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歓迎の宴⑤

「私もです…。三代前の皇帝陛下とガーネット王国の関係性とか、細かなところを忘れておりました…」


 ガーネット王国はアメジスト王国の西側にある国で、火魔法の使い手が多く、今も北のオニキス王国と争いが絶えない、少し血気盛んな国である。

 しかし、今の女王が即位してすぐの頃に、平和協定締結のためアメジスト王国へ訪れたことがある。

 その際、火魔法を見せてもらう幸運に恵まれた。アリーナとは対極の魔法を使う女王の放つ火魔法の美しさに心が躍った。

 そんなことを思い出しながら改めて周辺諸国の歴史に目を向けると、とても面白い。

 今でこそエメラルド皇国もアメジスト王国も男性の王が続いているが、過去には女性が王となったことがある。

 しかし、ガーネット王国で女王が立つのは有史以来初のことで、決まるまでに色々と国内であったらしい。


 ちなみに三代前の皇帝とガーネット王国の関係性というのは、戦争の際の協定のことである。

 三代前の皇帝の時代、エメラルド皇国とアメジスト王国の北側のオニキス王国との戦争があったのだ。

 北側の厳しい気候にオニキス王国の国民が疲弊し、さらに何十年に一回の大寒波に襲われたのが、発端である。

 もちろん、エメラルド皇国もアメジスト王国もこの大寒波によって北側の土地に打撃を受けたが、オニキス王国への支援も申し入れがあったため、準備をしていた。

 しかし、救援物資を届けた部隊をオニキス王国によって壊滅させられてしまい、両国は決別。大きな戦争へ発展してしまった。

 その際、ガーネット王国にはアメジスト王国へ攻め込んだりしないよう予防のための協定を、エメラルド皇国、アメジスト王国、ガーネット王国の三カ国で結んだのだが、密かにオニキス王国とも支援と協力の協定を結んでおり、雷帝とその名を世界に轟かせていた皇帝の逆鱗に触れ、オニキス王国との戦いを一時中断させて、ガーネット王国に怒鳴り込んだという話だ。


「今でこそガーネット王国との関係は穏やかなものですが、諍いがあったのが数十年前というのも驚きます」


 国同士の関わりは、トップが変われば良くも悪くも変わってくる。

 何年にもわたって戦いをしていたオニキス王国とも、先々代の皇帝が平和協定を結び、今や開かれた国交となっている。

 三代前の雷帝はとても血気盛んな性格だったが、息子である先々代皇帝は若くして夭折してしまったが、とても穏やかで、武力ではなく対話で問題解決するタイプだったのだ。

 ちなみに三代前の皇帝はまだまだ健在で、時折騎士団の練習に顔を出すらしい。

 アリーナはまだあったことはないが、もし会う機会があれば、稽古をつけてもらいたいと思っている。


「さて、姫様。そろそろお支度なさいませんと。皇太子殿下がお迎えに来てしまいますよ」

「そうね。髪の毛を少し結い直したいわ」


 そう言うとリオネッタは隣の部屋へ向かう。

 好きな人のために髪を結い直したいという気持ちはアリーナには若干わからないが、さすがナナリーはその辺の乙女の気持ちを察するのが上手い。


 ーーどんな姫さまでも、お可愛らしいけれど、好きな人にはもっと可愛く見て欲しいのね。


「確か今日は皇后宮の庭のガボゼでしたよね。皇后陛下のご自慢のバラ園の中の…」

「ええ。あのバラ園は本当に素晴らしいですわよね。あんなにたくさんの色のバラが同じ場所にあるのに、美しくまとまっていて…」


 赤、ピンク、黄色。

 色とりどりのバラが咲き乱れていても、お互いの色を邪魔しないように計算されているので、本当に素晴らしい。

 ただ、アリーナはひとつあのバラ園のことで不安要素があった。

 視界が塞がれてしまうのだ。

 ガボゼを囲むようにバラが植えられており、とても幻想的なのだが、警護することを思うと、向いてないのだ。

 もちろん、皇后宮の庭なので、この皇国内でとても安全な場所ではあるのだが…。


 ーーちょっと、不安だな…


 皇太子親衛隊と騎士の護衛がいるとはいえ、アリーナの心に灯った不安火が、消えることはなかった。

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