入学式
「エリィちゃん? 詳しくは聞かないけど私達エルフは人間達の使う所謂四大元素魔法を身につける事はしてこなかった」
魔法学院に向かう道すがら母親エルウィンドが人間達の魔法を学ぶ事について話し掛けてきた。
「私達が学校に通える機会が無かった事もあるんだけど……私達は人間達の魔法が精霊達と心を通わせる事の出来ない下等な方法であると見るのが常識なの」
母親エルウィンドが語るエルフの常識はエリスフィーナが知らない事ばかりだった。母エルウィンドの話は人間達の使う四大元素魔法とエルフ達の使う精霊魔法との違い。そしてその特徴だった。
詠唱や魔法陣が必要となる四大元素魔法に比べて精霊魔法は精霊の依代を用意して呼び掛けるだけで事足りる。
精霊を側に従えておく事に魔力は必要となるが、力の行使自体は精霊任せとなり魔力消費の燃費は精霊魔法が圧倒的に勝っているのである。
だからエルフ達は四大元素魔法に興味を示してこなかった訳だが……
「でも、エリィちゃんはこうして勉強する機会を貰えたんだから、しっかり勉強してきなさいね?」
「そうだな。エリスフィーナの魔法習得が我々エルフにとっての新しい風となるのかもしれないからな」
両親はエリスフィーナが魔法を学ぶ事に賛成してくれる様だった。
「それじゃ、私達はここまでね」
正門に着いたエリスフィーナに母エルウィンドが声を掛ける。
「ママ……パパ……」
送ってくれた両親を前に何かを言おうとするが言葉がうまく出てこない。
「人間達は決して良い人ばかりじゃないけど……頑張りなさい」
「私達は街の宿屋で数日前滞在するつもりだ。帰る時にガルドリックの家に顔を出そう」
両親は愛娘の学生服を見て満足したのか、ここで見送るつもりな様だ。その時
ーガラガラガラガラ……ー
王城の方から二台の馬車がやってきて正門前に横付けする。そして
ーガチャー
「お足元にお気を付け下さい」
馬車の扉から出てきた侍女の後から学生服を着た金髪の少女が降りてきた。
「ご苦労さま、後は妹と一緒に校舎に入るだけだからお下がりなさい」
少女の指示に畏まった侍女は馬車に乗り転回して去っていく。続いて同く白い馬車が正門前に横付けされ
ーガチャー
「お足元にお気を付け下さい」
同じ様に侍女が降りてきた後から制服姿のガートルード王女が馬車から降りてきた。
彼女はエリスフィーナを確認するとホッとした様な安堵の表情を見せた。
先に降りたフィリア第一王女と一緒にガートルード第二王女も並んで校舎へと歩き出していた。
(あ、ど……どうしよう……?)
そんな二人の厳かな雰囲気に一緒に行っていいものかどうかとエリスフィーナが一人で気後れしていると
「エリィちゃん。しっかりしなさい。護衛のお仕事なんでしょう?」
母エルウィンドから発破を掛けられたエリスフィーナはガートルード王女の後に続いて魔法学院の校舎へと入っていくのであった。
フィリアとガートルードの王女コンビの後についてエリスフィーナがやってきたのは共用講堂だった。
沢山の椅子が並べられた講堂には既に沢山の学生服の新入生らしい少年少女達が集まっていた。
フィリア王女はさっさと左側の集団の集まりの中へと消えていく。
「エリスフィーナさん、私達はこっち」
ガートルードに手を引かれたエリスフィーナは右側の集団の椅子に腰を下ろす。
新入生の集団は三つに分けられていたがその意味が何なのかは今のエリスフィーナには知る由も無かった。
新入生らしい学生が集まったところで壇上に宮廷魔術師らしい老人が姿を現したところで
「それではローランド王立魔法学院の入学式を執り行います! まず最初に学院長からのご挨拶が新入生の皆さんにございます!」
学院長以外にも壇上の袖には司会進行役の若い魔術師がスタンバイしており、既に入学式の準備は万端であったらしい。
司会の言葉に学院長と思しき老齢の宮廷魔術師が壇上から新入生を見渡し
「新入生の皆さん、本日は我がローランド王立魔法学院へのご入学誠におめでとうございます。ひいては……」
こうして学院長の挨拶から始まる長い長い入学式の洗礼をエリスフィーナも受ける事になるのであった。
一方、魔法学院で入学式が行われている頃、晩餐会を終えて帰路に就いていたアレックス王子は馬車の中で未だに怒りを隠せないで居た。
「くそっ、我がホワイトクラウン王国の威光を見せしめる為に下らん田舎まで出向いてやったというのに……我が国が無ければ魔王軍は世界に雪崩込んでいたかもしれんのだぞ!」
思わぬハプニングにお株を奪われた感のある晩餐会での出来事にアレックス王子はいたくお冠であった。
「あのエルフも捕らえる機会すら無かった。それもこれも途中で消えたあの聖女のせいだ!」
ードガッ!ー
アレックス王子は力任せに馬車の壁を力一杯蹴りつける。
「最早、あの聖女に利用価値は無いか……?」
度重なる失敗を聖女マリアリアに他責するアレックス王子は馬車の中で今後の彼女の処遇を考えるのだった。




