第10話:とあるよろず屋にて
10話目です。
今回も最後まで読んでいただけると幸いです。
ここは赤竜の国《ウェルシュ》、その城下町に佇む一軒のよろず屋。
その中から男の声が聞こえる。
「はぁ〜い今日も清々しいですね〜。」
ひょうきんな口調で店のおもてに出る男。
店主と思わしき男は至る所にポケットのついた上着と、ズボンを身につけており、顔には鋭く光る灰色の目に眼鏡をかけていた。さらに頭には大きな帽子をかぶっており、たいへん胡散臭い格好だ。もしこの店にかなり良質な品があったとしてもこの店主を見れば買う気も失せることだろう。
「今日も農民は畑を耕し、商人は売買を行い、兵士は鍛錬を積み、冒険家は旅を続ける。あぁ〜人間はなんと素晴らしい〜。素晴らしい、素晴らしい、素晴らしい〜!!あっしも見習わなければならないですね〜。敬愛する人間というものを。」
店主はまだ人気のない街道で人目も憚らずに叫ぶ。
はたから見れば胡散臭い格好の男が何かを口走っているというとても危険な感じの状況だ。
「店長、うざいです。死んで下さい。」
「こら!!セケル!!店長に向かって死ねはダメでしょ!!」
店の奥から2人の子供の声が聞こえる。
セケルと呼ばれた少年は銀色の髪に店主と同じ灰色の瞳を持ち、左の頬に1の数字の印があり、この店の作業着と思われる服を着ている。
そのセケルを叱る少女は彼と同じく銀色の髪と灰色の瞳で、店の作業着を着ており、こちらは右の頬に数字の3の印がある。
どちらも12歳くらいの見た目で、このよろず屋の従業員らしい。
「う〜ん、2人とも元気ですね〜。素晴らしい〜。その調子で今日もビシバシ働いてもらいますよ。」
「給料を上げてもらえれば、もっと働くんですけどね。今の安給料じゃやる気が出ません。死んで下さい。」
店主に向けて従業員とは思えない悪態をつくセケル。その表情は本当か嘘かが分からないくらいに無表情だ
店主は顔色を変えずに話を続ける。こちらもニコニコとしており、感情が読めない。
「おやおや、セケルはいつもそんなことを言ってますね〜。たまには愛嬌のある台詞を覚えた方が商売にも役に立ちますよ。」
「余計なお世話なんですよ。死んで下さい。」
セケルは毒を吐き続ける。この店主に恨みがあるのかは分からないが、嫌っているのなら従業員などしていないだろう。ツンデレというものだろうか。
「店長おはようございます。今日もたくさん売りましょうね!!」
「はいはい、おはようございます。ロアはいつも明るいですね〜。素晴らしい〜。やはり元気が1番ですね。私も見習いたいです。」
「いえいえそんな。店長のおかげですよ!!」
ロアと呼ばれた笑顔の愛らしい少女が元気よく返事を返す。
セケルとは違い店主のことを親愛の眼差しで見ている。よほどこれに深い思いがあるのだろう。
店主はなおもニコニコしており、2人を見ている。その目には2人への愛情がほんの僅かだが滲んでいる。
「時は金なり。という言葉もありますし、早く開店の準備をしましょうかね〜。ロア、セケル、準備を。」
「店長は?」
開店の準備を命じられたロアが尋ねる。
「あっしはこれから行くところがありましてね。な〜にすぐ戻ります。あっしが戻る前には準備を終わらせておいて下さいね〜。」
そう言って店主は店から出て行く。鼻歌を歌い、軽くスキップを踏みながら街の方へと姿を消して行く。
「いってらっしゃいませ!!」
元気よく店主を送り出すロア。
「帰ってこなくてもいいですよ。」
また悪態をつくセケル。
これがこの店のいつもの朝なのだろう。
「あれ、こんなとこにお店があるなんて。」
2人が準備を進める中。いつもの朝にはない声が聞こえる。
2人の振り向いた方には1人の少女がいた。
黒髪に幼い顔立ち、そして青色の澄んだ瞳を持った少女。
リリンだ。
今日アルトと手合わせのあるジンが鍛錬に没頭していたので、暇になった彼女は1人で城下町の散策に来ていたのだった。ここを通ったのは集会所が開くまでの時間つぶしだ。
「ここは何のお店なの?」
「すいません。今はまだ準備中でして……すぐに終わらせますので少々お待ちください。立っているのもお辛いでしょうから椅子を持って来ますね。」
2人に尋ねるリリンに対して子供とは思えない応対をするロア。
きっと、長い間接客業をしていたのだろう。丁寧な接客でリリンをもてなす。
リリンはそんなしっかりしたロアを見て驚く。
「あなた小さいのにしっかりしてるのね!!接客も手馴れてるし、もしかして何年もやってるの?そっちの子は弟か何か?」
「はい!!私とセケルは双子なんですよ!!」
「そうなんだ。2人とも小ちゃくて可愛いね。」
そのリリンの言葉にセケルが反応する。
「双子かなんて、そんなの見れば分かることでしょ。おばさん。」
元気にリリンに言葉を返すロアと、リリンに向かってお得意の悪態をつくセケル。
そしてリリンはセケルの言葉にショックを受けている。
「おっおばさん……。」
「こら!!セケル!!お客様になんてことを!!
