックの付録みたいな扱いにエリスフィーナは少々困惑するしかなかった。
メルティローズとクレスの二人も金色の冒険者証は出していたのだが、こちらは一目瞭然で目立つのでパッと見でスルーとなった。
そんなこんながありながらも、エリスフィーナ達は周りの豪華絢爛な風景に圧倒されながら王城の中へと入っていくのであった。




