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冒険者登録

「ねぇ、私暇だから街に出て冒険者ギルド連れてってあげようか?」

 たっぷりゴロゴロを堪能して飽きたのか、メルティーローズがエリスフィーナに街へ繰り出す提案をしてきた。

 人間の街に興味はあったが新入りなだけに誰にも言い出せなかったエリスフィーナにとっては渡りに船なのだが……

「あの、街に出て大丈夫なのでしょうか?」

 リーダーであるガルドリックはいつの間にかマリアリアと一緒に席を外していた。確か、身体がなまるから剣を振りに行くとの事だったが……。

 そんな訳で室内に残っていたのはエリスフィーナ、メルティーローズ、クレス、キリヤ王子の四人だけだった。

「それじゃ行きましょ! ほらほら、立って立って♪」

 メルティーローズの折角の厚意なのでエリスフィーナも断れず

「そんじゃちょっと言ってくるわね〜♪」

 エリスフィーナの手を引きながらメルティーローズは残った二人に挨拶する。

「暗くならない内にかえってくるんですよ」

 クレスはお父さんかお母さんみたいな反応で二人を見送ってきた。

 一方のキリヤ王子は寝てるのか寝てないのか、クークーと呼吸音のみが聞こえるだけでメルティーローズの挨拶には無反応そのものだった。

 クレスとキリヤ王子でどんな会話をするのか気にならなくは無いが、エリスフィーナはメルティーローズに連れられるまま城を後にしていくのだった。



「うわぁ……!」

 生まれてこの方エルフの里暮らしだったエリスフィーナにとって様々な人々が行き交うアトレイス公国の城下町は何もかもが新鮮に映った。

 大通りに列を連ねる酒場の賑わいに、色とりどりの果物が並ぶ市場。

 鉄の匂いがする熱気を感じる鍛冶屋や武器防具屋、そして街角にひっそりと佇む魔導具屋など

「あ、あれ何ですか?」

 デパートに初めて来た四歳児の様に辺りをキョロキョロしっぱなしのエリスフィーナに

「あ〜、あれは雑貨屋ね。旅に便利な物が色々売ってるの。それより!」

 今回街に出てきた本来の目的はエリスフィーナの冒険者登録である。メルティーローズは買い物を早く済ませたい母親のノリでエリスフィーナを無理矢理引っ張っていく。

「帰りに寄っていってあげるから。今はこっち!」

 二人の少女はかなり悪目立ちしながらアトレイス公国の冒険者ギルドへと歩いていくのだった。

「おい、今の見たか?」

「ああ、かなりの上玉だったな」

「ありゃ、どっかのお貴族様の愛玩エルフだろうぜ」

「あと一人はお付きの付き人ってトコだな」

「よーし、後をつけて隙を伺うぞ。あんな貴重品そうそう無いからな」

 こうして、いかにもゴロツキと言った男達も、距離を取ってエリスフィーナ達の後を追っていくのだった。



「ここが……冒険者ギルド……」

 両親から話は聞いていたものの、実際の喧騒はエリスフィーナを圧倒するには十分だった。

「ほらほら、こっち。まずは受付に行かないとね」

 相変わらずメルティーローズはエリスフィーナの手を引いて冒険者ギルドの中を進んでいく。

「おいおい、見ろよアイツ」

「サーカス団なんてこのご時世に来てんのか?」

「ヘッヘッヘ、しかし最近の女どもは派手な格好してやがんなぁ」

 周りの冒険者達がエリスフィーナを揶揄する言葉を投げかけてくる。彼等は仲間内で話しているつもりだろうが歩くパッシブソナーことエリスフィーナの長い耳には話し声全てがオープンに流れ込んできていた。

「ほら、着いたわよ。すませーん。この子の冒険者登録お願いしたいんですけどー?」

 受付嬢の前まで引っ張ってこられたエリスフィーナは周りの揶揄する声に顔を真っ赤にしていた。

「あら、貴女は新人さんね。じゃあそこの天秤に手を翳してくれる?」

 受付嬢はそう言うと受付台に置かれている金色の天秤を指し示した。

(え〜と……)

 よく分っていないエリスフィーナが躊躇っていると

「それは犯罪歴調べたり性格の傾向測ったりする魔導具よ。気にしないで掌を向けてみて?」

 メルティーローズに言われるままエリスフィーナが天秤に手を向けると


ーカシャンー


 天秤が一方側に大きく傾いた。それを見た受付嬢は

「犯罪歴は無し……性格は見た目通り善性が高いわね。じゃあ、これ」


ースッー


 受付嬢はエリスフィーナに鎖に繋がれた一枚の銅色のプレートを渡してきた。

受け取ったプレートをまじまじと見つめるエリスフィーナだが、特に文字が彫られていたりとかそういう細かい細工も何も無いただの銅色のプレートでしかない。

「あなたの今のランクはシックス、沢山仕事を成功させていけば普通にランクアップはするからね」

 どうやら冒険者登録はこれで終わりらしい。あれ?あれ?と戸惑うエリスフィーナの手を引きながらメルティーローズは

「ありがとね〜、それじゃ!」

 用事は済んだとばかりにエリスフィーナをさっさと出口に引っ張っていく。

「あ、あの……」

「こんなトコに長居したくないでしょ? ヒソヒソ話全部聞こえてるなんて知られたら面倒だし」

 戸惑うエリスフィーナはメルティーローズによって強引に冒険者ギルドから連れ出された。全てが聞こえていないまでもメルティーローズは冒険者ギルドのエリスフィーナに対する空気を敏感に感じ取っていた様だった。

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