すいませんお客様。この子いつもこうなんです。決して悪い子じゃないんですけど……」
ロアはリリンに向かってぺこりと頭を下げる。ビシッと足を伸ばし、腰をしっかりと折った謝罪を見ると普段からこの様なことがあるのだと分かる。どうやらセケルの悪態をつく癖は店主だけではないらしい。初対面のリリンにも毒を吐いたということは誰にもそうなのだろう。
「ほら、セケルも謝りなさい!!」
「僕は悪くないよ姉ちゃん。ただ思ったことを口にしただけだよ。それの何が悪いのさ。」
セケルは理路整然と自分の言葉を正当化する。まさにどこかの剣士を思い出させるような態度だ。
これが、普通の女性ならロアの謝罪によって心を鎮め、セケルのことを許すだろう。それが大人の女性というものだろう。だが、
「謝る必要はないわよ。」
だが、セケルが『おばさん』と呼んだ相手は普通の女性ではなく、リリンだ。ただでさえ直情的な性格なのに、セケルの言動は彼女の旅の仲間のそれにそっくりだ。そんなセケルをリリンが許せるわけがない。
「セケルって言ったわね。ロアちゃんはこんなに素直でいい子なのに、どうしてあんたはそんなに毒気が多いの?少しはロアちゃんを見習いなさい。」
多少お節介ともいえる注意をセケルにするリリン。言いたいことを迷わずに言うことができるというのはリリンの長所の一つである。
リリンの他注意に露骨に嫌な顔をするセケル。その表情は余計なお世話だと言いたげだ。
「うるさいな。余計なお世話だよ。おばさんは人の言うことに一々口出しするの?おばさんって言うより子供だね。」
セケルも言いたいことは迷わずに言える性格らしい。リリンに対してさらに言葉のナイフを投げつける。
だがリリンはそんなことではへこまない。それどころか気持ちをさらにヒートアップさせていく。
「あら、私はこれでも18歳なのよ。おばさんでもなければ、子供でもないの。セケル君はそんな事もわからないのかしら。」
「年齢的なことを言ってるんじゃなくて精神的な話をしてるんだよ。そうやってすぐ熱くなるところが子供だって言ってるのさ。」
2人の間に火花が飛び散る。本人たちにとっては一歩も引けないことなのだろうが、他の人から見れば子供の口喧嘩にしか見えない。
ロアも2人の会話を微笑ましい顔で見ている。コミュニケーションの足りない弟に話し相手ができたような時の嬉しそうな姉の表情だ。
「2人とも本当に仲がいいんですね。」
『仲良くない!!!』
ロアの言葉に2人が同時に言葉を返す。まるで年の離れた兄弟のようだ。ロアはそんな2人を見てさらに笑う。
「弟とこんなに話せるひとは店長と私以外には初めてですよ!!私はとっても嬉しいです!!お姉さん、ぜひうちの店をご贔屓にして下さいね!!」
ロアが輝く笑顔でリリンの方をを見つめる。
その笑顔にリリンのハートが射抜かれる。もとから心が動きやすいのか、無機質なジンと会話を長い間していた反動かはわからないが、リリンはロアの手を握る。
「なんて、なんていい子なの!!セケルはあんなに意地っ張りなのにロアちゃんはこんなに素直で元気で、可愛い!!私の妹になって欲しいくらいよ!!」
「そっ、そんな。お客様困りますよ。」
リリンの感情が止まりそうにないその時だった。
「お前、何してる。」
1人の聞き覚えのある少年の声が聞こえる。その声にはリリンに対する呆れたような気持ちが含まれていた。
「あっ、ジン。どうしたのこんなところで?」
「どうしたじゃないだろ。宿屋に聖王の使いの者が来て、今日の正午に城に来いと言われたからお前を捜しに来たが、これは一体どう言う状況だ?なぜ手を握っている?」
ジンはリリンが子供の手を両の手でがしっと握っているというわけのわからない状況に頭が追いついていない。ため息をつきながらリリンの元へと向かってくる。
