仕事の反省会
「錬鉱石を持ち帰ってきたのは確かに大変な仕事だっただろう。それをきちんと終わらせたヴァイス達の働きは評価されて然るべきだ」
ガルドリックは重い錬鉱石だらけの籠をきちんと持ち帰ってこれたヴァイス達に労いの言葉を掛ける。
「そーだろ? だからこの仕事を何度もやれば金も稼げるし……」
ヴァイスが取らぬ狸の皮算用を始めるが、ガルドリックの返答はそんな彼の甘い見通しを打ち砕くものとなる。
「他の仕事で経験を積むまで、この仕事は止めておくべきだ。お前達に錬鉱石採取はまだ荷が重い」
容赦なくバッサリな意見をヴァイスに語るのだった。
「今日のオーク達の動きを見る限り、お前達を最初から罠に掛けるつもりで奴等が動いていたのは間違いない」
ガルドリックが語るのはオーク達のその特徴的な動きに他ならなかった。
往路では手を出さずに偵察に止め、復路で錬鉱石を抱えて動きの鈍くなっている冒険者達を襲撃する。
そうすれば戦いになったとしても楽に勝てるし錬鉱石も容易に手に入れられるという訳だ。
「それにオーク達の目的は錬鉱石だけじゃない。冒険者の女の子はそれだけでオーク達にとっての格好の獲物になる」
現実的に人間の女の子はオーク達に繁殖目的で連れ去られるという事例は枚挙に暇が無い。
そういった意味では男女比が極端なヴァイス達は特に気を付けなければならない。前衛であるヴァイスが倒れれば後は無防備な女の子達が残るのみだ。
今日の待ち伏せはガルドリック達が駆け付けて居なければ最悪の結果を迎えていただろうというのがガルドリックの結論だった。
「また、今回は待ち伏せのおこぼれにありつこうとしたんだろうサハギン達も来ていた。恐らくオークと挟み撃ちで襲撃するつもりだったんだろうがな……」
エリスフィーナを襲ってきたサハギン達だが、もう少しガルドリック達が現場に駆け付けるのが遅かったらヴァイス達が襲われていたに違いない。
ただでさえ森からのオークで手一杯な当時のヴァイス達が反対側かの川岸からもサハギン達に襲われれば……
「うん、明日は無理! もし依頼があっても私達だけじゃ自殺行為だもん!」
ガルドリックの意見を聞いたエイミーは即決だった。
「そうね。私も魔法使うタイミング分からなかったし……他の仕事の方が良いかもね」
魔術師のメディナもエイミーに同意している。
「ガルドリックさん、今日は……助けて頂いてありがとうございました」
今日の仕事がいかに綱渡りであったかを聞いたソフィーはすっかり顔が青ざめている。女性陣が現実を知りそれぞれが顔を青くしている一方で
「なんだよ、銀貨五枚の報酬だから当分生活していけるんだぜ? それに今日はガルドリック達にやられたんだし、もオーク達も明日は来ないかも……」
「……止めとけ。オーク達は往路でお前達を偵察し復路で確実に勝てる戦力で待ち伏せていた。次はもっと数を増やして来るかもしれないし俺達もそう毎回助けてやれるとは限らない」
料理を取りに行ったエリスフィーナとメルティーローズが戻ってきたのはガルドリックの話が一段落した辺りだった。
「ねぇ、なんだかお通夜みたいな雰囲気だけど……何かあった
?」
持ってきた料理と酒をテーブルに置きながらメルティーローズが皆を見回しながら尋ねる。
(…………)
耳が良いエリスフィーナには席から離れていても彼等のやり取りはしっかり聞こえていた。
「明日は背伸びしないで確実にこなせる仕事を選べ。でなければ……死ぬだけだ」
ガルドリックは近道を求めたがるヴァイスを諭す様に説得する。若者への苦言の呈し方には彼も苦労している様だ。
何しろ十代半ばで血気盛んなヴァイスには無駄に万能感と未来への希望に満ち溢れていて悪い意味で怖いもの無しなのだ。
そんな彼が現実を知るには痛い目を見るしか無いのだが……冒険者パーティーのリーダーである以上、彼の失敗はパーティーの危機と同義なのだ。
経験を積ませるにも現実はRPGとは違い出発点近くがレベルの低い敵ばかりとは限らない以上、雑魚を倒して地道にレベリングしていくという訳にはいかないのだ。
「ふむ、それではこうしてはどうでしょう? 私達は丁度お互い四人パーティーです。明日は練習としてお互いのリーダーを入れ替えてみては?」
クレスがヴァイスに経験を積ませる為の一つの方法を提案してきた。それはヴァイスに勇者パーティーのリーダーをやらせる。
一方ガルドリックにはエイミー達新人に後衛の立ち回りを教えながら簡単な仕事をこなす。
こうすればヴァイス達新人冒険者達も無理なく安全に経験を積めるというクレスの考えだった。
「如何でしょう? これが今の私達が無理なく行える堅実な方法に思えるのですが」
クレスは中指でメガネのズレをいつも通りに直しながらドヤ顔でガルドリックに提案する。
「待て待て。それで良いのか? 俺はともかくエイミー達にだってパーティー編成に対する意見くらいあるだろう?」
ガルドリックはエイミー達の様な若い子達を引き連れるハーレムパーティーに抵抗がある様だ。遠回しにだが自分一人でエイミー達と組まされる事に拒否反応を示している。




