晒し上げ大会
本心では早く別の話題に移ってほしいと必死に願っているエリスフィーナを他所に彼女の話題は続く。
「エリスフィーナさんには普段からお世話になりっぱなしでした。彼女は感覚が鋭敏なのか敵をいち早く察知出来る様なんです」
ガルドリックが精霊魔法から離れたエリスフィーナ自身の特技について語り始めた。
索敵役の居ないガルドリック達にとっていかに重宝していたかを語るが
「はぁ……そうなんですか?」
「ん〜、うちの子その辺りは普通だと思ってたんだけど……」
アスタルもエルウィンドも二人共全くピンと来ていない。それくらい普通だろ?と、いわんばかりの某小説投稿サイトで散見される無自覚系主人公みたいなリアクションのソレだ。
まぁ、アスタルもエルウィンドも共に二人共エルフであるせいか、自分達の常識でしか物事を測れていないのだろう。
二人からすれば人間の聴力の限界などは想像も出来ないに違いない。
「エリスフィーナさんはオールラウンダーに戦えるのは非常に助かっているのですが……」
ガルドリックによるエリスフィーナ評はそのまま続けられる。
「エリスフィーナさんの接近戦はお母様譲りの戦い方かとお見受けしましたが……今の彼女には合っていない様に感じます」
ガルドリックはリーダーとしての意見を率直に述べていく。
要は体躯に優れているエルウィンドの戦い方は、華奢なエリスフィーナには合っていないというものだった。
「速さや鋭さは見事なのですが、どうしても一撃が軽くなってしまい、体重を乗せるにも限界があります」
ガルドリックは高原の村でエリスフィーナと手合わせをした時の事を思い出しながら話している様だった。
「ですから、今の彼女には攻撃の後の引きの動作を素早くこなせた方が良いように思います」
すっかり駄目出し気味になってしまったガルドリックによるエリスフィーナ評だが、彼の話は両親が見落としていた着眼点であったらしい。
「すみません……。もっと頑張ります……」
当のエリスフィーナはションボリと長い耳を垂れ下げて肩を落としてしまっている。そんな彼女の気の落とし具合に
「いや、ゴブリンやそこら辺の普通の体格の奴相手なら今のエリスのままでも大丈夫なんだ。ただ、巨人やオーガ、オーク相手だと危ないかなと思っただけでな」
予想以上に落ち込んでしまったエリスフィーナの様子にガルドリックは慌てて彼女にフォローを入れる。
「いえ、あの……私の事をそこまで気に掛けて頂いていたなんて思ってなかったので……あ、ありがとうございます」
エリスフィーナは慌てるガルドリックに顔を赤らめてはにかみながら答える。二人のそんな雰囲気に両親二人は
「エリスフィーナ、お前はまだ子供だ。彼氏などお父さんは認めないからな!」
「……エリィちゃん、後でママからお話があります」
さっきまでの和やかな空気が一変。プンスカと落ち着きの無くなったアスタルにジト目でエリスフィーナとガルドリックを見るエルウィンドとなっていた。そこに
「あ、あ〜、この白パンとても美味しいですねぇ。何か材料に秘密とかあったりするのでしょうか?」
空気の読める男、賢者クレスが白パンをカゴからひと掴みして両親に尋ね始めた。すると
「お、分かるかい? 森で取れた木の実を混ぜ込んでみたんだよ。木の実の硬さが良いアクセントだと思うんだが。いや〜口に合って貰えて良かったよ」
アスタルは手製の白パンを褒められて機嫌をすっかり百八十度回頭させていた。
「お母様からも冒険者時代のお話、沢山聞かせて頂きたいな〜♪ 以前はどの辺りで仕事をされていたんですかぁ?」
同じく空気を読む女メルティーローズがジト目のままのエルウィンドに冒険者時代の懐かしい話を聞こうと話を振ってきた。
「そ、そうねぇ。主にホワイトクラウン王国から大体……西のローランド王国に掛けてかしら?」
この大陸にはホワイトクラウン王国と魔族領以外にも大陸中央にアトレイス連邦、その西にはローランド王国が存在する。
更にその西には大海を隔てて大陸があり、そこから先にも帝国や王国が軒を連ねているのだ。
「あんまり故郷から離れるのもどうかと思ってたし……冒険者として生活するならその辺りで事足りちゃってたからね〜」
エルウィンドが昔を思い出しながら過去の冒険者生活を語る。魔族領が近いと言う事はトラブルも多い。
その為、わざわざ別の大陸に出向かなくても仕事の量には困らなかった様だ。その辺りは冒険者個人の考え方にも左右される。
まだ見ぬ新天地や異国に憧れ奥に先にと進んでいくパーティーも居れば、慣れた近場で変化の少ない日常を選ぶ……このエルフの夫妻は後者であったと言う訳だ。
「基本は二人で行動してたんだけど、たまに人間の人達と共同で仕事をする事もあったわね〜」
食卓はいつの間にかエリスフィーナによって片付けられ、果実酒と乾燥させた木の実の種によるおつまみが振る舞われていた。
クレスとメルティーローズに持ち上げられお酒も入っていった為か両親二人は上機嫌のまま、険悪な空気はいつしかどこかへ吹き飛んでしまっていたのだった。




