新生活
ガルドリックが購入した邸宅には、内見が済んだ翌日、支払いを済ませた後からすぐに勇者パーティー全員で進められた。
二階の個室はガルドリック、エリスフィーナ、メルティローズ、クレスがそれぞれ活用する事となり、ヴァイス達は一階の男女別に分けられた大部屋を使用する事になった。
ゆくゆくは使用人も雇いたい考えのガルドリックであるが、最初の内は冒険者達皆で生活を成り立たせていくつもりであるらしかった。
邸宅の敷地は王都の中央地区を流れる川にも面しており、エリスフィーナにとっては水の精霊ウンディーネを身近に感じられるありがたい環境となった。
来週の頭、月光の日には魔法学院への通学が始まる為、それまでには生活をしっかりと定着させておかなければならない。
敷地から王都を流れる川を眺めているエリスフィーナに
「あ、いたいた! お〜い、エリィ〜!」
メルティローズが探していたのか建物から出てきた彼女は一目散に駆け寄ってきた。
「貴女、もうすぐ学校に入学するんでしょ? ご両親に連絡はしたの?」
メルティローズはエリスフィーナがローランド王国の魔法学院へ入学すると知って以来、魔法に関する先輩の立場を利用して見事な先輩風を吹かす様になっていた。
「あ、あの……入学式にはとても間に合いませんし……それに両親に今伝えても移動時間がありますから……」
いくら精霊神の加護を受けているエルフの里の住人と言えど、物理的な移動距離の制約はいかんともし難い。
エリスフィーナにも何故か両親にバレの姿を見て貰いたい気持ちはあるのだが、入学式には到底間に合いそうも無い現実に諦めざるを得ないでいた。
「エリィ? 鞄とはは要らないの? 学校の宿題とか持ち帰るのに必要になるとは思うんだけど……?」
メルティローズは学生が学校に通う準備をしておく上で最低限の文具について尋ねてきた。
「え? それは……ちょっと分からない……です」
学校について最低限の知識も無いエリスフィーナは制服以外の準備をまるで整えていなかった。
「仕方ないわね〜。魔法学校なんかどこも準備しておくモノなんか変わらないでしょうから、お姉さんが教えてあげるわよ!」
メルティローズは身近に出来た後輩に対し教えたがりな面が出てきていた。
と言う事で、二人は街の文具店に来ていた。必要なのは授業内容で自分が引っ掛かる所をメモする為の紙とインクと羽根ペン数本、それらを収納するケース。加えてそれらと教科書や魔術書を持ち歩く為の鞄である。
買い物内容がすっかりピッカピカの一年生に備える家族の買い出しになってしまっている。
「お買い上げありがとうございました〜!」
ーカランカラン……ー
文具店で買い物も済ませたエリスフィーナはメルティローズと共に街を歩く。
「ねぇ、後ろ……気付いてる?」
隣を歩いているメルティローズがエリスフィーナに耳打ちしてきた。確かにさっきから少し離れた位置から尾行している誰かが居る様だが……
「……はい。何なんでしょうね?」
白昼堂々尾行してくる相手に心当たりなど無いエリスフィーナもやや困惑気味に答える。
メルティローズは足を止めて通りの本屋にエリスフィーナを連れ込む。
「あ、あの……?」
「ここで相手を確かめるわよ」
本屋に入りながらメルティローズはエリスフィーナに尾行者の正体を暴いてやると息巻いてみせる。
ーガチャー
本屋に入ると独特の匂いが鼻に付いた。エリスフィーナが辺りをキョロキョロしているとメルティローズはエリスフィーナの手を引いて本棚の列の奥へと入っていく。
ーガチャー
入り口が見えなくなった辺りで誰かが店内に入ってきた音が聞こえてきた。
「エリィ? 魔法陣集とか買っとく? これ基本的な各属性の魔法陣の書き方と詠唱の言霊例が網羅されてるのよ?」
メルティローズが話すには四大元素に限らず魔法を発現させるには魔力を集中させる事から始まるのだと言う。
そこから各属性に魔力の性質を変化させるそうなのだが、魔法の威力や効果を上げるのには魔法陣や詠唱が不可欠となってくるのだそうだ。
魔法陣作成するには魔力で実際に描くか、或いは魔法陣作成の言霊を詠唱する方法が基本となるのだそうだ。
(う、う〜ん……?)
主に精霊に呼びかけるエルフの精霊魔法との違いにエリスフィーナの頭には疑問符が沢山浮かんでしまっていた。
メルティローズが話すには、これ買っとけばとりあえずは安心というマニュアルであるのだそうだ。
言われるまま魔法陣集を手にしたエリスフィーナにメルティローズが
「そこの角を曲がった先に居るわよ。準備は良い?」
確認してきた。どうやら尾行者がそこに居るのが彼女には既に分かっている様だ。
いかにも本を見ていると言った様子でメルティローズとエリスフィーナの二人が対象に近付いていき本棚の角を曲がったその時




