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歩くパッシブソナー

「アンタ、攻撃するなら周りをちゃんと見てからしなさいよね? 同士討ちになりかけてたんだから!」

 メルティーローズがキリヤ王子に苦言を呈する。確かに彼は辺り構わず四方八方に攻撃していた。

 エリスフィーナもウンディーネが居なかったら重傷を負っていたかもしれないのだ。だが、彼女はここでは言及しない事にするのだった。

「うるせぇなぁ、俺の攻撃範囲に居るのが悪いんじゃねーか。戦ってんのに気を使ってらんねーよ」

 苦言を呈されたキリヤ王子は不貞腐れた様に頭を描いている。どうも彼はパーティーでの戦いに不向きなのかもしれない。

「それにしても……敵に気付いていたとは?」

 ガルドリックはキリヤ王子が口にしたエリスフィーナが敵に気付いていたという言葉が気になった様だ。

「は、はい。あの時、壁の向こうから何かの物音が聞こえていたんです。キリヤ王子に伝えたんですが……気のせいだと言われまして……」

 その話を聞いたガルドリックはクレス達と顔を見合わせ、皆が首を振って確認し合う。そして

「それは恐らく君にしか聞こえていなかったんだろう。俺にはあの坑道は静まり返っていた様にしか感じられなかったし、ゴブリンに気が付いたのも奴等が姿を現してからだ」

 ガルドリックの言葉にエリスフィーナは

「すみません、自分が聞こえているから他の皆さんも聞こえているものとばかり……」

 ガルドリックの言葉にエリスフィーナは改めて落ち込んでしまった。彼には気が付いた事があったら言って欲しいと言われていたのに、皆が聞こえていると判断して近くのキリヤ王子にだけ伝えるに留めてしまった。

あの時大声でパーティー皆に知らせていれば、結果はもっと良くなっていたのかもしれない。

 もし襲われたのが自分じゃなく他の誰かだったら悔やんでも悔やみきれなくなる所だった……。

 自身の経験の浅さにエリスフィーナが再び落ち込んで俯いてしまったところに

「ねぇねぇ、耳がよく聞こえるってどんな感じ? 街の中とかでも誰が何喋ってるのか完璧に分かるとか? 一度に沢山の人に話し掛けられても全部聞き分けられるとか?」

 メルティーローズが食い付いてきた。魔術師だからか知識欲が旺盛であるらしい。

「あ、あの……そこまで正確には……耳を澄ませたらよく聞こえる感じで……」

 エリスフィーナが苦笑気味に返答すると

「なーんだ、人の噂話とか聞けるかとおもったのにぃ〜」

 期待外れだったのかお気に召さなかったのか、メルティーローズはガッカリしたようにむくれてしまった。

「エルフのお嬢さんに下世話な期待をするんじゃない。それより……」

 ガルドリックがメルティーローズを嗜めつつエリスフィーナに視線を移す。そして

「エリスフィーナ、旅の時はこれから俺の近くで行動してくれないか? そして何か異常を感じたらすぐに知らせてくれ」

 彼の提案はエリスフィーナには意外なものだった。初陣でゴブリンに後れを取る不甲斐なさを見せたのに失望されていない事に……

「は、はい! 次こそはちゃんと伝えます!」

 まだ自分にも出来る事があると知ったエリスフィーナの返事はさっきまでとは異なり少し明るくなっていた。

「エリスフィーナ、あなたにちょっと聞きたいんだけど……良いかな?」

 エリスフィーナが元気を取り戻せたと見たメルティーローズが話し掛けてきた。

「あなたの使った精霊魔法について教えて欲しいんだけど……」

「魔法なら私も興味ありますねぇ、私達のものと違う独自に発展した技術は実に興味深い」

 魔法の話題と知るや否や賢者クレスも食い付いてきた。エリスフィーナが元気を取り戻し他のメンバーとも打ち解け始めているのを見届けたガルドリックは

「じゃあ、俺達は助け出した冒険者達観てくるから後は任せた」

 そう良いと、神官のマリアリアと一緒に助け出した冒険者達の所に行ってしまった。

 そんな中で一人若干皆から距離を引かれている男が居た。

(ちっ……新人のクセになんでアイツちやほやされてんだよ! 俺の時は余所余所しかったクセに!)

 キリヤ王子は自身の置かれた環境に憤りを感じていた。彼はエリスフィーナと同じ現世からの転生者である。二人の違いは現世の記憶と知識の有無とチート能力位のものだが……

(第七王子で気楽に冒険者してやろうと思ってたのに……うまくいかねぇ、クソッ!)

 確かに彼の希望通り裕福な生まれで責任もそれほど背負わされていない気楽な立場の転生先だ。

 剣技も達人クラスで魔法も無詠唱で使えるというのに、勇者パーティーとしてのリーダーの座は無骨な戦士のガルドリックが居座っている。

(クソッ、あいつさえ……あいつさえ居なくなれば……)

 キリヤの重要目的であったハーレムパーティでイチャコラがまるで達成できる気配すら無かった。

 そして、やっと新しい女の子が加入したというのに散々アプローチしているにも関わらず靡く気配が無い。

「くそっ、あの駄女神……テキトーふかしやがって……」

 キリヤは一人、自分を転生させた女神と周りの環境、ガルドリックとエリスフィーナに恨みを募らせるのだった。

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