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思い返してみても、サラにはエイジとは仲が良かった記憶しかない。
いつから一緒にいたのか、というのすら覚えていない。物心ついた頃には一緒にいた気がするし、ある日突然孤児院に入って来た気もする。だがどちらであったとしても大して変わりが無い位の時間を共に過ごしていたとサラは認識していた。
記憶の中のエイジは、いつでもギラギラとしている子供だったとサラは記憶していた。不幸サイドにいる事が当たり前であると認識し、ただ祈る事しかしていなかった自分とは違い、いつもどうやって不幸サイドから抜け出すかを考えて必死になっていた少年。それがサラにとってのエイジだった。
ただ一つだけサラがエイジに申し訳なくなる事があるとすれば、それはエイジと別れの挨拶を出来なかった事だ。聖痕の発現について大して知識も無かったサラはただ状況に流される事しかできず、あれよあれよと言う間に孤児院から連れ出されていた。エイジと話せてもいないと気づいた時には既に車に乗せられた後だった。
子供の頃から一緒にいたのに何も言わずに去るというのは確かに不義理ではあっただろう、という理解はサラにもできた。
しかしズルしてエイジを捨てた、と言われても覚えが無いと考えるのがサラだった。
「えーと……別れの挨拶を言わなかったのがズルかった、という事でしょうか?」
「はぁっ!?」
サラなりに考えて出した結論だったが、エイジの神経を逆撫ですることにしかならなかったようだ。ますます顔を不機嫌に顰めてサラを睨んでくる。どうやら間違っていたらしいとは分かってもそれ以上にサラは何も思いつかなかった。
「お前、俺を馬鹿にしてるのか?」
「そんなつもりは……」
「大体お前は――」
「――あっ、お前! またサラ様に暴言を吐いているのか!」
エイジの声が上ずり始めたのに気づいたのは、周りを見てくると言って離れていたカリンだった。対人であれば、そしてエイジのような子供相手であればカリンとて遅れを取ることは無い。いつもの調子を取り戻すようにカリンはサラとエイジの間に割って入った。
「……ちっ」
「あ、お前――」
エイジは割って入って来たカリンの顔を見上げたが、さすがに彼女がいる場所では何も言えないと思ったのだろう。最後にサラの事を睨みつけると、小さく舌打ちをするとモンテウッドの北門の方へ歩いて行ってしまった。
「全くなんなんだ、あいつは。感謝の一言でもあって良いだろうに」
エイジに対してぶつくさと文句を言うカリンに伴われ、サラは心に疑問を抱いたままモンテウッドの街へと足を向けた。




