悪ふざけ
ミリア先生の指示に従い女生徒達のマジックブリッツの的当て授業は順調に続けられていた。そしてイザベラとその取り巻き達が的当てに挑む順番が回ってきた。
それらを他の女生徒達に混じって見学しているガートルードとエリスフィーナの二人が何となく眺めていると
「いいこと? 私の魔法がいかに優れているか、いかに王女に相応しいかを見せてあげるわ」
イザベラがガートルードに対しあからさまな対抗心を顕にしてきた。
「さすがですイザベラ様! 勝利宣言なんて素敵です!」
「落ち目の王女様に必中ド真ん中を見せつけちゃって下さい!」
取り巻きの太鼓持ちがイザベラを持ち上げる。しかし、彼女達はその囃し立てが的当てのハードルを上げるキラーパスになっている事には気付いていない。
「準備は良いな? 撃て!」
ミリア先生の指示に従いイザベラ様含む女生徒達から魔力の弾丸が放たれその中の一発が
ーバシイィン!ー
見事的の端に命中していた。他の女生徒達が的から外れて後ろの土壁をえぐっている中での初の命中弾は術者であるイザベラの自尊心と高揚感を大いに満たさせていた。
「今回はまだ最初だから調子が出ないわね〜」
「そんな事ありませんよ! イザベラ様、流石です!」
「私たちじゃ的にかすりもしませんでしたよ〜! どう当てるのか教えてくださ〜い!」
調子に乗るイザベラに取り巻き達がヨイショを欠かさない。彼女達はそのまま勝ち誇った様に待機列へと戻っていく。
「次の列で一巡だな。よし、並んで魔力の集中に備えろ」
次に出番となるのがガートルードやエリスフィーナが属する列の女生徒達だ。
彼女達もミリア先生の号令に従い休めの姿勢から右手を的に向けての構え、魔力の溜めへと移っていく。
ーシュウウウゥゥ……ー
エリスフィーナも皆に習って右手に魔力を集めていると
「ねぇ、アンタ魔法で王女様を小突いてやんなさいよ」
「え? あたしですか?」
「ちょっとぶつけて気を逸らさせてやるだけでいいんだから」
女生徒達の待機列からイザベラと取り巻きの一人アマンダのヒソヒソ声が聞こえてきていた。
(まさか今、この状況で……?)
嫌がらせするにしてもタイミングがあるのではないかと、エリスフィーナが様子を覗っていると……
「ほら、やっちゃいなさいよ」
「ちょっと待って、まだ魔力が……よし」
イザベラ様からのヒソヒソ声が一段落し……また、エリスフィーナ達にミリア先生からのマジックブリッツ射撃の号令が下されようとしたその時
「ガートルードさん、伏せて!」
ーガバアッ!ー
今、まさに魔法を撃とうとしていたガートルードに横から覆いかぶさる様にエリスフィーナが彼女を地面に伏せさせた。
「え! エリ……!」
ガートルードが反射的に驚きの声を上げる。そしてそれと同時に
ーバシュウッ!ー
魔法の弾丸の射出音がそこら中から聞こえてきた。列に並んだ隣の女生徒達からだけでは無く、何故か後ろの待機列からも
ーバシイィィン!ー
「な、何!」
「魔法防壁?」
「ぎゃあ!」
「ひい!」
「痛い!」
衝撃音の様な衝突音の様な……何かがぶつかる音が聞こえてきた。響き渡る女生徒達の悲鳴……それと共に
「お前達、何をした!」
ミリア先生からの怒鳴り声も聞こえてきた。地面に伏せたエリスフィーナが頭を上げて先生の声の方を向くと
「怪我人は居るか! お前達、とりあえず落ち着け! その場から動くな!」
待機列の女生徒達に駆け寄りながら指示を出すミリア先生の姿があった。
「すみません、ガートルードさん。突然乱暴な事をしてしまって……」
エリスフィーナがガートルードに申し訳無さそうに寄り添いながら彼女を立ち上がらせる。
「エリスフィーナさん、ありがとう。でも、それより……」
立ち上がったガートルードが気にしているのはミリア先生と待機列の女生徒達の事だった。
「う、う〜ん!」
「痛いよ〜、お母様〜!」
「あ、あ……」
女生徒達が何人か負傷してうずくまっており、ミリア先生が魔法で手当てをしている様だった。
また、怪我をしていない女生徒達はただ呆然と周囲の状況を眺めている事がしか出来ていない。
イザベラ達は顔を青くしながら周りの状況を見て理解が追い付いていない様だ。そんな中
「ミリア先生! 私、保健室に行って誰か呼んできます!」
「え、あ……ガートルードさん……?」
ータッタッタッタッ……ー
ガートルードが率先して大声で自分の出来る事をミリア先生に知らせると同時にエリスフィーナの手を引いて校舎に向かって駆け出していた。
実技授業の最中に突然起きたトラブルの状況が分からないエリスフィーナはガートルードに連れられ、ただ流されている事しか出来なかったのだた。