「いや〜そのなんていうかロアちゃんの笑顔に一目惚れしたっていうか。セケルの憎たらしさを見過ごせなかったていうか。」
訳のわからない言い訳をするリリン。
ジンに見られて自分がどれだけ我を忘れていたかが分かったようだ。すぐにロアから離れてジンのそばへ向かう。
「お兄さん、このおばさんのお連れの方ですか?この人がとても迷惑で困っているのでどうにかしてくれませんか?」
「何言ってんのよあんた!!先に仕掛けて来たのはそっちでしょ!!」
「こら!!セケルはまたそんなことを言って!!お姉ちゃん怒るよ!!」
店の前はとてもカオスな状態だった。いくつもの糸が絡み合ったようなこの状況をジン1人で解くことは不可能だ。
なんだこの状況は、リリンのことは放っておいて1人で城は向かた方がいいかもな。
そんなことをジンが思い始めた時だった。
「おやおや、これはどう言う状況ですか〜。おふたりはこの店に興味を持っていらっしゃる素晴らしい〜お客さんですかね〜。」
突然後ろからひょうきんな口調の男の声が聞こえてくる。2人は驚いて後ろを振り返る。そこには胡散臭い格好をした男が1人。
こいつ一体いつから居たんだ?全く気づかなかった。
ジンは一目でこの男が只者でないことに気づく。リリンの方も何やら男の纏う怪しげな雰囲気に気づいているようだ。
「うちの従業員がご迷惑をおかけしました。セケルはいい子なのですが子供扱いされるのが嫌いなお年頃でしたね〜。すいませんが目をつむってあげて下さい。」
「まぁ。店長さんがそうおっしゃるなら。私も大人気なかったし。セケル、ごめんね。ロアちゃんも。」
「こちらこそ弟がすいません。」
「……ごめん。」
セケルとロアに謝罪の言葉を口にするリリン。ロアを見習ってきっちりと頭を下げる。ロアもそれに頭を下げて返す。セケルも渋々ながら謝罪する。
「うんうん、いいですね〜。素晴らしい〜。お互いのわだかまりがなくなって良かったですね〜。」
店主は三人を見てニコニコしている。そしてそのやりとりを黙って見ていたジンが店主に疑問を投げかける。
「で、あんたは一体誰なんだ?」
「おっと、挨拶がまだでしたね〜。私の名はレギアス。この店の店主をしております。この度は当店にお越し下さり、誠にありがとうございます。当店の商品は大変素晴らしい〜ものばかりですよ。今お持ちしますのでしばらくお待ちくださいよ。」
レギアスと名乗る店主はそう言って店の中へと入っていく。レギアスを待っている間にリリンがロアとセケルに質問をする。
「このお店って何を売っているの?」
「お前、そんなことも知らなかったのか?本当に何してたんだ?」
ジンはやれやれといった感じでリリンを見つめる。そんなジンを無視してセケルとロアの方を見ているリリン。お前は黙ってろということなのだろうか。
「この店はブレフィアっていうものを売ってるんだよ。」
「ブレフィア?何それ?どういうものなの?」
セケルの口から出た聞き覚えのない言葉に反応を示すリリン。彼女の性格上、こういう知らないものにはどんどん興味が湧いてくる。
「俺も聞いたことがある。様々な効果がついたものらしい。その力で色々なことができるって聞いたが。俺も見たことはないな。」
「まぁ、詳しくは見てからのお楽しみですよ!!お客さん。」
しばらく待っていると、店の中からレギアスがいくつかの商品を持って来た。持って来られた商品はブレスレット、ネックレス、指輪などどれもいたって普通の見た目だ。これだけ見ればただの装飾品のようだ。
「さぁさぁお客さん、これが当店の自慢のブレフィアでございます。いやはや、どれも素晴らしい〜ものばかりですよ〜?」
