ローランド王国
冒険者はこの世界における便利屋であり魔物絡みのトラブルを解決してくれる需要に困らない売り手市場である。
その中でも高ランクに位置する一流冒険者達は世界各国でも喉から手が出るほど欲しい存在なのだ。
従って、高ランク冒険者は国境通過も比較的楽になるのが一般的とされている。高ランクの冒険者とは単なる個人戦闘力の指標という訳では無く、品行方正である事や仕事の完遂率、冒険者仲間からの評判等から全てを含めて総合的に判断される。
間違っても、最初の適性試験で規格外の戦闘力を発揮したから高ランクになる様な単純な物差しで測られる事にはならないのである。
ローランド王国の国境は巨大な門構えを見せており街道から延々と城壁が伸びている。
国境を丸々城壁で守っているとは考えにくいが、国境の門を通らずに入国するとしたら大分骨が折れるだろう。
エリスフィーナ達パーティーはガルドリックを先頭に国境通過の裂に並ぶ。
「よ〜し、通ってヨシ!」
国境での警備に就く、ローランド王国の完全武装の兵士二人が国境を通過したい人々の人列を次々と捌いていく。
「皆、今のうちに冒険者証を見えるようにしておけ。その方がスムーズに済む」
ガルドリックが皆に首に下げているはずの冒険者証を予め出しておく様に指示する。これはコンビニのレジ等で事前にポイントカードや財布、スマホのアプリ画面を開いておく事に近い。
自分の番が回ってきて初めて準備しだすのとではお互いの手間が格段に変わるし、順番待ちの列も早くハケさせる事が出来る。
治安の悪い場所ではその限りでは無いが、早く通りたい通行者側と仕事をスムーズにこなしたい警備兵の利害は一致しているため、こういった気遣いもスムーズに旅を進めるコツなのてある。
「へぇ〜、流石は勇者様達なんだな。冒険者証が金ピカだぜ」
ヴァイスがガルドリックやメルティーローズ、クレスの首から下げている冒険者証をまじまじと見て感嘆の声を上げる。
彼等は皆、通常の最上位とされているAランクの冒険者証を下げている。ただ一人を除いて……
「ても、エリスフィーナさんは私達と一緒なんだね〜」
エイミーの話通り、後から勇者パーティーに参加したエリスフィーナの冒険者証は銅色のまま、駆け出しのFランクである。
「すみません……。かんか私だけ場違いみたいで……」
勇者パーティーの一員であるのに自分だけ銅色の冒険者証に若干の後ろめたさを感じたエリスフィーナはションボリと長い耳を垂れ下げて肩を落としている。
「エリスは俺達のパーティーに参加して直ぐに魔王との戦いに入ったからな。冒険者としてはまだあまり仕事をしてないんだ」
ガルドリックが気落ちしたエリスフィーナのフォローに入る。
「なんだよ〜、それじゃ俺達と大して変わらねぇんじゃねぇか〜!」
思わぬエリスフィーナのFランクにヴァイスが侮る様な発言をするが
「彼女は冒険者としての経験こそ少ないが、俺達と一緒に魔王城に行ききちんと生きて帰ってきた実力だ。ただの初心者とは思わない事だ」
ガルドリックが初心者なヴァイスを嗜める様に釘を差す。少々彼の語気が若干強くなっている様に感じるのは気のせいか。そうこうしていると、冒険者証の確認の順番がガルドリック達に回ってきた。
「ベテランと新人の冒険者達か。早いとこ経験を積んで俺達を楽させてくれよ?」
冒険者証を確認している警備役の兵士が軽口を叩いてきた。どうやらホワイトクラウン王国からの追っ手やお尋ね者として手配されている様では無さそうだ。
「よ〜し、通って良いぞ。街道をそのまま進めば王都だ。気を付けてな」
兵士の許可が下りたガルドリック達は何の障害もなく無事にローランド王国に入国出来たのだった。
「ねぇ、エリスフィーナさん。この道で合ってるんだよね?」
先頭で見張りを兼ねて前路哨戒をしながら歩いているエリスフィーナとエイミーの二人。
エイミーは側道が現れる度に不安にかられるのかエリスフィーナに確認してきていた。
「はい。こちらで大丈夫だと思います」
エリスフィーナも土地勘がある訳では無いが、街道の太さと方角から考えて王都への道を迷いなく進めていた。
ローランド国は森に覆われた国であるらしく、所々に森を切り開いた農地や村があるといった印象だった。
後続のガルドリック達を確認しながら森の中の街道を歩いているエリスフィーナの耳に
ーギュウウゥゥ……ー
弓の弦を引き絞る音が複数聞こえて来た。
「エイミーさん! 伏せて!」
ーガバッ!ー
「わっ!」
エリスフィーナが隣のエイミーを強引に地面に伏せさせながら自身も地面に倒れ込む。その次の瞬間
ーピュン! ピュピュン!ー
何本かの矢が横合いから現れ頭上を飛んで行く。その様子を後ろで目の当たりにしたガルドリックは
「待ち伏せだ! 姿勢を低くして周囲に警戒しろ!」
咄嗟にしゃがみながら辺りを回し見る。
攻撃を受けたのは先頭のエリスフィーナとエイミーの二人のみ、すぐに自分達に攻撃の矛先がまだ向いていない事を見て取ると
「メルティーローズ、クレス、ファイアーボールだ。あそことあそこの茂みに落とせ」
ガルドリックは魔術師二人に森を指差して火球を落とす場所を指示する。
「りょ〜かい!」
「お任せを」
メルティーローズとクレスの二人が直ぐ様魔法の詠唱に入る。その間、ガルドリックは敵の行動を見て、いつでもエリスフィーナ達を援護出来る様に背中の大剣に手を掛ける。




