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女神様にハイエルフとして長生きする様お願いされました。  作者: 大鳳
第一章 ガルドリック編

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土蜘蛛

ーベチャッ!ー


「うっ……くぅ!」

 ウンディーネが展開している水の壁の範囲外、地面スレスレからタイラントスパイダーが吐き出した糸がエリスフィーナの足に巻き付いてきた。

「くっ……離して!」


ーズバッー


 慌てて細剣を抜いて糸を断ち切ったエリスフィーナだが


ーベチャッー


「きゃっ!」

 絶え間なく飛ばされる糸によってエリスフィーナは絶えず糸の処理に追われる有り様になってしまっていた。

 糸を切らなければ足を引かれて転ばされてしまいそうになる為甘く見る事は出来ない。

 少しでも光の壁が解放されるまでの時間を稼ぐために糸を捕まらない避様にも努力するが

「くっ、このっ!」

 右に左にと糸を避け続ける間にエリスフィーナは水の壁の範囲外へと誘導されてしまっていた。

 足元ばかりに注意していた為その事実に気付くのが遅れてしまったその時


ーシュルシュル……ー


「あぅ!」

 細剣を手にしていた右腕に糸が巻き付き、いとも簡単に自由を奪われてしまった。


ーグググッ!ー


 タイラントスパイダーはエリスフィーナを引き寄せようと糸を手繰り寄せ始めた。

「離して……離してぇ!」

 一方のエリスフィーナも足で地面に踏ん張り必至の抵抗を続けるが、タイラントスパイダーの力は強く持久戦に勝ち目は無い。

「ガルドリックさん! お願いします! 早く助けて!」

 今にも折れそうな心でエリスフィーナは光の壁の向こうに居る後ろのガルドリック達に助けを呼ぶ。



「おい! まだなのか! 早くしないとエリスが保たない!」

 光の壁を叩きながらガルドリックが後ろのマリアリアを見る。

「駄目よ、見て。小型のタイラントスパイダーが群がってきてる。今防壁を解除したら私達まで共倒れよ」

 マリアリアの言う通りウンディーネの水の盾に阻まれているタイラントスパイダーの周囲の砂地から小型のタイラントスパイダー達が次々と湧いて出てきていた。

「エリスを見捨てるつもりか!」

 堪りかねたガルドリックは遂には大剣で光の壁を叩き始めた。さらに

「メルティーローズ、クレス! 壁の破壊と同時に魔法を撃て! エリスフィーナは俺が救助する!」

 後方の魔術師組にタイラントスパイダーへの初撃を託し引き続き光の壁を殴り続けるのだった。



 糸に巻かれた右腕を引かれているエリスフィーナとタイラントスパイダーの引っ張り合いは新手の登場で更なる危機に陥っていた。

 新しく現れた小型のタイラントスパイダー達も地面スレスレに糸を放ってきたのである。

「くっ! やだっ!」

 エリスフィーナは右に左にステップしつつ、時には飛び上がったりして糸に捕まらない様に何とか耐えていた。その時


ーピシッ!ー


 後ろの光の壁から破断音が聞こえてきた。みればガルドリックが必至の形相で光の壁を大剣で叩いているのが見えた。

さらにその後ろではメルティーローズとクレスの二人が魔法の準備をしているのが分かった。魔法陣が幾重にも浮かび上がっている辺り、協力な魔法を使うつもりなのだろう。もう少しで助けが入る……エリスフィーナがようやく希望を掴んだその時だった。


ーベチャッ!ー


「きゃあっ!」

 エリスフィーナが着地した一瞬を狙いすました様な糸の一撃が彼女の足首をしっかり捕まえていた。

 片手片足を捕らえられたエリスフィーナはタイラントスパイダーの力に耐え切る事は出来ず、バランスを崩したところに更なる糸が飛んできた。


ーベチャベチャッ!ー


「わっ……くうっ!」

 もう片方の足も捕まったエリスフィーナは糸を強く引かれ


ードシャッ!ー


「うぐっ!」

 砂地に尻もちをつかされてしまった。更に強く引かれ続ける糸によって水の壁の後ろから無理矢理引っ張り出されようとしていた。

「嫌っ! 助けてっ! 離してっ!」

 エリスフィーナは唯一自由の利く左腕で砂地に手を置き、必死に砂を掴んで抵抗する。砂などつかんだところで意味はないがこれが今の彼女に出来る必死の抵抗だった。


ーピシイッバリイィィィン!ー


 光の壁が粉々に砕け散りその向こうからガルドリックが飛び出してきた。


ーズバッ!ー


 地面スレスレを這う程に姿勢を低くしたガルドリックは大剣を横薙ぎ一閃、エリスフィーナを捕らえていた糸を全て断ち切ると

「今だ! 撃て!」

 後方のメルティーローズとクレスに指示を叫ぶ。

「マジックミサイル!」


ーシュババババババッ!ー


 名前こそいつもの魔法による緑色に光る飛翔体を放つ魔法だが、今回はその数が違っていた。

小さいタイラントスパイダー一体相手に十は超えるマジックミサイルを撃ち込んでいきそれを全ての小型タイラントスパイダーに命中させていく。さらに

「ライトニングボルト!」

 賢者クレスが放ったのは電撃に指向性を持たせた雷撃魔法だった。

「伏せろ!」


ーガバッ!ー


「え……?」

 魔法の発動と同時にガルドリックはエリスフィーナに覆い被さって魔法の影響から彼女を庇う。

「が、ガルドリックさん……!」

 ガルドリックに庇われたエリスフィーナに魔法の影響は無かったが、ガルドリックは少なくない手傷を負っていた。


ードドオォォォン!ー


 雷撃の束を食らったタイラントスパイダーは身体のあちこちから煙を噴き出しており

「うおおおっ!」


ーズドオオオン!ー


 ガルドリックの大剣の一振りによって、タイラントスパイダーを一刀両断真っ二つに斬り裂いて戦闘はひとまず終了したのだった。

「くそっ、俺にかかりゃああっという間に終わってたのになぁ」

 皆が戦いの後処理に追われる中、最後尾で見物していたキリヤ王子は勇者パーティーの戦いぶりを上から目線で評価していた。

 魔導拘束具には相変わらず魔力を加えているが、まだ拘束具が壊れる雰囲気は無かった。

 エリスフィーナをケアしたりタイラントスパイダーの死骸を処理したりしているガルドリックやメルティーローズ、クレスと違いキリヤ王子は後ろで暇そうにしていた。

 そんな彼は自分と同じ様にパーティーの輪から外れている者の存在に気が付いた。

 聖女マリアリアである。彼女はエリスフィーナを助け起こし糸の処理をしているガルドリックの二人を忌々しい表情で眺めていた。

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