表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/17

風神の孫娘②

 王宮の入り口に向かうと、リオネッタとアリーナが乗る馬車がすでに準備を終えていた。

 同乗する女性騎士とナナリーが馬車の扉の前に立っていた。


 馬車に乗るとアリーナとリオネッタが隣同士に座り、リオネッタの前に女性騎士が座る。

 ナナリーなら最後に乗ると扉が開く。

 そして、馬車がゆっくりと動き始めた。


「お父様、お母様」


 リオネッタの視線の向こうに、王城のバルコニーからこちらを見ている国王夫妻が見えた。

 人知れず娘の旅立ちを見守る姿にアリーナは心が温かくなった。


 王城を出てしばらく走ると少しずつ人が多くなってくる。


「王女殿下ー」

「お気をつけて」


 城下町では馬車道の両側に、リオネッタを見送る国民が集まっていた。

 リオネッタが手を振ると、歓声が上がった。


「ありがたいわ」


 手を振りながらリオネッタが呟く。

 誰もが笑顔で見送ってくれているのだ。


「そうですね」


 アリーナがそう応えると、リオネッタがアリーナの手を握ってきた。


「エメラルド皇国でも、きっとみなさん歓迎してくださいますよ」


 その言葉にリオネッタは安堵の表情になった。


「そうだと、いいわね」


 一年ぶりにジークフリートに会える喜びと、未来への不安。それを察して、アリーナはリオネッタに寄り添うのだった。


 城下町を抜けた王都のはずれの停車場で、馬から土竜に変える。

 土竜は馬より速く、力強い。

 その巨体ゆえ王都を走るのには向かないが、街道ではこれ以上ない移動手段である。

 そのためアメジリウス公爵領との境にある停車場から土竜車を利用するのだ。


「速いですね」


 ナナリーが目を輝かせながら、流れる景色を見て感心する。

 馬が引いていた時とは比べ物にならない速さで景色が変わるのが、少し面白い。

 普段乗ることがないので、ナナリーは密かにこの時間を楽しみにしている。


「そろそろ休憩よね」

「ええ。祖父母が軽食を用意してお待ちしておりますので」


 流石に夜まで車内で過ごし続けるのは辛い。土竜の休憩も兼ねて、アメジリウス公爵領内で休憩することになっている。

 そこでもてなすのは前公爵夫妻、アリーナの祖父母である。

 今回の長期休暇で会えるのは、エメラルド皇国への往復時の休憩時間のみなので、ルートヴィヒとマリアンナは軽食を用意して待っているのだ。


「お天気が良くて良かったですね」


 前回はあいにくの雨で、急遽野営用のテントで休憩をすることになった。

 足元が悪くリオネッタを歩かせることができず、第一騎士団の一人が抱き上げて移動した。

 ナナリーも同様に騎士に抱えられたが、アリーナは気にせず歩いていたのを祖母にたしなめられた。一応汚れてもよい革靴に履き替えていたのだが、令嬢としては正しくなかったらしい。


 土竜車がその見た目と速さからは想像できないくらい、ゆっくり丁寧に止まる。


「王女殿下のお出ましです」


 先に騎士が降りてリオネッタに手を差し出す。

 その手を取ってリオネッタがゆっくりと降りる。

 アリーナとナナリーは別の騎士が手を差し出してくれる。

 いつもは飛んで降りるアリーナだが、リオネッタについている時は流石に憚られた。


「アメジリウス前公爵、ありがとう」

「いえ、こうしてお越しいただき、恐悦至極」


 簡易的ではあるが、王族が休憩するのに相応しいテーブルと椅子が用意されている。

 リオネッタが座ると、アリーナとナナリーがその両隣に腰を下ろした。


 軽食が用意されており、遠慮なくいただく。

 朝が早かったので空腹だった三人は楽しそうに話しながらこの時間を楽しんだ。


「ご出立の準備が整いました」

「ええ、ありがとう。世話になりましたね」


 土竜たちも食事と休憩で元気になったようで、アリーナは乗り込む前に頭を撫でてやった。

 よく躾けられているので、土竜も嬉しそうに喉を鳴らした。


「アリーナ」

「おじい様」


 アリーナが祖父母を抱きしめると二人も抱きしめ返してくれた。


「気をつけて行くんだぞ」

「剣のお稽古はほどほどにね…」

「はい。行ってきます」


 ほんの少しの時間ではあったが、二人に会えたのが嬉しかった。


「ではまた…」


 二人に手を振ってアリーナが土竜車に乗り込むと、リオネッタとナナリーが笑っていた。


「どうかされましたか?」

「いいえー。アリーナはお祖父様たちが大好きなんだなって思ったのよ」

「ルーメンバーフェンのお祖父様もお忘れなく…」


 祖父母に少し甘えたことを揶揄われたが、悪意あるものではないので、アリーナは笑顔で応えた。

「私は…、三人も祖父母がいるので、幸せですね」


 ルーメンバーフェン伯爵家も、アリーナのことはアドリアンたち三兄弟と変わらず、セシリアの子供として接してくれている。

 三歳の頃、兄たちと遊びに行った際、ルーメンバーフェン伯爵と呼んだら、泣かれたのだ。


「お祖父様って呼んでおくれ…」


 その一言で、アリーナには祖父母は三人ずつになったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