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アトレイス公国

 魔石鉱山での冒険者の救助が終わったエリスフィーナ達勇者パーティー一行は、助け出した救助者達と共にアトレイス公国に到着していた。

「あ、皆無事だったんだ! 良かった〜!」

 街道で助けを求めてきた冒険者の少女とも合流し彼等はガルドリック達に礼を行って去っていった。

 出来ればエリスフィーナの冒険者登録をしに冒険者ギルドに行きたかったのだが、今の彼等はホワイトクラウン国王からの使命を帯びている身だ。

 ガルドリック達は寄り道する事無く、そのままアトレイス公国の城へと向かうのだった。

 アトレイス城は小国の城というだけあり、また平地が少ない立地条件もあるのか高原の貴族の別邸といった規模の城だった。

 城壁はあるが、城は地方の砦といった具合の小規模なものであるが、人間の大規模な街やお城が初めてのエリスフィーナにとっては

「うわあ……」

 全てが新鮮で物珍しかった。キョロキョロと興味津々で危なっかしく、街に入るなり彼女はメルティーローズに手を引かれて連行されていた。

 大事な役目があるというのに、こんなところで盗賊や奴隷商に攫われたりなんかされたら目も当てられない。

 異世界には様々な世界があれど盗賊・山賊・非合法な奴隷商などは大体はつきもので、エリスフィーナなどの希少なハイエルフは高額で取引されてもおかしくはない上玉である。

 そんな彼女が闇夜の光に集まる羽虫の様にフラフラなんかさせていたら身体がいくつあっても足りるはずがない。

 そんな世間知らずなお姫様ムーブをしている彼女に

「これだから田舎モンは恥ずかしいんだよ。俺達は物見遊山してんじゃねーんだからよ」

 相変わらずエリスフィーナの何が気に入らないのか、キリヤ王子は事ある事に突っかかってきていた。

「ちょっと、止めなさいよ〜。この子だってわざとやってる訳じゃないんだから」

 ちょっかいかけてくる悪ガキから女友達を守る親友の女の子みたいなポジションに落ち着いたメルティーローズが、キリヤ王子からエリスフィーナをガッチリガードするのが日常となりつつあった。

 このアトレイス城に来るまで一週間は経過していないはずだが、エリスフィーナはすっかり勇者パーティーの一人として受け入れられていた。

 そんなエリスフィーナを含めた勇者パーティー一行はホワイトクラウン王国からの特使の名目もあり、第七王子のキリヤも居る事で完全なVIP扱いとなっていた。

 一応、公王の謁見の間では慣例に従いキリヤ王子除く勇者パーティー一同が膝を付き頭を下げていた。一応、リーダーであるガルドリックがキリヤ王子に頭を下げる様に促したものの

「王子の俺が公王に頭下げるのおかしくね?」

 と、他所の国でも失礼太郎ぶりは相変わらずで、その様を改めて見たエリスフィーナは

(……そういう人なんですね)

 自分に向かって散々失礼な態度を取ってきたキリヤが、ハイエルフの自分だからではなく誰に対しても失礼な事に諦めにも似たやるせない感情を抱いていた。

 さて、アトレイス公王だがハイエルフであるエリスフィーナの姿を見て確かに普通のエルフとは全く違う髪色に彼女がハイエルフである事は理解した様だ。

「それでは連邦内のエルフ達各部族含めた他亜人種族の国々に使者を送ろう。一週間後に全連邦会議を開くとな」

 普段ならアトレイス公王が呼び掛けても集まりは悪いのだろうが、今回は精霊神が遣わした奇跡の存在であるハイエルフが同席するという備考がある。

 並のエルフならば滅多に見る事の無い精霊神の使いに等しいハイエルフを直接確認する機会をふいにするとは考えにくい。

また、他亜人族にしても多数のエルフ達の国々が参加するのであれば、自分達も出席しなければ国益を取り逃すばかりか厄介な役回りを押し付けられてしまうかもしれない。

 アトレイス公王だけならまだしもエルフの国々が関わった多数決ともなれば、会議に欠席したのに決定には不服ですは流石に通らない。

 異世界であろうと欠席裁判は当事者にとって不利益でしかないのた。こうして一週間後にアトレイス連邦の重鎮達が一堂に会する連邦会議が開催される運びとなったのであった。

 会議までの一週間、エリスフィーナ達はVIP待遇という事でそのままアトレイス城にて滞在させて貰える事になったのである。



「それにしても、こんなトコで休みが取れるなんて思わなかったわ〜!」

 客間のソファーでゴロゴロしているメルティーローズが久しぶりであろう休みを満喫している。

 「思えばこれまで魔王軍の四天王を相手にしたりと働き詰めでしたからねぇ」

 優男賢者のクレスが魔導書らしき本を眺めながらメルティーローズに同調する。

 ガルドリックは部屋の隅で道具袋を広げており、何やら武具の手入れを始めている。神官のマリアリアはそんな彼を眺めながら聖書の様な分厚い聖典を黙読している。

 そして、キリヤ王子は……離れたソファーで横になって大イビキをかいている。

 このパーティーに参加して日が浅いエリスフィーナだが、何となくメンバー達の人間模様が大体掴めてきていた。

 リーダーのガルドリックは無骨な戦士であり、仕事の準備にも余念が無い。真面目な大男である様だ。

 そんな彼に寄り添うのが神官のマリアリア、二人の関係はよく分からないが絆と付き合いの長さの様なモノは感じられる。

 メルティーローズはパーティーのムードメーカーと言った感じの女の子で世話好きなところごあり、面倒見が良い。

 クレスほ長髪優男で一見何を考えているのか分からない底の深さがあるが、性格も含めて悪い人間では無い様だ。

 最後のキリヤ王子だが、誰に対しても失礼で傲岸無知にしか見えない。人の事が言えた身ではないが、前回の魔石鉱山でのキリヤの戦いぶりは熟練の冒険者のそれとはとても思えなかった。まるで、子供が木切れを辺り構わず振り回している様な……そんな危うさが感じられた。

 こうした休憩の間にもパーティーの皆と距離を縮めようとする素振りも見せない。エリスフィーナにはそれが王族由来の気位の高さからくるものと感じられていた。

 しかし、実際は現世の記憶があるキリヤが異世界に馴染めていないだけなのであって、親睦が深められないのもコミュ障な部分が隠せてないだけなのであった。

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