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真打ち

「あれ? なんだか面白そうな事してたんじゃん! 俺も混ぜてくれよ!」

 それまで何をしていたのか、どこにいたのかも分からなかったキリヤ王子が双剣を手に皆が居る広場にやってきていた。彼が話す面白そうな事とはエリスフィーナとの手合わせの事だろうが……

「ああ、キリヤ王子か。それはもう終わったんだ。彼女の立ち位置は決まっ……」

「そんじゃあ、次は俺が相手してやるよ。なるべく手加減はするから安心しな」

 ガルドリックの話を食い気味に遮ったキリヤ王子は口元に笑みを浮かべながらエリスフィーナに近付いてくる。

「ほら、かかって来いよ」

 キリヤ王子は双剣の片方で肩をポンポン叩きながら余裕たっぷりに言い放つ。そんな彼の様子にエリスフィーナは

「え〜と……」

 キリヤ王子とガルドリックを交互に見ながらオロオロしているが

「すまないが、王子の相手をしてやってくれ。難しいかもしれないが……全力で構わない。後はこちらで処理する」

 ガルドリックはエリスフィーナの肩に手を置いてそれだけ言うと他のメンバー達の所へと帰っていく。

(仕方ないですね……)

 連戦となるエリスフィーナが諦めて細剣を抜いたその時

「お前の戦い方は割れてんだよ!」


ーシャッ!ー


 一気に距離を詰めてきたキリヤ王子は双剣で右袈裟斬りで斬りかかってきた。


ーキィン!ー


「うっ!」

 エリスフィーナは細剣でキリヤ王子の剣を受け止める。そこに

「胴ががら空きだぜ!」


ーシャッ!ー


 キリヤ王子は左手で薙ぎ払いを放ってきた。


ーキィン!ー


 エリスフィーナは細剣でキリヤの剣を受け流しつつ後方にステップし、細剣で薙ぎ払いも受け止めた。

「これならどうだ! ハイエルフさんよぉ!」


ーブォン! ブォン!ー


 キリヤ王子は続け様に双剣を振り回してくるが、その太刀筋は単純で威力そのものも大したモノでは無かった。

(…………?)

 まるで子供が小枝を振り回している様な単調な動きにエリスフィーナは罠を疑い防戦一方に努めていた。そこに

「お前の戦い方は先の先を取る先手必勝型! 先手を取らせなけりゃあこんなモンなんだよ!」

 キリヤ王子の嘲笑混じりの決めつけが飛んできた。エリスフィーナとしては反撃のタイミングはいくらでもあったのだが……

「よく受けてるがこれならどうだ?」


ージャキッ!ー


 キリヤ王子は双剣を逆手に持ち替えると剣に魔力を込め始めた。


ーピュオオオッ!ー


 キリヤ王子双剣がそれぞれ風を纏い始めたその時

「エリスフィーナ、相手は風を飛ばす攻撃をしてくるわ! 気を付けて!」

 風に乗って微かな女の子の声が聞こえてきた。その声は森の住人であるエリスフィーナには馴染みのある声だった。その声に反応した彼女が次の行動に入ったその時

「飛翔裂破斬!」


ーズババババッ!ー


 キリヤ王子は左右の双剣を振り回し真空波の連撃を放ってきた。三日月状の緑色に光る真空波がエリスフィーナが居た場所へと飛んでいく。


ーザザアッ!ー


 しかしエリスフィーナはスライディング気味にキリヤ王子に向かって進んでおり、全ての真空波を避けながらそのまま足払いを繰り出せる体勢だった。

「たあっ!」

 屈んだエリスフィーナが足払いを繰り出す様に身体を回転させるが

「全部バレバレなんだよぉ! ハイエルフのお嬢様ぁ!」


ーバッ!ー


 キリヤ王子はその場で垂直に飛び上がって上からエリスフィーナに剣を振り下ろそうとする。

 その時、エリスフィーナは足払いは出さずに身体を屈めたまま一回転させた。

 そこから立ち上がりの身体のバネも利用した回し蹴りを飛び上がったキリヤ王子に繰り出した。

「たあぁーっ!」


ードゴオッ!ー


「うごあっ!」

 自分が優勢を取っていて、反撃すら読み切っていたと思い込んでいたキリヤ王子にはエリスフィーナの回し蹴りは痛烈なカウンターだった。


ードサッ!ー


「うへあっ!」

 両腕を振り上げた瞬間の脇腹に蹴りを叩き込まれたキリヤ王子は見事なくの字になって地面に墜落した。その時

「キリヤ王子、そこまでにしましょう。手合わせは終了です」

 ガルドリックが二人の手合わせを止めに入ってきた。エリスフィーナも気が付いてなかったが、ガルドリックはキリヤ王子が真空波の連撃を飛ばす前から制止の声を上げていた。

「キリヤ王子! アンタ何処に打ってんのゃよ! 危ないでしょ!」

 二人を止める声はメルティーローズも上げていた。残る神官マリアリアは心配そうに見守るのみで賢者であるクレスも成り行きを注視するに留めている。

 ここに至ってエリスフィーナはようやく勇者パーティーの皆の、キリヤ王子に対する態度が腫れ物に触る様なものであると理解した。

 手合わせ終了の声が飛ぶ中、くの字に曲がっていたキリヤ王子はヨロヨロと立ち上がる。

「やってくれるじゃねぇか。一発は一発だか、な!」

 立ち上がったキリヤ王子は双剣を乱雑に投げ捨てると左右に両腕を広げて魔力を溜め始めた。


ーキュイイイィッ!ー


 キリヤ王子の両手には魔力から変換された電撃が発生し彼が何の魔法を使おうとしているのか一目瞭然だった。

「有能なハイエルフ様ならこれも防いでみるんだな! 俺を舐めるなよ原住民が!」

 キリヤ王子はどう見ても激昂……いや、逆上している。ガルドリックやメルティーローズの声も届いていない。

 敵意МAXのキリヤ王子を前に矛先を向けられているエリスフィーナはウンディーネを召喚して水の壁を生成する準備を始めていた。

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