奢られ酒
ゾロゾロと冒険者ギルドにやってきたガルドリック達は空いている席に着いた。
大きな街の冒険者ギルドでは飲食宿泊が比較的安価で利用出来る様になっている。
冒険者ギルドが公共の福祉、雇用と治安維持にも繋がっている事がよく分かる光景である。
また、ギルドで提供される食事は値段相応なものばかりであり、その辺りは周辺の飲食店や宿泊施設が差別化を計れている要素の一つとなっている。
木製のジョッキを大量に手にしたガルドリック、おつまみ料理を手にしたエイミー達女の子三人、エリスフィーナがテーブルに戻ってきた。
ガルドリックが手にしていたジョッキは八つなので女性陣は主に料理を運んできた。
パンに串焼き肉、串焼き魚、スープと一通り宴会が出来る様なメニューは揃っている。
テーブルに四対四でパーティーごとに別れ対面で席に着いた一同は
「かんぱ〜い!」
と、音頭を取るメルティーローズに続いて皆がジョッキを突き合わせる。
そして始まったのはお互いの自己紹介からだった。ガルドリック、エリスフィーナ、メルティーローズ、クレスと席に並んだ順番で一人ずつ名前と職業を名乗っていく。
「え〜と、俺は戦士でヴァイスだ。一応このパーティーで一応リーダーやってる」
茶髪の少年戦士が慣れない様子で自己紹介する。まぁ、冒険者同士あらたまって自己紹介する事などあまり無い。
「私はエイミーです! パーティーではえーと便利屋? やってます!」
彼女は便利屋を雑用係な意味合いで使っているが、索敵したり必要に応じて味方の護衛に付いたり、前線に立って囮をしたりとしているそうだ。
「私は神官でソフィーと言います。ヒールとキュアが使えます」
白い法衣を着たソフィーは見た目そのままパーティーの治癒を担当しているとの事だ。
「私は魔術師のメディナ。魔法使いだから役目は後ろからの援護……こんなトコかしら?」
最後の紫セミロング魔術師少女は少しぶっきらぼうと言うか……あまり親しげに話してくる感じでは無い。もしかすたら人見知りするタイプなのかもしれない。
「ガルドリックさん達って魔王を討伐しに発たれたって聞いていたんですけど……魔王ってどうなったんですかぁ?」
宴会が始まりエイミーが早速ガルドリックが答えづらい質問をしてきた。
魔王討伐についてはホワイトクラウン王国が大々的に喧伝していた国家的案件だった。
話題の張本人が目の前に居るのだから聞かれないという事があるはずも無い。
「……魔王はちゃんと倒してきたさ。勿論俺だけの力じゃなく皆の力でな」
少し考えたガルドリックはホワイトクラウン国王が喧伝するであろうキリヤ王子の活躍譚と矛盾なしない様に言葉を選んで説明する。
「俺も魔王を倒す勇者になりたかったのにな〜、こうなったらドラゴンスレイヤー目指すしかないかぁ〜」
ガルドリックの話を聞いたヴァイスは落胆した様な悔しそうな顔を見せたものの、新たな目標を口にする。
「ちょっと止めてよ、ドラゴンなんて命がいくつあっても足りないでしょ」
分不相応な目標を立てるヴァイスにテーブルの端のメディナからツッコミが入れられる。
「うるせー! 俺はリーダーだぞ! 目標はでっかく、夢は大きくなんだよ!」
少々無鉄砲な面を感じさせるヴァイスを見て、酒を口に運びながらガルドリックが
「ドラゴン討伐したいなら高名な魔術師とは仲良くしておいた方が良い。飛んで逃げられたら追い詰めたとしても徒労に終わるからな」
恐らくエリスフィーナと出会う前の話であろうドラゴン討伐に関する話を口にした。
(…………)
エリスフィーナがふと周りを見るとガルドリックは戦士ヴァイス、斥候エイミーと話しており、メルティーローズ、クレスの二人は神官ソフィーと魔術師メディナと魔法について話している。
彼等に語れる経験も無く、職業的な共通項も見当たらないエリスフィーナは話す事も出来ずに周りの話を聞いているしか出来なくなってしまっていた。
そんなエリスフィーナが串焼き魚を食べていると
「エリス、エイミーは君と同じ中衛だ。何か話してみたらどうだ?」
ガルドリックがいきなり話を振ってきた。
「え、あ……んぐっ! は、……はひ?」
ある意味完全に油断していたフシのあるエリスフィーナはいきなりの事に魚の小骨を詰まらせようとしていた。
「あの、エリスフィーナさんはエルフ……なんですよね? どんな戦い方するんですか?」
ガルドリックに促されるまま、エイミーが尋ねてきた。
「え、え〜と……敵が遠かったら弓を使いますね。ガルドリックさんの間合いの外から後衛に向かってきそうな敵が近くに居たらそちらには剣で対応します」
エリスフィーナは自分が実際に戦っている時の事を思い返しながらエイミーの質問に答える。そんなエリスフィーナの様子にエイミーは
「エリスフィーナさんってエルフなのに何か違いますね。なんて言うか……話しやすそうって言うか?」
最初の時と違いほっとした様な、緊張が解けた様な表情を見せる。
「あ、この子他人行儀だけど人見知りなだけだから! しっかり話してあげてね?」
隣のメルティーローズがエリスフィーナの肩をバンバン叩きながらフォローを入れてきた。
コミュ障扱いされている様でエリスフィーナとしては誠に遺憾なのだが
「エルフなんて俺達人間見下してるモンだと思ってたからな。そいつもお高く止まってるだけかと思ってたぜ」
ヴァイスからの言葉にエリスフィーナは改めて自分がエルフである事、人間達からどう見られていたのかを自覚するのだった。




