凱旋
ゴブリンの洞窟から無事に女の子達を救い出したエリスフィーナ達は村の村長から冒険者ギルドへの手紙を預かって王都セレスティアへの帰路についていた。
「あ〜、なんだか疲れたよなぁ〜。はぁ〜」
帰り道、ヴァイスは幾度となくクソデカ溜め息を付いていた。だが、それも宜なるかなで
「皆、無事だったんだから良かったじゃない? それともあれ? 何か期待してたの?」
拐われた女の子達から黄色い歓声を浴びるヒーローとなるのを期待していたであろうヴァイスの目論見はゴブリン洞窟の最奥で見事打ち砕かれていた。
女の子達は確かに無事ではあったものの、彼女達は何れも横幅の方が広い健康的な女の子達ばかりだったのだ。
「いや、お貴族様のご令嬢みたいなのが居るとは思ってなかったけどさぁ。あんな古代王朝の石像みたいな……女の子達が来るなんてさぁ。ゴブリンも何考えてんだよ、まったく……」
ゴブリン達も拐ったはいいものの扱いに困惑していたと邪推されてもおかしくない容姿の彼女達に抱きつかれたヴァイスは結構な心理的ダメージを負わされていたのである。
「でも、ゴブリンの待ち伏せる洞窟の救助任務が難しいのはよく分かったでしょ?」
メルティーローズが金銭以外の今日の収穫を語る。
「エリスフィーナさんには驚きました。まるでガルドリックさんが二人になった様でしたよ」
クレスはエリスフィーナの今日の収穫働きぶりに感嘆していた。エリスフィーナにとっても今日は得るものがたくさんあった。
「とにかく、皆さんが無事で良かったです」
初めての冒険者としての仕事が成功裏に終わった事がエリスフィーナにとってはとても嬉しく今後の自信にも繋がる事だった。
王都セレスティアの冒険者ギルドに着いた三人は受付で村長からの手紙と引き換えに受け取った報酬を近くのテーブルにて均等割で分配し始めた。
銀貨八枚の報酬を四人で割って一人当たり銀貨二枚となり、初めて自分で働いて得られたお金の重さにエリスフィーナは顔が綻んでいた。
ヴァイスもいつもならギルドで食事となるのだが、今日は別行動だったエイミーやパーティーの他のメンバーが気になるのかしきりにギルドの出入り口を気にしている。
「そんなに心配しなくてもガルドリックが一緒なのですから大丈夫ですよ」
クレスがテーブルの上で両手を組みながらヴァイスに話し掛ける。相変わらずメガネのレンズが光を反射して真っ白な為表情が分からない。
某特務機関の指令みたいなポーズで語るクレスの雰囲気から、ガルドリック達が何か良からぬ事に巻き込まれていないかとエリスフィーナが妙な胸騒ぎを覚えていると
ーバアアァン!ー
冒険者ギルドの入り口の扉が勢いよく開けられて、外からドヤドヤと大勢の女性の冒険者達が入ってきた。
彼女達は口々に今日の仕事は大変だっただの自分達じゃなきゃ成功させられなかっただろうみたいな自分達の戦績を讃え合う事を言い合っている。そんな冒険者達の人波の中に
「いや〜、アンタが立ち寄ってくれて助かったよ! あたしらのクランが苦戦するなんて久々でねぇ」
赤毛チリチリ頭の大女ミスズと彼女に肩を組まれて愛想笑いをしているガルドリックの姿があった。
そしてその近くには小さくなっているエイミー達三人の姿も見える。
受付でそれぞれ報酬を受け取ったガルドリック達とミスズ達はその場で別れ、ガルドリック達はエリスフィーナ達のテーブルへとやってきた。
一方のミスズ達はドヤドヤと入ってきた時と同じ様に騒がしくしながら冒険者ギルドから出ていってしまった。
「ガルドリック、今日何かあったの? 薬草採取だったでしょ?」
テーブルにやってきたガルドリック達にメルティーローズが尋ねる。すると
「ああ、俺達の仕事は普通に終わったんだがその帰り道にな……」
ガルドリックが話すには薬草採取の仕事は順調に終わり、その帰り道にてミスズ達密林の女豹団のクランメンバー達がワイバーンの群れに襲われている場面に遭遇してしまったと言うのだ。
「見るからに不慣れな様だったからな。エイミー達には悪かったが手伝う事にしたんだ」
ここでガルドリックはエイミー達三人を危険に巻き込んでしまった事に謝罪の言葉を口にする。
「そんな事ないですって〜! それにワイバーン相手に戦うガルドリックさん、流石勇者って感じだったし〜?」
「それに薬草摘みに行くのにワイバーン出てくるなんておちおち出歩いていられないじゃない。退治出来て良かったでしょ?」
「それに皆さんが無事で良かったと思います。誰にも悲しい事が起きなくて本当に良かった……。流石銀色の勇者様です……」
エイミー達三人のガルドリックに対する人物評が見るからに大高騰している様だった。
(…………)
そんなエイミー達の様子になぜか心中落ち着かない自分の中の初めての気持ちにエリスフィーナは言葉に出来ない落ち着かなさを感じていたのであった。




