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天界の思惑

 天界の異世界管理所……多数置かれている異世界の球体群、その一つの前で地上の様子……特にエリスフィーナの進展を見守っていた幼女女神レアは

「よかった〜! ちゃんと歴史が良い方向に向かいそう!」

 背中の羽根をパタパタさせて喜んでいた。実は斎藤陽菜を送り込む前の正史の時点でエリスフィーナはあそこでは救助されず、ゴブリン達の慰み者となってしまう運命となっていたのだ。

 その後、救助はされるのだが、助け出されたエリスフィーナには既にハイエルフとしての自尊心も誇りも失い自ら死を選んでしまうという最悪な歴史だったのだ。

 結果として魔王相手に結束出来なかった世界は混沌の時代が余計に長く続いていくというオマケ付きである。

 正史のエリスフィーナは容姿こそ今と変わらないが、性格は典型的な森のエルフ然としたもので、ハイエルフとして人間を見下していた為か、ガルドリックともメルティーローズやクレスとも旅始めと言う事もありまだ良好な関係は築けていなかかった

 しかし、今回は転生者斎藤陽菜の魂の影響か、人当たりが良くなっていたのが歴史が良い方向に進んだ原因だろう。

 異世界管理課の女神レアが思い付いた現世の魂を異世界の魂に融合させて歴史に変化を促す試みはこうして一定の成果を上げたのだった。

 これなら、女神が直接異世界に降りて実力行使するよりバタフライエフェクトの誘発を危惧する心配も無い。

 一つの仕事が片付いたと胸をなで下ろしているレアの横では

(もしかしたら、追加の転生者送っておいたの要らなかったかしら?)

 一緒に異世界を見ていた転生課の女神アルダト・リリーは自分の施した対応について少し気にしていた。

 彼女も彼女なりに歴史を良い方向に進めるべく独断で同時代に転生者の魂をこっそり送り込んでいたのだ。

 それが佐藤霧矢の魂で、彼にはエリスフィーナを助けるべくチート能力と前世の記憶を残したまま、件の異世界の第七王子に転生させていたのだった。

 これは正史の王子が本当の役立たずでエリスフィーナを助ける為の何の手助けにもならなかったから次善の策として仕込んでおいたのだが……

(ま、大丈夫そうだから、いっか。さて……)

「レアちゃん。私、転生課に戻るから」

 こうして、歴史の変化を見届けたアルダト・リリーは所属の転生課へと戻っていくのだった。



「う……ん……」

 エリスフィーナが目覚めた時、辺りは既に日が落ちており、近くに焚き火が焚かれていた。

 頭がボーッとしているエリスフィーナが上体を起こそうとすると

「あ、気が付いた! ねぇ、大丈夫? まだ無理しないで!」

 メルティーローズがエリスフィーナに起き上がらない様に無理やり押さえつけてきた。また

「ヒールとキュアは掛けておきました。次第に気持ちは落ち着いてくるはずです。お怪我は如何ですか?」

 怪我と言われても身体の何処にも痛みは無い。それより自分はどうしてここに寝ているのだろう? そしてこの人達は……そこまで考えて

(わ、私は坑道でゴブリンに襲われて……!)

 エリスフィーナは自分の身に何があったかを思い出していた。

 怪我は地面に倒された時に擦りむいたとかあるかもしれない……と、自分の身体を見回すが特に異常は何も無かった。

 鎧を外され青いワンピース姿のエリスフィーナに

「やれやれ、やぁっとお目覚めかよぉ〜。ゴブリンなんぞに遅れを取りやがってよお」

 相変わらずの物言いで煽ってきたのはキリヤ王子だ。そんな態度の王子にエリスフィーナは黙って俯いてしまった。

「まだ初心者なんだから仕方ないでしょ。ゴブリン三匹始末してたんだから上々でしょう?」

 俯いて黙り込んでしまったエリスフィーナに代わってキリヤに反論してくれたのはメルティーローズだった。

「奇襲を受けて対処出来る判断力は大したものだよ。並の新人なら剣も抜けないままにやられてしまうからな」

 メルティーローズの意見を補強してエリスフィーナをフォローしてきたのは優男賢者のクレスだ。

「全ての責任は俺だ。最初から判断がまちがっていた。すまなかった」

 さらに勇者のガルドリックがエリスフィーナに深々と頭を下げてきた。

「……私の方こそ申し訳ありませんでした。皆さんにご迷惑を……!」

 そこまで口にしてエリスフィーナは肝心な事に気が付いた。

「あの、ゴブリンに襲われた人達はどうなったんですか……!」

 本来の目的であった遭難者達の安否がどうなったのか。少し焦り気味に尋ねるエリスフィーナにメルティーローズが

「心配しないで。ちゃんと皆、助け出してるから……ほら」

焚き火の方を指し示してきた。近くにはマントヲ掛けられ休ませている見知らぬ若い冒険者達の姿があった。

 奇襲を仕掛けてきたゴブリン達だが坑道に居たのはそれが全戦力であった様だ。

 全てを返り討ちにしたガルドリック達に対し他に襲い掛かってくる者は無く、エリスフィーナを外に運び出しながら件の冒険者達も助け出していたそうだ。

 皆が助かっていた事にエリスフィーナが安心していると

「ったくよぉ、敵に気付いてたんならもっと上手く立ち回れよなぁ! このグズ!」

 キリヤ王子が悪態を付いてきた。相変わらず初心者であるエリスフィーナに全く容赦が無い。

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