帰るまでが遠足
岩場からの帰り道、ガルドリック達は川辺を下流に向かって歩いていた。そんな帰り道、エリスフィーナは一人川の直ぐ側を歩いている。そんな彼女が気になったのか
「エリス、川にも気をつけろよ? リザードマン以外にもサハギンも居るらしいからな」
ガルドリックが注意を促してきた。ガルドリックの話の通り、サハギンやリザードマンと言った水棲系の魔物は水中からの奇襲を得意とする。
「は、はい! でもウンディーネさんと話すにはなるべく近い方が……」
シルフの様に風が吹く所縦横無尽に動ける精霊と水の精霊ウンディーネは違う。
依代となるモノがなければ実体化は魔力を伴わなければならないし地味に術者への好感度にも影響する。
水の精霊が少しの依代で砂漠に呼び出されでもしたらたまったものでは無いのだ。辛い環境での仕事など人間でも精霊でもやりたくはないものなのである。
そんな勇者パーティーが下流に向けて川岸を歩いていると
ーザバァッ!ー
行ったと思ったウンディーネが川から浮かび上がり
「敵です! オークが五匹以上! それと……」
「お、オークが五匹……!」
ウンディーネからかなり切羽詰まった状況が齎された。ヴァイス達初心者四人ではオーク一匹でも何とかというところが五匹相手ではまず勝ち目は無い。
「悪い、先に行くぞ!」
複勝したエリスフィーナの声を聞いていたガルドリックは既に一目散に下流へ向けて駆け出していた。
「あ、私も……!」
先を行くガルドリックに引かれる様にエリスフィーナ、そしてメルティーローズとクレスの二人も川辺を駆け出した。
完全武装の重装剣士だがその脚は速く、下流の先に森から現れたオーク達に囲まれているヴァイス達四人の姿が見えてきた。
そして弓に矢を番えながらすぐ隣を駆けているエリスフィーナに
「エリスは進行方向を塞いでいるオークを狙撃してくれ! 俺は他の四匹に斬り込む!」
行く手を塞ぐようにして立ちはだかっているオークを狙撃する様に指示を飛ばす。
「ウンディーネさん、オークの気を逸らして下さい!」
ウンディーネはあまり攻撃向きの精霊ではないのだが、今の状況では彼女の支援が一番速く届く。
ーザバン!ー
ウンディーネは川に飛び込むとそのままヴァイス達の近くまで移動し
ーシュウウゥゥ……ー
ウンディーネは自身の近くに拳の大きさ程の水球を生成し
ーダダダダタッ!ー
それらをオーク達の顔面に向けて飛ばし始めた。
「ブヒヒ、馬鹿な冒険者どもが網に掛かっ……」
ーバシャッ!ー
「ブヒイッ!」
ヴァイス相手に舐めプ気味に前口上を語っていたオークの顔面にウンディーネの水球が見事ヒットした。
ーバシバシバシバシ!ー
「ぶ、ブヒイッ!」
「なんだブヒッ!」
「新手ブヒッ!」
「ブヒッ、目がぁ目があっ!」
全弾有効弾とはならなかったがヴァイス達が攻撃を受けるまでの時間は延ばされその間にガルドリック達は距離を縮める事が出来た。
「こうなったら貰えるモノだけでも頂くブヒ!」
すぐに戦闘に戻る事が出来たオークの一匹が両刃の斧を振り上げてヴァイスに襲い掛かったその時
ードスッ!ー
「ギャヒィッ!」
ヴァイス達の頭上を遥かに越えた放物線を描いて飛んできた矢が斧を振り上げたオークの額に深々と突き刺さった。
ーズウゥゥン!ー
オークの大柄な身体はそのまま力無くその場に崩れ落ちた。フィジカルに優れるオークと言えど脳天に矢が深く突き刺さって平気で居られるはずも無い。
「なんだブヒッ? 隊長が!」
「隊長がやられたブヒ!」
「ヤバいブヒ! 敵は手練れブヒ!」
「へあぁ、目が目がぁブヒ!」
エリスフィーナが曲射で討ち取ったのはオーク達のリーダーであった様だ。ウンディーネの目潰しから視力を取り戻したばかりのオーク達はたちまち混乱に陥った。そこに
ーズバアッ!ー
「ギャアアアアッ!」
「ブヒイィィッ!」
ようやく到着したガルドリックが竜巻の様に大剣を振り回してオーク二匹を纏めて吹き飛ばした。
「た、助けてくれぇ〜ブヒ」
「へあぁ、目が目かまあブヒ」
戦況のフリを悟ったオークと水球の当たりどころが悪かったらしいオークは慌てて森の奥へ逃げていってしまった。
「やっぱりスゲえな、アンタら! オーク達があっという間だぜ」
「ありがとうございました! 助かりました!」
ガルドリックの勇者らしい豪快な戦いぶりはヴァイスを惹きつけるには十分だった。
「皆、報酬が欲しいなら頑張って街まで歩くんだ」
ガルドリックは疲れているだろう新人冒険者達を鼓舞する。
ヴァイス達はは入手した錬鉱石が重いのか、特に神官ソフィーと魔術師メディナが疲れた顔を見せている。
「報酬を得るため、生き残る為には街まで歩け。駄目だと感じたら荷を捨てて歩け」
ガルドリックは彼等を手伝う事はせず、自分の足で帰る事の重要性を彼等に説く。




