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雪山登山

 高原の村に数日滞在する間に村人による道案内の段取りが終わったエリスフィーナ達は当初の予定通り魔族領に潜入する為の山越え登山を始めていた。

 道案内の地元の猟師を先頭にガルドリック、エリスフィーナ、マリアリアが続きメルティーローズとクレスの後衛コンビの後にキリヤ王子が最後尾の殿を務める編成で山道を登っていた。

 使われなくなって数年とは言え山道の跡はくっきり残っており、もしかしたら道案内は要らないんじゃないかと思えてくる位には順調な登山となっていた。

「エリスフィーナ、何かの物音や魔物の声が聞こえたら教えてくれよ?」

 先頭を歩く勇者のガルドリックは大剣だけでは無く、野営用の天幕やら冬山での活動に必要な装備一式も背負っており、新人のエリスフィーナから見ても負担が彼に偏っている様に見えた。

 だが、普通の防寒用の装備や寒冷地用の調理器具の様な女性でもなんとか運べる様な雑貨と違い、雪山にて風雪に耐えられるだけの頑丈な天幕を運んで山越え出来る人間などこのパーティーにはガルドリック以外には誰も居なかった。

 その為、休憩ごとに彼の体調を魔法でサポートするなど、メンバー達は自分達の得意分野で彼を支えていくより他は無かった。

 そんなエリスフィーナがガルドリックの負担を減らす為に出来る事は、向かい風などの障害となる天候を風の精霊シルフにお願いして風向きを逸らしたりする事であった。

 もちろん歩くパッシブソナーとして周囲への警戒も怠る事は無く、勇者パーティーは比較的簡単に山脈の登りの行程を踏破する事が出来たのだった。



「こっからあっちの尾根に向かっていきゃ後は一本道だ」

 道案内の地元の猟師の話によると、後の魔族領までの行程は一本道であるらしい。

「分かった、ありがとう。道案内助かった」

 ガルドリックは地元の猟師の話そのままに彼に報酬として金貨数枚を渡して彼を村に帰してしまった。

「ガルドリック、この先に道案内が無くて本当に大丈夫なのですか?」

 賢者クレスが中指で眼鏡のズレを直しながらガルドリックに尋ねる。確かに登りは終わったとは言え、魔族領までの先はまだ長い。

 これからは山脈の尾根伝いに進み、山を下っていかなければならないのだ。

「ここから先はいつ魔物が出てきてもおかしくは無い。無闇に民間人を連れ回す訳にはいかないからな」

 ガルドリックは村人の安全を考えての決断だったと皆に説明する。現在は昼を少し回った時間であり、天候は曇りとは言ってもいつ雪が振り出すか分からない空模様だ。

 今、この場で議論している位ならば少しでも先に進んでおきたいというのがガルドリックの本音であった。

「今は先に進もう。尾根の間は天幕は張れそうに無いから夜までには下山ポイントに辿り着いておきたいからな」

 こうして、ガルドリックの方針通り勇者パーティーは一列となって山脈の尾根を歩き始めるのだった。



 雪山の尾根は風を遮るモノは何も無く、標高の高い雪山はただでさえ寒いのに、風に吹き付けられたらあっという間に低体温症に陥ってしまうだろう。

「シルフさん、ありがとうございます。もう少しだけ……力を貸して下さい」

 吹き付ける風を精霊の力で逸らしパーティーを守ってきたエリスフィーナだが、そろそろ魔力が覚束なくなってきていた。しかし、尾根の終わりはまだまだ遠く今解除されてしまえばパーティーは一気にピンチに陥ってしまうかもしれない。

 メルティーローズやクレスのマジックシールドであれば、多少の風雪なら簡単に防げるだろうが……彼等の魔力は攻撃の要でもある。

 マジックポーションも持っているとは言っても、これから魔族領に乗り込み魔王を討ち倒そうとしている彼等である。

 道具はそう簡単に使えるものでも無い以上、今のエリスフィーナ達が出来るのは一刻も早く先を急ぐ事だけだった。勇者パーティーのメンバー達が山脈の尾根を一列になって歩いていたその時


ーバサッバサッバサッ!ー


 何者かの羽ばたき音がエリスフィーナの耳に入ってきた。

「ガルドリックさん! 空から何かが来ます! 九時の方向性です!」

 低い雲のせいか対象の姿は確認出来ていないが羽ばたく音は確かに聞こえていた。その音圧から、対象が重量級である事、複数である事が明らかだった。

「皆、距離を詰めろ! 南側だ! 空を警戒しろ!」

 第一報を発したエリスフィーナの声に反応したガルドリックが皆に指示を飛ばす。

 エリスフィーナは耳を更に澄ませて性格に音の詳細を掴もうと試みる。


ーバサッバサッバサッー


「重い音が被って聞こえる……? 相手は複数……?」

 彼女に経験があれば羽ばたき音で対象の正体が掴めたのかもしれないが……今のエリスフィーナには経験がまるで足りていなかった。


ーバサッバサッバサッー


「頭上です! 上に気を付けて下さい!」

 敵が何か何体居るかも分からずエリスフィーナに出来るのは対象の方向を伝える事だけだった。

「こうなったらファイアーボールで牽制しますか。メル、貴女はマジックシールドの準備を」

 雲の上に居るであろう対象に出来る事を模索していたクレスがメルティーローズに指示を出す。一方のガルドリックは大剣を構えて空を注視している。

 エリスフィーナは弓矢を構えいつでも狙いが付けられる様に空を広範に見上げている。パーティーメンバーの皆が自分に出来る事の準備を進めていたその時

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