「これってどんな風にすごいんですか?」
見てもどうなのかわからないリリンはレギアスに解説を求める。それを聞いたレギアスが意気揚々と商品の説明を始める。
「私としたことが失礼しました。ブレフィアとは見た目はただの装飾品ですが、全てにこれが埋め込まれております。」
そう言ってレギアスはどこからともなく、いくつかの結晶を取り出した。それら結晶は鮮やかな赤や青といった色をしており、宝石と言われても過言ではないだろう。
「指輪やブレスレットにではなくこの結晶の方に様々な力があるのです。例えばこれは吸引のブレフィア。これに魔力を少し通すことで液体や気体をこの中に入れることができます。」
レギアスは赤色の丸い結晶を2人の前に出し、試しにセケルの持って来たバケツの水を吸引する。それを見たリリンは目を丸くする。
ブレフィアを見るのは初めてなので、当然といえば当然の反応だが、リリンはすでにブレフィアのとりこになっているらしい。買いたいという顔でジンの方を向く。
一方のジンもブレフィアを見て、その有用性を感じたらしい。手をあごに当てて、買おうかどうか思案しているようだ。そしてリリンの視線に気付いて彼女の考えを察知し、
「店主、ブレフィアを一つ買いたいのだが、俺たちが2人で旅をするのにオススメのものはなんだ?」
とレギアスに問いかける。問われたレギアスは持ってきたいくつものブレフィアを見渡し、選別を図る。ブレフィアには有用なものが多いのでその中から一つというのはなかなか難しい。しばらくして、
「ふむふむ、旅の役に立つかはわかりませんが、これなどはいかがでしょうかね〜。」
そういって、二つの指輪を差し出す。一つは赤色の結晶が埋め込まれている太陽をモチーフにした指輪。そしてもう一つが青色の結晶の埋め込まれた月をモチーフした指輪だ。太陽と月という相対的なものをモチーフにしているところから、この二つはセットで使うものだと予想できる。
「これは共鳴のブレフィア。共鳴しあう二つの結晶を指輪に埋め込んでいるブレフィアで、これをこの太陽の指輪と月の指輪をつけている者同士は、結晶の力によって少し魔力を使えば、お互いの位置を知ることができまるのです。さらに相手がどのような状態かも把握できます。素晴らしい〜とは思いませんか?」
「なるほど、確かにこれがあれば旅の道中に逸れることはないな。危険があった時もすぐに駆けつけられる。これはとても便利だ。」
「これ結構いいんじゃない?一々探す手間とか省けるし。」
そういって共鳴のブレフィアを手にとって眺めるジンとリリン。そして互いに顔を合わせ、うなづく。それがなにを意味しているかは明白だ。
「買います!!これ!!」
代金を渡し、そうレギアスに伝えるリリン。そしてその言葉にうなづくジン。2人合意の上で購入に踏み切ったようだ。
その言葉を聞いてレギアスはニコニコと微笑みながら2人を見つめる。自分の商品が売れたことに喜んでいるのか、はたまた2人がブレフィアの素晴らしさに気付いてくれたからか、どちらにせよ嬉しがっているのは確かなようだ。
「ああ、素晴らしい〜!!素晴らしい〜ですね〜お客さん!!私の選んだものを気に入ってもらえて、とても素晴らしい〜気分ですよ。
さっそくサイズを合わせましょう。といっても指にはめるだけで自動的に指輪が合わせてくれますがね〜。」
代金を受け取ったレギアスが2人に指輪をはめるように促す。
ジンが太陽、リリンが月という風にそれぞれ指輪を指に通すと、指輪がどんどんと小さくなり、2人の指にぴったりのサイズになる。
「おお!!指輪なんてするのは初めてだけど、結構いい感じね!!どう?ジン。似合ってる?」
ジンの方に指輪を見せながら問いかけるが、
