勇者パーティーの話し合い
山頂付近に設置していた天幕に到着したエリスフィーナとガルドリックの二人はようやく勇者パーティーのメンバー達と合流を果たす事が出来た。
体調の回復していたマリアリアの治癒魔法で怪我を癒してもらった二人は賢者クレスによる探知魔法でガルドリックの大剣も見つける事が出来た。
そしてその日の夜には山からの下山を果たし、山の麓にてようやくゆっくり休む事の出来る野営に入る事が出来たのだった。
本来であれば喜ばしい事であり、落ち着いた環境の天幕で身体を休めて明日からの旅に備えるはずだったのだが……
「俺の魔法を使えなくするってどういう事だよ!」
キリヤ王子の大魔法は味方にも被害が大きい事で、ガルドリックが彼に魔導拘束具を付ける事の了承を求めたのだ。
しかし、返ってきたのは了承では無く分かりやすい反発だった。ここに至るまでにガルドリックによる説明が再三再四行われた上でのコレである。
「キリヤ王子、君には出発前に言っておいたはずだ。威力の高い魔法はこちらの指示無しには使わない様に……と」
大魔法を使った結果雪崩を誘発させエリスフィーナを巻き込んでしまった訳だが、キリヤ王子は反省する素振りすら見せず
「そんなん、俺の魔法が原因で雪崩が起きたなんて証拠でもあんのかよ! 第一、雪崩くらい避けられない方が悪いんじゃねーか。自慢の精霊さんにでも防いでもらえっての」
ガルドリックの言葉に返すのは言い訳と他責の発言でしか無く、天幕の中の雰囲気は明らかにギスギスしたものへとなっていった。
「す、すみません……。私がもう少し早く雪崩に気付いていれば……」
責任の矛先を向けられたエリスフィーナは謝罪の言葉を口にする。長い道が垂れ下がり明らかに気落ちしているのが見て取れるが……
「キリヤ王子、あなたねぇ! まずはごめんなさいでしょ!」
エリスフィーナを励ます様にして隣に寄り添うメルティーローズがキリヤ王子に正論で詰める。
「なんだよ! 俺一人が悪いってのかよ! 第一、あの時はガルドリックから魔法撃つなって指示無かったんだぞ!」
今度はガルドリックの指揮能力に話を転がし始めた。
「あの時は確かにキリヤ王子に個別の指示は出していなかった。確かに君を放置してしまった責任はこちらにもある。それは謝罪しよう」
ガルドリックの謝罪という言葉にキリヤ王子は勝ち誇った様な笑みを浮かべ
「次からはちゃんと的確な指示を出して下さいよ〜、勇者ガルドリック殿〜?」
「だから、今はこれからについての指示を伝えています。キリヤ王子。魔導拘束具を付けるか、それが不服なら……」
勝ち誇り戯けて煽りの態度を見せたキリヤ王子にガルドリックは自身の方針を即答で返した。
「う、そ……それは……」
即応での反撃を受けたキリヤ王子は二の句が告げられずに居る。
「くそっ、なんなんだよ! 俺はホワイトクラウン王国の王子だぞ! お前等が勇者として活動出来るのも俺のお陰なの忘れんじゃねーよ!」
ああ言ってもこう言ってもガルドリックを説き伏せられないと知ったキリヤ王子はついには権力をかさに着て彼を黙らせようとしてきた。
「キリヤ王子、あくまで魔導拘束具を拒否するのなら……今後厳しくなる魔王との戦いに君を同行させるのはリスクでしかなくなる。ここで君には引き返して貰う事になる」
「なんだよ! ここで勇者パーティーから追放かよ! 無能を外すんじゃなくて有能外すとかどんな追放だよ!」
ガルドリックの言葉にキリヤ王子はやたらと追放と言う言葉を使いたがる素振りを見せた。キリヤ王子は延々と他責と自己主張を繰り返すばかりで話が全く進まないでいた。その時
「エリスフィーナさん? あなた、何度もガルドリックに迷惑を掛けてるけど……何か反省する事は無いのかしら?」
ふいにマリアリアからエリスフィーナに対し詰問口調での質問が投げかけられた。
「え、あの……私は……」
いきなり話が振られたエリスフィーナは言葉がうまく出てこない。そんな彼女にマリアリアは
「だってそうでしょう? 雪崩に巻き込まれても巨人に掴まっても貴方はされるがまま……結果、ガルドリックを危険に晒してるの。それは解るわね?」
「は、はい。ごめんなさい……」
マリアリアから事実で詰められたエリスフィーナは小さくなる事しか出来なかった。聖女である慈愛の象徴の様なマリアリアからの言葉はエリスフィーナには酷く冷淡に聞こえていた。
まさか聖女から厳しく詰められると思ってもいなかったエリスフィーナはビックリしてしまっていた。
「マリアリア、そこまで言わなくても……俺は大した怪我はしてないし……」
マリアリアの口調に驚いていたのはガルドリックも同じだったらしく、彼はマリアリアを嗜めに入る。
「貴方はいつもそう! 少しは自分を大事にして!」
マリアリアはガルドリックに対し自身の感情を露わにした。それを見ていたメルティーローズは
「マリアリアはガルドリックが心配なだけなの。エリィに当たったのも彼が心配なだけだから気にしちゃ駄目よ?」
エリスフィーナにヒソヒソ声で耳打ちしてきたが、ビックリしていたエリスフィーナは小さく頷くのがやっとだった。
キリヤ王子とマリアリアの感情の発露で話に収拾がつかなくなった勇者パーティーはひとまず今日の話し合いはこれでお開きとなったのである。




