勇者パーティーとの対面
ーコンコンー
少し恥ずかしい気持ちのまま新品装備に身を包んで長老宅にやってきたエリスフィーナが戸を叩くと……
「来たか。入りなさい」
と、今のエリスフィーナにとっては無慈悲な一言が返ってきた。
「はぁ……。すぅ〜はぁ〜」
長老の返事にやりきれないため息を付いた彼女はあらためて深呼吸をする。そして
「し、失礼致します。エリスフィーナです」
ーガチャー
顔を赤くしながらも、彼女が名乗りながら戸を開けると……
(…………)
部屋の奥に立ち並ぶエルフの長老達、そしてこちらに注目する数人の男女の姿があった。
「あれが……ハイエルフか?」
「そうらしいわね。なんだか思った感じじゃないわね」
勇者パーティーの紺色のローブを着た魔術師風の灰色長髪優男と赤い衣装にとんがり帽子の赤みがかった茶髪の女魔術師がそれぞれ感想を述べる。
(…………)
彼らの元に近付いていくエリスフィーナはなるべく平静をよそおっていたが、慣れない衣装に初対面の相手……生まれてこの方エルフの里暮らしだった彼女には中々ハードな状況だった。そんな緊張極限な彼女に
「なにお前、七五三? 今日日王都でもそんな奴いないぜぇ?」
黒髪短髪の黒ずくめ男、キリヤがエリスフィーナを見るなりその衣装を誂ってきた。
「これは……父と母がこの日の為に用意して下さった装備です! いきなりなんですか貴方は!」
自分自身でもビックリする位の大きな声にエリスフィーナ自身驚いてしまった。
しかし、初対面の他人から両親が侮辱されてはいくら自分でも疑問符が付いている衣装であっても黙っている訳にはいかない。
軽口に本気で怒っているエリスフィーナにキリヤは
「な、なんだよ? こんくらいの冗談でマジになんなよ〜」
あくまでも謝らない失礼太郎にエリスフィーナがさらに怒鳴ろうと一歩踏み出したその時
「お嬢ちゃん、うちの若いのが悪かった。コイツはこんな態度だが王家の人間なんだ。ここは矛を収めてくれないか?」
全身鎧の大男がエリスフィーナとキリヤの間に割って入ってきた。彼は深く頭を下げると
「聞いているかは分からないが俺達は魔王討伐の為に活動している者だ。世間からは勇者パーティーって言われてる」
大男はエリスフィーナの前で膝を付くと
「俺はガルドリック・ヴァールハイト。こんなでも勇者とか呼ばれてる」
まるで騎士が姫に傅く様に頭を下げるガルドリックの姿は
「あ、あの、私はそんな大それた存在じゃありませんので立って……!」
いきなりの事にエリスフィーナは慌ててガルドリックを立たせようとアワアワするが
「我々は王家の意向でハイエルフである貴女に同行を求めに来ました。長老の方々は難色を示されたが私は貴女の意思を確認したい」
ガルドリックは自分達がエルフの里に来た理由と目的とを語った。そして、エルフの長老達がエリスフィーナを送り出す事に難色を示している事も。
しかし、最初から勇者パーティーに加わるつもりで来たエリスフィーナに迷いは全く無かった。
「あの……私でご不満では無ければ、よろしくお願いします」
「あ、ああ。本当に……?」
エリスフィーナの即答にガルドリックは驚いた様な鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしている。
「だって、精霊神様に前から言われていましたし……その為に準備もしてきましたから」
エリスフィーナはガルドリックに手を差し出して彼に立ち上がる様促す。
ーギュッー
ガルドリックはエリスフィーナの手を取り立ち上がると
「エルフってのは閉鎖的で気難しいって聞いてたんだが……」
彼の想像と大分違っていたのか、彼は頭を掻きながらバツが悪そうに感想を漏らす。
「私の両親は昔、人間の国で冒険者をしていたと聞いています。もしかしたら、その影響かも……」
大多数のエルフ達は自分達の種族を誇りに思っている。
それは手先が器用だったり頭脳明晰だったり身のこなしが軽く弓矢に才能がある等、人間に比べれば確かに優位点が多い。
「両親が言っているんです。エルフも優れているが人間にもドワーフにもホビットにも長所があると。欠点もあるかもしれませんが、それは私達も同じですから……」
エリスフィーナと軽く会話をしたガルドリックは彼女とならパーティーとしてやっていけそうな雰囲気を感じていた。そこで
「長老さん方、彼女はこう言っているがそれでも駄目か?」
件のエルフの長老達に判断を仰ぐ。
「まぁ、精霊神様の意向だから仕方あるまい」
「それに、あの娘はエルフとしての自覚に欠けておる」
「このまま里に置くより外に出した方が、里の安寧は保たれよう」
長老達は寄り集まって方針を話し合っている。エリスフィーナとその両親はこの里では浮き気味なのが見て取れる。
「分かった。しかし、くれぐれも無理はしない様にな」
こうして、ようやくエルフの長からエリスフィーナが旅に出る許しが下されたのだった。
「という訳で、改めてよろしく頼む」
ガルドリックが改めてエリスフィーナに手を差し出してきた。
ーギュッー
「こちらこそ、よろしくお願いします。エリスフィーナと申します」
彼の手を取ったエリスフィーナは彼の手を握り彼女も改めて自己紹介をするのだった。




