洞窟内での激闘
ヴァイス投げた松明にはゴブリンの射手らしき影が映りエリスフィーナが投げた松明には短剣片手にこちらに向かってくるゴブリン達の姿が映し出された。
「キャキャキャッ!」
「キャハハハハッ!」
「キャキャーッ!」
ゴブリン達は既に短弓による速射で十分な打撃を与えたと判断している様で掃討戦の勢いで突撃してきた。
「皆、立って! 敵が突っ込んできます! ヴァイスさん、敵の勢いを受け止めて下さい! メルさんクレスさんは魔法で攻撃を!」
短剣を持って突っ込んでくるゴブリン達を前にエリスフィーナは弓を細剣に持ち替えるか逡巡する。
いくら乱戦が始まろうとしてるとは言え、遠距離攻撃手段を今手放すのは……
「ギャアーッ!」
突っ込んで来たゴブリンの一匹が普通に駆けて斬り掛かってきたのに加えて
「キャアアアーッ!」
飛び上がって頭上から突き下ろそうとしてきた。上下同時に連係攻撃に普通の初心者ではパニックになっていたに違いない。しかし
「はっ!」
ードガッ!ー
「ギャウッ!」
地上のゴブリンをミドルキックで蹴り飛ばした勢いそのまま身体を屈ませ力を溜めたエリスフィーナは
「はあぁっ!」
ードゴオッ!ー
「ギャッ!」
後ろ回し蹴りを空中のゴブリンの脇腹に叩き込んだ。
ードサッ! ゴロゴロゴロ……ー
脇腹を起点にくの字に折れ曲がったゴブリンは地面に落ちるとその勢いのまま転がっていく。
ーピュン!ー
エリスフィーナは弓矢と蹴りを併用して敵の数を減らしていく。
「うおおおおっ!」
ヴァイスは両手でブロードソードを振り回し、それがゴブリン達に当たる事は中々無かったが、ゴブリン達が後衛のメルティーローズやクレスに向かう事は一応防ぐ事が出来ていた。だが、
「……我ガ名二従イ、適ヲ焼キ尽クセ……」
洞窟の遥か前方、明かりのある周辺から不気味な声が聞こえてきた。
(魔法……? ゴブリンが……?)
咄嗟に魔術師二人を見るが、メルティーローズもクレスも長い詠唱に入っており、防御魔法を任せて敵の魔法に間に合うか分からない。
どうするかエリスフィーナが迷っている間に事態は無情にも進んでいく。
(こうなったら……!)
直射ではゴブリン達が障害となるが曲射であれば狙えるだろう。幸い魔法を唱えているゴブリンは通路の真ん中にたっており偏差を考える必要は無さそうだ。
ーピュン!ー
ゴブリンに接近戦を挑まれながら狙いをつけたエリスフィーナの放った矢がゴブリン目掛けて飛んでいく。
「ファイアーボール!」
ーゴオオオオッ!ー
エリスフィーナが放った矢が敵に命中するより先に火球が生成され、緩い放物線をを描いて飛んでくる。
ードズッ!ー
「ギャアーッ!」
魔法を唱え終わったゴブリンから断末魔が聞こえてきたが今のエリスフィーナはそれどころでは無かった。
水源が豊富にある地上と違い、地下では地下水脈が付近に無ければ、ウンディーネでもファイアーボールを打ち消せるだけの水を集めるのは間に合わないかもしれない。
「ヴァイスさん、敵を押し退けてその場で立ち止まって! 皆、前進して下さい!」
エリスフィーナは自分から率先してゴブリン達の群れに飛び込んでいく。
ードカアッ!ー
「グヘッ!」
助走を付けて跳び上がったエリスフィーナのヒザ蹴りを受けたゴブリンの一匹が吹き飛んでいく。
そして彼女の後に続きヴァイスは訳も分からず前進する。
「ほら、急いで走って!」
敵のファイアーボールとエリスフィーナの意図に気付いたらしいメルティーローズがクレスの手を引っ掴んでゴブリンの群れの中に突撃していく。
ーゴオオオオッ!ー
そんなエリスフィーナ達の頭上をファイアーボールはゆっくりと通り過ぎていき
ードオオオオン!ー
エリスフィーナ達がいた地点の丁度中央にファイアーボールが着弾したのだった。
「マジックシールド!」
弾着とほぼ同時にメルティーローズが魔法防壁を展開してエリスフィーナ達を纏めてすっぽり覆わせた。
ーゴオオオオッ!ー
ゴブリンが放ったファイアーボールの爆風は味方のゴブリン達に襲い掛かり熱風が彼等を吹き飛ばしていく。
「ギャアギャー!」
「ギャギャ!」
洞窟内の戦況は最早掃討戦の段階に入っており、ゴブリン達は次々と洞窟の出口へ逃げ始めている。
「一気に奥へ突っ込むぞ!」
ここを好機と見たヴァイスが皆に洞窟奥への突入を指示する。
「ヴァイスさん! 敵はまだ余力を残しているかもしれません! 慎重に!」
ガルドリックから聞いていた話ではゴブリン達が潰走した場合の注意点などは聞いていなかった為、エリスフィーナは若干戸惑ってしまっていた。
しかし、周囲に居たゴブリンは逃げ始めており奥への通路上に遮るモノは無く、奥に進むのに何も問題は無い様に思えた。
だが、今のヴァイスに先頭を全て任せるわけにもいかない。さらなる伏兵が居ないとも限らない為、エリスフィーナは戸惑いながらも皆の後に続くのだった。




