越権者
鎖の罠に両足首を捕らえられたエリスフィーナは鎖に引きづられて一軒の空き家らしい建物に連れ込まれていた。
「いやあっ! 痛いっ……離して!」
鎖に引っ張られる度に鎖の締め付けが強まりエリスフィーナの顔が苦痛に歪む。
そんな彼女を見下ろす様に複数の人影が現れた。
「まさか、罠を張っていたら本当に掛かってくるとはな。流石は聖女様と言ったところか」
そう話しながら現れたのは金髪の男性であり白い軍服の様なモノを着ている。彼は勝ち誇った様にエリスフィーナを見下ろし隣の人影に話し掛けている。
「いい気味ね、ハイエルフ。まぁ、あなたを殺したりなんかしないから安心なさい」
暗がりから現れたのは聖女マリアリアだった。
「あ、あなたはマリアリア……さん?」
王国で行方が知れなくなっていた聖女が現れ、しかも遠く離れたローランド王国で再会した事にエリスフィーナは驚きを隠せないでいた。
「おい、王女もエルフもどこにも居ないぞ!」
「よく探せ! その辺に潜んでいるはずた!」
外からは先程の盗賊達がガートルードやエリスフィーナを探している様子が伝わってくる。
「じゃあ、私はガルドリックを連れてくるから。そのハイエルフは大事な人質なんだから、手荒な真似はしない様にね、アレックス王子」
マリアリアはそう言うと裏路地へと出ていってしまった。アレックス王子はマリアリアが出ていった事を見届けると
「よし、このエルフを見せしめに吊り上げろ」
アレックス王子が命令を下すとエリスフィーナの両足首を捕らえている鎖が再び引っ張られ始めた。
「い、いやあああっ!」
ージャラジャラジャラー
「痛いっ! 止めて……離して下さい!」
逆さまに吊り上げられたエリスフィーナは全体重が両足首に掛かっている上に鎖で常に締め付けられている痛みに涙を流して痛がっている。
「さて、君は殺しはしないが僕の玩具になってもらうよ」
彼の視線はエリスフィーナの顔では無く吊り上げられた彼女の下半身に向いている。その彼の行動に今の自身の体制に気付いたエリスフィーナは
「や、見ないで! 見ないで下さい!」
咄嗟に自由の利く両手で大きく捲れたスカートを直す。痛みで気が付かなかったが、無様に逆さまに吊られている自分の姿、その恥ずかしさで顔が赤くなっていく。
逆さまに吊るされたエリスフィーナの側までやってきたアレックス王子は
「さて、そろそろその煩い口を塞がせてもらおうか」
そう話すとアレックス王子は自身のズボンのベルトを緩め始める。
それと同時にスカートを押さえるエリスフィーナの手を無理矢理スカートから離させようとしてきた。
ーグイッー
「な、何をするんですか! 止めて! 止めてっ!」
エリスフィーナがアレックス王子の横暴に必死に耐えていたその時
ーバァン!ー
「エリス!」
勢いよく扉を開けて入ってきたのはガルドリックだった。
「全く……手が早いんだから……」
そしてその後ろからマリアリアも部屋に入ってきた。彼女はアレックス王子の行動の早さに呆れている様で
「いい? ガルドリック、彼女を返して欲しかったら大人しく私達に従いなさい」
そう話すマリアリアはアレックス王子の側に移動すると
「私達はホワイトクラウン王都に先に帰っているから、急いで来る事ね」
そう話すマリアリアが次に小声で
「女神アルダト・リリー様、王都への転移お願いします」
祈りの言葉ではない、まるで直接連絡するようなその言葉をエリスフィーナの長い耳はしっかり捉えていた。そして
ーパアアアア!ー
マリアリアやアレックス王子、エリスフィーナも包み込む様な光の柱が床から円柱状に発生した。光の粒子に包まれる視界に
(と、どうしよう……このままじゃ……!)
エリスフィーナはガルドリックに視線を送る。彼もそれに気付いて行動を起こそうとするが
「おっと、動くんじゃないぞ勇者様。ハイエルフは僕の手にあるんだからな」
そう話すとアレックス王子は吊らされたエリスフィーナの太腿を撫で始めた。
「ひっ、いやっ!」
あまりの悍ましさにエリスフィーナは王子の身体を懸命に押して振り子の様に円柱状の光の柱から一次的に逃れる。
「エリス!」
ースパッ!ー
ガルドリックがその一瞬を見逃さずショートソードの一撃で金属製の鎖を簡単に切断してしまった。
ーガシッ!ー
そして鎖が切られたエリスフィーナの身体をしっかりと受け止め抱き抱える。
そんな形勢の逆転を一瞬で行われた光景に
「おい! 転移を止めろ! ハイエルフが逃げやがった!」
「無理よ! もう転移は始まってるの! 今更……」
ーパアアアア!ー
マリアリアとアレックス、彼の部下らしい人影達は光の柱に包まれてそのまま何処かへと転移していったのであった。
そんな彼等が去っていった室内で
「俺達も行こう。君の手当てもしないとな」
ガルドリックはエリスフィーナを抱えたまま建物から出ようとする。
「わ、私歩けます! 下ろして下さい!」
エリスフィーナは恥ずかしさから自分で歩けると主張するが
「こいつは俺の手に負えそうに無い。鍛冶屋かどこかで外して貰わないとな」
未だエリスフィーナの両足首を締め付けている鎖を見る。しっかり食い込んで締め付けているそれを切るに必要な余分なスペースが何処にも無く、これを外すには金具を壊す以外に無さそうだった。




