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力試し

「おい! ヒョロ眼鏡! 下からこっち見上げてるなんてサイテーじゃない! 少しは考えなさいよ!」

 物見櫓の手摺は格子状になっており、確かに下からはエリスフィーナもメルティーローズもスカートの中が見えてしまう可能性がある。

「……!」

 メルティーローズの言葉でその危険に気付いたエリスフィーナは反射的にスカートを抑える。しかし

「二人とも白ですか。やれやれ、私にそんな趣味はありませ……」

「マジックミサイルゥッ!」


ーバシュウッ!ー


「ぐわあーっ!」

 クレスが言い終わるより先にメルティーローズが放った魔力の飛翔体がクレスの顔面に命中していた。

 眼鏡を中指で直しながら話していた最中の魔法直撃だったので非常に危険な一幕ではあった。

「あだだだだだっ!」


ードタンバタン!ー


 顔面でマジックミサイルを受け止めたクレスは地面にもんどり打って転げ回って一人ドタンバタン大騒ぎしているが……血は出ていないので最悪の事態ではないらしい。


ースタッー


「イケメン優男だからって見逃される話じゃないんだからね!」

 物見櫓から降りてきたメルティーローズが転げ回るクレスに仁王立ちになって忠告する。

「あの、ガルドリックさん、私の力を見たいとは……?」

 同じく物見櫓から降りてきたエリスフィーナはガルドリックにその真意を尋ねる。すると

「自己申告で君の能力は分かっているつもりだが、これから魔族領に行くのに、君単独でどれ位の力量があるのか知っておきたいんだ」

 これからガルドリック達勇者パーティーはラストダンジョンに向かう訳で、実際のエリスフィーナの戦闘力を測っておきたいというだけらしい。ガルドリックは


ーシャアァァー


「全力で来てくれ。遠慮なく」

 腰から閉所用のショートソードを抜くと正面に構えエリスフィーナにも抜剣を促してきた。

「よろしくお願いします」


ーシャッ!ー


 一方のエリスフィーナも腰から細剣を抜き横に構えると一礼をする。


ータタタッ!ー


 細剣を横に構えたエリスフィーナは一気に距離を詰めると、細剣でガルドリックの頭部目掛け


ーピュンッ!ー


 突きを放った。ガルドリックが頭を傾けて細剣を避けるが


ーピュピュンッ!ー


 更に連続突きが避けた先に飛んできた。

「おわっ!」


ーキィン!ー


 ガルドリックは避けるのを諦めショートソードを使って細剣の突きを逸らす。

「はあっ!」


ードガッ!ー


 エリスフィーナはガルドリックが構えていたショートソードが無くなった脇腹に左でのミドルキックを叩き込んだ。

「ぐっ!」

 軽めのエリスフィーナの蹴りと言えど身体のバネと勢いの乗った蹴りは、ガルドリックの体勢を崩すには十分だった。更に

「はあっ!」


ースパアッ!ー


 エリスフィーナは蹌踉めいたガルドリックに右足払いを放った。並の相手なら足払いを避けられず転倒するか、向こう脛を蹴られて悶絶するかだったが


ーバシッ!ー


 ガルドリックも姿勢を下げ左手で足払いを受け止めていた。さらに


ーギュッー


「きゃっ!」

 受け止められた足をそのまま掴まれてしまったエリスフィーナはそこで動きが止まってしまった。

 彼女は咄嗟にガルドリックの手に細剣を突き立てようとしたが

「くっ!」


ーピタッ!ー


 万が一を考えたエリスフィーナは突きを止めてしまう。逆にガルドリックは


ーグイッ!ー


「きゃあっ!」

 エリスフィーナの足を引っ張って彼女の体勢を完全に崩してしまった。


ードサッ!ー


 地面に倒されたエリスフィーナは何とか起き上がろうとするが足が掴まれたままなせいで立ち上がる事は出来ず


ービシッ!ー


 地面に倒されたエリスフィーナの目前にガルドリックのショートソードの切っ先が突き付けられる事で二人の手合わせは終わった。

「ここまでだな。分かった、ありがとう」

 ガルドリックは掴んでいたエリスフィーナの足を放し彼女を解放した。そして

「なぜあそこで突きを止めたんだ? あのまま突いていれば逃げられたんだぞ?」

 ガルドリックは地面に倒されたままのエリスフィーナに手を差し伸べながらさっきの手合わせについての疑問を口にした。

「あの、もしかしたら手首の動脈に当たってしまうかもって……」

 エリスフィーナはガルドリックの手を負傷させてしまう危険性を口にするが

「顔面への突きは良いのか?」

「あれは……途中で止める事も出来ましたから……それにガルドリックさんなら避けるだろうと思いまして……」

 初撃の頭部への連続突きについてツッコむガルドリックにエリスフィーナも微笑みながら答える。すると

「状況は見えてるし技量も確かだ。思い切りも良いし……十分にやれるだろう」

 改めて手合わせした感想をガルドリックは正直にエリスフィーナに語る。そして

「君には後衛の防御と周囲への警戒をお願いしたい。俺の後ろについて皆を守ってくれ」

 これは移動中の隊列の話になる。遠足ではないのだから、当然不測の事態に対処出来るだけの隊列は準備しておかなければならない。しかしこの決定に異を唱えたのが

「ガルドリック、待って。彼女はまだ経験が少ないわ。貴方の背中は私が……」

 神官のマリアリアだった。いつもは物静かなイメージのあった彼女だが、今日に限っては積極的に見えた。

「マリアリア、君は後列に下がるべきだ。その方が君にも安全だし、エリスフィーナも弓の射線が確保し易いはずだ」

 ガルドリックは隊列の利点を説明してマリアリアの説得に入るが

「治癒も防御魔法もある私の方が役に立つわ! パーティーの……貴方の安全の為なら……」

 マリアリアも珍しくガルドリックに食い下がっている。二人の雰囲気の雲行きが段々と怪しくなり始めたその時

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