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洞窟への避難

ーゴオオオッ!ー


 エリスフィーナの道具袋が見つかった事で二人はなんとか暖を取りながら身体を休める事が出来ていた。

 ガルドリックが何処からか見つけてきた太い枝を利用して雪でロケットストーブを作ってしまい、その火力で雪を利用して飲み水を確保してしまったり、雪を利用した簡単な濾過機構まで作ってしまったり……森での変わらない暮らししか送ってこなかったエリスフィーナには感心と驚きの連続だった。そして思った事をそのまま口にしてみる

「雪をそのまま溶かすだけじゃ駄目なんですか?」

「まぁ、雪は色々汚れてるからな。余裕があるなら綺麗な水の方が良いだろ?」

 ガルドリックはそう言いながらコップで掬った濾過した水をロケットストーブに掛けられている金属製の器に入れる。煮沸消毒も兼ねて温かい水分を摂って身体を内から温めようというのだ。

「ほら、出来たぞ。火傷するなよ?」

 ガルドリックからカップとスプーンを手渡されたエリスフィーナは恐る恐るカップに口をつける

「……温かい」

 ガルドリックが手渡してきたカップには塩コショウを入れたお湯に砕いたハードタックを入れた簡素な粥が入れられていた。

「エリスフィーナの道具袋のお陰だ。買ってくれたメルティーローズにも感謝だな」

 ガルドリックも自分の分をカップによそうと熱々の粥に同じ様に口をつけ始めた。

「マリアリアさんやメルさん達……大丈夫でしょうか?」

 粥を食べて少しゆとりが出てきたエリスフィーナが、山頂付近で逸れてしまった勇者パーティーの他メンバー達の事を心配し始めた。

「向こうは四人居るし天幕も立ててあるからまず大丈夫だろう。それに、マリアリアの体調が戻れば神官の魔法もあるからな」

 言われてみればもっともではある。あちらには魔法使いが揃っているのだ。どちらかと言えばエリスフィーナ達の方が心配される立場なのかもしれない。

「マリアリアならきっと大丈夫だ。あいつは昔から頑丈だからな」

 ガルドリックは空気を和ませようとしてか、マリアリアの心配は要らない事をエリスフィーナに語る。そんな彼の様子に

「マリアリアさんの事……、信頼してらっしゃるんですね」

 エリスフィーナは二人の間に勇者パーティーの仲間としての関係以上の絆の様な特別な何かを感じ取っていた。

「それは……まぁ、幼馴染って言うか……長い腐れ縁だからな」

 おどけてみせるガルドリックだったが

「エリスフィーナ、さっきの話なんだが……」

 話題を切り替える為か、ふいにガルドリックが神妙な顔をして重い口を開いてきた。

「……キリヤ王子なんだが、山を降りて落ち着いたら彼に魔導拘束具を付けて貰おうと思ってる」

 ガルドリックが話す魔導拘束具とはクレスが言っていた良い考えの事だ。

 エリスフィーナ達がこうして遭難してしまったのはキリヤ王子による大魔法の衝撃が原因なのかもしれないからだ。

「キリヤ王子が魔法を使いたがるのは敵を倒す目的以上の何かを感じるんだ。まるで、自分の実力を俺達に見せ付けたいかの様な……」

「そうかもしれませんね。でなければ私に魔法撃ったりしないでしょうし……」

 ガルドリックの推測はエリスフィーナにも腑に落ちるところがあった。

 高原の村での手合わせ、あの時は自分の力を見せつけたいが為に絡んできた様にしか思えない。

 あの時、自分が彼に反撃せず素直に一本取られていればあの後の大魔法も、それを発端とした山頂付近での大魔法も無かったのかもしれない。

「……すみません。皆さんにご迷惑をお掛けしてばかりで……」

「エリスフィーナのせいじゃない。キリヤ王子は君を迎えに行く前の王国で初めてパーティーに加わったんだ」

 ガルドリックが話すには、キリヤ王子が勇者パーティーに加入したのは彼等がエリスフィーナの里に来る直前の出来事であったらしい。

 ホワイトクラウン国王から肝いりで加入してきたキリヤ王子とは意見の摺合せも終わってはおらず、技量を見ながら扱いを決めていく予定だった。

 しかし、キリヤ王子は王族だけあって、あまり無碍に扱う事にはガルドリックも抵抗があった様だ。

 だが、パーティーの安全すら脅かすのであれば、これ以上彼を放任する訳にはいかないという事だ。

「明日、夜が明けたら山頂に向かおう。天幕も回収しなければならないし出来れば俺の剣も探したい。悪いが……付き合ってくれないか?」

「は、はい! 頑張ります!」

 ガルドリックの提案にエリスフィーナは元気よく答える。こうしてエリスフィーナとガルドリックの二人は明日に備えて早めに就寝する事にするのだった。



 その夜、洞窟の中とは言え風雪が吹き込む中での就寝は疲れた身体に確かな疲労を蓄積させていた。

(……寒い)

 疲れと寒さの間で意識がぼんやりしていたエリスフィーナに

「女の子に提案するのは抵抗あるんだが……お互い身を寄せないか?」

 ガルドリックがやや気まずそうに提案してきた。確かに二人で別々に眠るよりは身体を密着させた方がお互いの体温で寒さに抗う事が出来る。

(…………)

ガルドリックの提案はエリスフィーナに長考を強いた。マントで身体を包んでいるとは言え洞窟の地面は凍えるように寒い。

「……わ、分かりました」

 エリスフィーナは決断するとガルドリックに寄り添おうと彼の近くに移動を始める。

「お互い鎧は外すか。その方が体温が伝わるだろう」

 こうしてエリスフィーナとガルドリックの二人はお互いに身を寄せ合いながら明日の朝日を待つ事にするのだった。

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