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快晴の雪山

ーザッザッザッ……ー


 日が昇った雪山をガルドリックとエリスフィーナの二人が山頂目指して登山を始めていた。

 今日は晴れの天気と言う事もあり、風雪が酷かった昨日より格段に身体が楽に感じられた。

 ガルドリックには大剣が無くショートソードのみしか武器を持っていないため、魔物が出てきたらエリスフィーナもしっかり戦わなければならない。そんな登山を二人で続けていると

「グオオオオ……」

「グゥゥ……」

「ウオオオ……」

 明らかに手傷を負っている巨人数体が山を下ってくるのが見えた。

「エリスフィーナ、援護は任せた」

 ガルドリックはそれだけ言うとショートソード片手に巨人達に斬り込んでいく。

 こん棒を避けてショートソードを敵の急所に的確に叩き込んでいく。それは戦い方を熟知したベテランの立ち回りそのものだった。

「はっ!」


ーピュン!ー


「グオッ!」

 少し離れた位置に居るエリスフィーナの仕事はガルドリックの意識から外れてしまった敵への牽制と新手への警戒だった。

 巨人相手に弓矢は中々致命傷とはなりづらいが、ガルドリックが袋叩きに遭う危険を遠ざけるには十分だった。

 ガルドリックが一体を片付けている間にエリスフィーナが敵の注意を削ぐ。そしてガルドリックが次の相手の始末に掛かる。その繰り返しで遭遇戦は終わった。

「ふぅ、片付いたな。エリスフィーナも援護お疲れ。他に近くに敵は居そうか?」

 雪山の登道に敵の姿は見えず、山の斜面の森林地帯からも物音は何も聞こえない。

「いえ、近くに敵は居ないみたいです」

 エリスフィーナの返事を聞いたガルドリックは小さく頷くと、再び山頂への山登りを再開しエリスフィーナもその後に続く。

 しかし、雪崩の起きた斜面を上がるのは中々に骨が折れた。登山道も未整備で普通の山の斜面とほぼ変わらない。

 アイゼンやピッケル等も無い中での山登りは想像以上に過酷なものだった。しかし、樹木が雪崩で倒された斜面を辿っていけば、いずれ必ず仲間達の居る天幕に辿り着けるはずだ。二人が登山を続けていたその時


ーボゴオッ!ー


「グオオオオ!」

「ガアアアアッ!」

 二体の巨人が雪の中から現れ二人の前に立ち塞がった。雪崩に巻き込まれて埋まっていたのが起き上がってきた様で戦闘態勢と言う訳でも無いらしく

「おらあっ!」


ースバアッ!ー


「グアッ!」

 ガルドリックが直ぐ様一体の巨人を斬り伏せていた。エリスフィーナも弓に矢を番えて辺りを警戒していると


ーズズズ……ー


 身体が傾く様な僅かな振動が感じられた。また雪崩かとエリスフィーナが上り坂の先に注意を向けたその時


ーガシッ!ー


「あうっ!」

 突然足元の雪の中から巨人の手が伸びてきてエリスフィーナは足を掴まれ

「グオオオオッ!」


ーボゴオオオッ!ー


「いやあああっ!」

 雪の中から起き上がった巨人にエリスフィーナは足を掴まれたまま逆さに持ち上げられてしまった。

「エリスフィーナ!」

 エリスフィーナの悲鳴はすぐにガルドリックに伝わった。彼はショートソードですぐに巨人に斬り込もうとしたが

「グウウ……」

 巨人は捕まえた獲物を見せつける様に、エリスフィーナをガルドリックの前に盾にして突き出す。

(う、ウンディーネさん……私を助けて……!)

 エリスフィーナは巨人から逃れようと足を掴んでいる腕を何度も蹴りながら

腰の革袋からウンディーネを呼び出そうと試みる。だが


ードサッ!ー


「そ、そんな……!」

 革袋の中の水は寒さで凍りついてしまっており、ウンディーネを簡単に呼び出す事は出来なかった。

 エリスフィーナが何も出来ずに手を拱いている間に巨人はガルドリックに殴り掛かり


ードゴオッ!ー


「ぐあっ!」

 人質を取られて判断を迷っていたガルドリックを簡単に吹き飛ばしてしまった。

「ガルドリックさん!」

 エリスフィーナはガルドリックに呼び掛けるが、彼のダメージはかなりのものの様で立ち上がるのもやっとと言った感じだ。

「グオオオオ!」


ーブンブンブン!ー


「きゃああああっ!」

 巨人は次にエリスフィーナを力任せに振り回し始めた。不要になった人質を片付けるつもりなのか、振り回していたエリスフィーナを地面に向かって振り下ろしたその時だった。

「ファイアーランス!」

「エリスフィーナ!」

 魔法を撃ち出した何者かの声とガルドリックの叫び、それはほぼ同時だった。


ーゴオオオッ!ー


「グアアアッ!」

 炎の槍が命中しエリスフィーナの足を掴む巨人の手が緩む。地面に叩きつけられ様としていたエリスフィーナの身体は


ーガシイッ!ー


 駆けてきたガルドリックがしっかり抱き抱えエリスフィーナが怪我を負う事は無かった。

「エリスフィーナ、無事か? 怪我は無いか?」

 受け止めたエリスフィーナを心配する声を掛けていたガルドリックにエリスフィーナが

「ガルドリックさん、血が……!」

 ガルドリックは口から血を垂らし辛そうな顔をしながらもエリスフィーナには笑ってみせる。

「大した事は無い。俺は頑丈だけが取り柄でね」

 そんな二人がお互いの無事に安堵しているところに

「あなた方、無事でしたか。皆が天幕で待っていますよ」

 賢者クレスが駆け寄ってきた。どうやらさっきの炎魔法は彼の援護であったらしい。

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