「似合ってる、似合っていないはほとんど分からんが、指輪なんて手が綺麗な奴なら誰がつけても似合うものだろ?」
と、なんとも味気ない回答をする。
まあ、わかってたけど……
そうリリンは思いながらため息をつく。気を取り直して今度はロアとセケルの方へ振り向き、感想を求める。
「どうかな?2人とも?」
「似合ってるんじゃない。よく知らないけど。」
「よく似合ってますよ、お客様!!お二人で指輪をつけているなんて、まるで夫婦みたいです!!」
素っ気なく返事を返すセケルと元気よく返すロア。まさに対照的な返答だ。けれど、リリンの頭の中にはそんなことは思い浮かんでいなかった。リリンの頭の中にはロアの言葉で埋め尽くされていた。それは、
「ふ、ふ、夫婦なんて!!そ、そんなんじゃないわよ!!違う、違う、違う!!だって私達出会ったばかりだし、お互いのこともまだよくわかってないし、性格も対照的だし、まだ私達18だし!!」
特に意味もないロアの言葉にこれでもかというほど否定の言葉を口にするリリン。男女が対の指輪をしていることの気恥ずかしさが今になって分かったようだ。その頰は赤く染まっており、それはまるで林檎のようだ。幼く見える顔立ちが、赤い頰のせいでさらに幼く見える。この顔を見たら、誰しもが彼女を愛らしいと思うことだろう。だが、
「なにを焦ってるんだ?そんなに慌てて、顔を赤くして、熱でもあるんじゃないのか?今日はもう宿でゆっくりと安静にしてるか?」
当のジンは頰を赤く染めるリリンを見て、冷静に言葉をかける。ロアの言葉はジンにも聞こえているはずだが、ジンは全く気にしていないようだ。
「ッ……!!なんでもないわよ!!バカ!!」
自分1人が焦った反応をしていることに気づいたリリンはさらに顔を赤くして、少し涙目になっている。照れ隠しでジンの頰を叩こうとする。その手を軽く受け止めながら、ジンはリリンの顔を覗き込む。
「本当に大丈夫かお前?熱でもあるんじゃ。」
そういってリリンに顔を近づけるジン。リリンは焦ってジンから離れる。
「近い!!離れなさいよバカ!!」
「まぁ、それだけ元気なら大丈夫か。それよりも時間がもうないすぐに城は行くぞ。」
リリンの焦った反応に首を傾げながら、ジンは本来ここにきた目的を口にする。レギアスの雰囲気やブレフィアなどに気を取られ、すっかり時間が経ってしまった。正午まであと1時間もない。
「店主、これは大切に使わせてもらう。俺たちは急ぎの用があるんでな。これで失礼させてもらう。」
「ああ、そうだ。商品をご購入いただいたお礼として少しサービスをして差し上げますよ。」
そういうとレギアスはジンの指輪に手をかざす。そして指輪が淡い光を放つ。赤い結晶がさらに赤くなる。まるでジンの赤髪のように。
「これは……?」
「そのうちわかりますよ。そのうちね。ではでは、縁があればまたお会いしましょうお客さん。」
その言葉を背中で受けながら、ジンとリリンは急いで城へと走る。その背中を見ながらレギアスとセケル、そしてロアは話をする。
「賑やかなお客様てでしたね!!店長!!」
「賑やかすぎるけどね。」
「いいじゃあないですか〜。賑やかなことは幸せなことですよ。やはり人間は素晴らしいですね〜。冒険家の少女にそれを守ろうとする剣士の少年……素晴らしい〜ですね〜。」
なぜかリリン達が言っていないような事まで知っているレギアス。やはりこの男はただのよろず屋ではないらしい。何者だろうか。
敵か味方か、それは誰にも分からない。
ただ、この男がこの国でよろず屋を営んでいることは紛れも無い事実だ。そして今日もこの店は暖簾をかける。
如何でしたか?
第2章はこれからどんどん盛り上がっていくので期待していてください。




